LOGIN「だって俺はお前を幸せに出来るのは、俺しかいないだろ?」「だからなんなのよ……その自信は」一体その自信はどこから来るのだろうか……。わたしは彼のことを好きになれないと、以前伝えたはずなのに……。それでもわたしは、この子のことを考えて結婚するしかないと思った。高城藍のその思いに胸を打たれたのは確かだけど、やっぱりわたしは……この人と結婚するしかない運命なのだと悟ったんだと思う。「お前を幸せにしていいのは、俺だけなんだよ。 俺以外の男がお前を幸せにするなんてのは、あり得ない」力強くそう言われてわたしは、なぜかドキッとしてしまった。「……なんなの、それ」訳が分からない……。「透子、愛してる」「え……。ちょ、んんっ……!?」抵抗する間もなく、わたしは藍に唇を奪われてしまった。「ちょっと、なんでキスするの……」「まあしたかったからって言うのもあるが……。今ここで君に、永遠の愛を誓いたいと思ってね」そう言われてわたしは「はあ……?」と返事をした。「永遠の愛って……。やめて、そういうの……」なんかこう、永遠の愛なんて言われると気持ち悪い気もするけど……。「いいだろ? もう君は、俺のものなんだから」「……あのねえ、わたしはものじゃないんだけど」そう言い返すも、ニヤリと笑った藍から抱き締められてしまい、そのまま何も言い返せなくなった。「透子、お前のことは誰にも渡さない。……お前は俺だけのものだから」「……バカじゃないの」なんでそんなことばっかり言うのよ……。こんなわたしのために、そこまでするなんて……。「そうだ、俺はバカだよ。 だって俺は、君をこんなにも愛してしまっているんだからさ」「……愛してるなんて、簡単に言わないでよ」そう言ったのにまた唇を奪われてしまい、また【何度でも言う。君を愛してる】と言われた。そんなに愛してると言われたら、妙に気になる。「ねえ、どのくらいわたしを愛してるの……?」確認したかった訳じゃなかったけど、なぜかそう聞いてしまった。「決まってるだろ?世界で一番。……いや、宇宙で一番透子を愛してる」「……本当に?」「本当だよ。そのくらい、君を愛してるんだ」そうやって見つめられたら、わたしは何も言えなくなってしまう。……本当にズルい。わたしが何も言えなくなるってわかってて、そうやって言うんだもん……。
そんな笑顔を向けられたら、不思議とドキドしてしまう気がした。そんなことを思っていると、高城藍がわたしの手をぎゅっと握りしめる。「こっち来て、透子」そうして花畑の真ん中まで連れて来られた。「藍……? どうしたの?」「透子、何度でも言う。俺と結婚してほしい」藍からまたプロポーズを受けた。 今度は、結婚指輪付きで。「……え?」ちょっと待って……。こんなところでプロポーズするの……?ちょっと待って。そんなのズルくない……?そんな風にされたら、断わることが出来ない雰囲気になるじゃん……。「透子も赤ちゃんも、この俺が必ず幸せにすると約束する。……俺が生涯愛するのは透子、君だけだ。なんなら誓ってもいい、この指輪に」「……なんで、そこまでして」そんなこと言われても、何も言い返すことの出来ないわたしって……。もしかしてこの男に、少しでも期待を持ってるってことなの?この前みたいに、断ろうと思ったの。 本当にそう思っていたのに……。 「……っ」なぜかそれが出来ないーーー。「愛してる、透子。 だから、俺と結婚してほしい」そう言って答える間もなく、彼はわたしの左手を取り、わたしの左手の薬指にその結婚指輪をそっと嵌めた。その指輪のダイヤがキラキラと輝いていて、とてもキレイな指輪だった。「キレイな指輪……」「気に入ってくれた?」確かに指輪はキレイだし、雰囲気もいい。……だからこそ、流される自分が悔しい。「……その言葉、守ってくれるんでしょうね」「え?」「生涯わたしだけを愛するって言葉よ。……その言葉、本当に信じてもいいのよね?」 なぜか不思議と、そう言葉にしていたわたしだった。「信じていい。必ず幸せにするから、透子も子供も、絶対に」「……約束を破ったら、即離婚するからね」「ああ。それで構わない」なぜそんなこと、わたしは言ってしまったのだろう……。こんなヤツと結婚するつもりなんて、なかったのに… 本当にそう思ってた、のに……。「……わたしのこと、ちゃんと守ってくれるの?」「もちろん。……守り抜くよ、どんなことがあっても」 わたしのその問いかけに、高城藍は即答して答えた。そしてわたしの目を見つめると、わたしの左手を取り片方だけ膝をつく。そのまま映画のワンシーンに出てきそうなポーズを取り、再びわたしにプロポーズの言葉を放った
「教えて。どこで……? どこで会ったの、わたしたち」わたしは気になって聞いてみた。「俺が夕月園に泊まりに行った時だ」「……え?」藍、夕月園に泊まったことがあるの……? それは知らなかった。「俺が夕月園に一人で泊まりに行った時、その時に初めて君と出会った。……まだ君が、若女将になったばかりの頃だったかな」わたしが若女将になったばかりの頃……? え、まさか……。「まさか、あなたあの時の……?」「思い出してくれた?」思い出した……。高城藍は、あの時わたしを助けてくれた人だったんだ……。 「……まさか、わたしを助けてくれたのがあなただったなんて」「俺で残念だった?」「……そうね。出来れば知りたくなかったことだわ」それは三年前。わたしがまだ夕月園の若女将になったばかりの頃のことだ。お客様同士が酔っ払っていてケンカをしていた。そして止めに入ったわたしを、一人のお客様が突き飛ばしのだった。 そしてその場に倒れ込んでケガをしたわたしを助けてくれたのが……高城藍だったんだ。「その時、君を見てビックリしたよ。こんなにかわいい若女将がいるのか、ってね」「そ、そんな大袈裟な……」わたしがそう言うと、高城藍は「大袈裟なんかじゃないさ。本当のことだからね」と言った。「俺はその時から、君をずっと見ていた。俺のものにしたいって、ずっと思ってた」「……じゃあなんで、今だったのよ」「弱っている子を落とすためには、゙タイミング゙ってのが必要だったんだよ」「タイミング……?」そんなことを言われて思ったのは、夕月園が買収されて弱っているわたしを落とそう作戦だったことに気付いて、ちょっとムカついたことだった。「……まさかそれで? それでずっと、タイミングを見計らってたってこと?」「簡単に言うと、そういうことになるかな」「アンタ、本当に最低ね。どこまでクズなのよ……」タイミングを見計らってまで、わたしに近づこうとしたなんて……最低最悪だわ。計画的な行動だったってことでしょ?最低すぎる……。わたしが夕月園に未練を残しているとわかっていたから、今だったのね。……全部繋がった。「クズでも何でもいい。君と一緒にいられれば、それだけで」だけどそうやって甘い言葉を言われたら、不思議と何も言えなくなる。言い返そうとしたいけど、言葉が何も出てこない。そんな時
「……えっ?」「お疲れ様、透子。待ってたよ」「……なんでアンタがいるのよ。呼んでないんだけど」なのに目の前には、高級車に背を当てて待っている高城藍がいた。「決まってるだろ?君を迎えに来たんだ」「……は?」迎えに来たって……。わたしそんなこと、頼んでないんだけど……。「さ、乗って透子」「……いい。一人で帰れるから」そう言って交わそうとしたのに、「ちょっと待てって」と言われてそれを阻止された。「なんなの、もう!邪魔なんだけど……!」「一人で帰るなんて危ないだろ?送ってくから」「一人で帰れるから、大丈夫だって! もう、余計なことしないでよ……!」そう言って高城藍を睨みつけるけど、高城藍は怯むことなくわたしにこう言ってきた。「前にも言っただろ。お前に何かあったら、俺が困るんだよ」「……なんで、そんなこと言うのよ」そう言うと高城藍は、こう返してきた。「当たり前だろ? 透子、君は俺にとって大切な人なんだから」「大切な……人」「そうだ。俺には、君と子供を守る義務があるんだ。……分かるだろ?」そんなこと言われたって……。わたしはそんなこと、頼んでないってば……。勝手に言ってるのは、そっちなのに……。「……そんなこと頼んでないって言ってるでしょ」わたしのことは、放っておいてほしいのに……。「でも俺は、お腹の子の父親だ」「……一人にして。放っておいてってば!」そう言ってみたけど、高城藍は引き下がろうとはしなかった。「すまないが、それは出来ないな」もう、しつこいって……。「……もう、分かったわよ。乗ればいいんでしょ、乗ればっ!」 確かにこの子の父親は、高城藍本人だ。それには間違いない。「よし、じゃあ行こうか」「………」わたしは折れて、彼の高級車の助手席に乗り込んだ。シートベルトを付けた彼は、片手でハンドルを握りながら車をバックさせて車を出発させた。「……今日、女将さんがお店に来たの」「え、そうなのか?」「……アンタ、女将さんのところに行ったんだって? わたしの居場所を知ってたら教えてほしいって、言ったんでしょ?女将さんに」「なんだ、バレちゃったんだ」わたしがそう問いかけると高城藍は、笑いながらそう言ってきた。「なんでわざわざ、女将さんのところになんて行ったのよ」「だってあの人なら、透子の居場所を知ってる
「そうなんか……。 アンタ一人で、育てるつもりなんか?」「……はい。そのつもりです」わたしはそう答えると、女将さんの方を見た。「そう……。アンタは、本当にそれでええの?」そう問いかけられたわたしは「え?」と返事をした。「一人で産む言うても……。子供を一人で育てるのは大変やろ?お金もかかる故、働きながら子供を育てるのは、容易じゃないんよ?」 女将さんからそう言われ、また現実に引き戻されてしまう。「……分かってます。だけど、あの人には……。高城ホールディングスには、頼りたくないんです」「透子……」「わたしはあの人たちを許したくない……。許せる訳、ないんです。 あの人たちは、わたしたちを……夕月園を、めちゃくちゃにしたんですよ?倒産にまで追い込んだ」わたしのその言葉に、女将さんは黙ったままわたしを見つめていた。そしていきなり、こんなことを話しだした。「実は言うとね……。夕月園の経営が終わってからしばらくして、高城藍さんがわたしのところに来たのよ」「……え?」高城藍が、女将さんのところに……?「アンタのことを探してる言うとったのよ。アンタの居場所を知らないかって、うちに聞いてきてん」「高城藍が……?」なんでわざわざ、そんなこと……。「わたしも知らない言うたんやけど……。知ってたら教えてほしいって言われてね」「そう……だったんですか」どうして彼は、そこまでしてわたしを探したのだろうか……。「まさかこんなとこで働いているとは、夢にも思ってなかったけど……。でも元気そうで良かった」そんなことを言われたわたしは、女将さんに「心配かけて、すみません……」と答えた。「ええんよ。気にせんといて。元気ならええのよ」「……はい」高城藍と出会ったのは、偶然なんかじゃなかったんだ……。これは必然だった。出会わなければ良かったのになんて、思っていたのに……。「……アンタ、もう旅館の仕事には戻らへんの?」女将さんからそう問いかけられたわたしは「……女将さんと一緒に働くことが出来ないのなら、働く意味なんてありません」と答えた。 「夕月園はわたしにとって、家族みたいなものだったし……。家族を奪われた今、もう旅館で働く意味なんてありません。 女将さんと一緒に働くことが、何よりわたしの幸せだったんですから」女将さんと働けないのなら、わたしはも
アイツと出会わなければ、わたしはアイツと身体を重ねることもなかったし、妊娠することもなかったんだから。「てか昨日のあの人って、あの高城藍よね?お腹の子の父親なんやろ? 結婚は、いつする予定なん?」そう聞かれてわたしは「……結婚するつもりは、ないので」と答えた。「え、そうなん?なんでや?」「……あの人とわたしは、住む世界が違いますから」わたしはあの人とは、どう見ても不釣り合いだから……。「え?せやけど……」「……子供のことを考えての、決断です」「そうなんか……」産まれてくる子供に父親がいないのは可哀想だとか言われることも、わたしはわかっている。けどわたしは、自分の人生のことを考えて決断したい。「……子供には、罪はないですし」「まあ、そうやけど……」言いたいことはなんとなく、わかっているけど……。「……大丈夫ですよ。無理はしませんから、絶対に」わたしはアイツとなんて一緒にいられる自信はない。 そもそも、住む世界が違うあの人と、これから一緒に暮らせる勇気もないんだから。「分かった。くれぐれも、無理はせんようにね」「ありがとうございます」子供の父親は、確かに高城藍だ。 産むと決めた以上、その覚悟は揺らぐことはない。わたしはシングルマザーとして、この子と一緒に生きていくんだ。 もう、そう決めた。「あ、もう戻らなきゃやね」「そうですね」休憩を終えて店内に戻ると、とある人物が目に入ってきた。「……え?」そこにいたのはーーーー。「久しぶりやね、透子」「え……。女将、さん……?」夕月園の元女将、野本夏乃(のもとなつの)さんだった。でもなんで、女将さんがここに……?「元気やった?透子」「え、女将さんがなんで、ここに……?」わたしがここで働いていることを、わたしは夕月園の人たちにも、誰にも言ってなかったのに……。どうして分かったのだろうか……。「高城ホールディングスの人に聞いたんよ。アンタがここで働いているって」「え、高城ホールディングスで……?」「ええ。……言うてなかったんやけど、うち今は別の旅館で働いているんよ」え?別の旅館って……? 夕月園以外の旅館で?そうなんだ、知らなかった……。「そうなん……ですか」「透子、ちょっと話せる?」「……あ、はい」わたしは女将さんと少し話すため、カフェの外に出た。