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last update Last Updated: 2025-11-28 11:17:16

 時間は夢うつつのままに過ぎていく。

 窓の外の光が金色から茜色へ、深い藍色へと変わっていくのを、私はただぼんやりと眺めていた。

 いつの間にか部屋には音楽が流れている。いつの日か私が好きだと彼に伝えた、モーツァルトのクラリネット協奏曲。軽やかなヴァイオリンの音色と、柔らかなクラリネットのメロディは、いつもなら私の気持ちを落ち着けてくれる。でも今は、ただ意識の上辺を撫でるだけだった。

(これから、どうなるんだろう)

 体の自由はきかず、ここがどこなのかも分からない。不安と絶望で押しつぶされそうだ。

 頭はぼんやりとして考えがまとまらない。私はただベッドに横たわって、高い天井を見上げていた。

 窓の外が暗くなる頃、いつの間にか部屋の明かりが灯されていた。その柔らかな光の中で、寝室のドアが開く。

 食事のトレイを手にした湊さんが立っていた。

「夏帆さん、目が覚めたのですね。よかった……」

 彼の声は心からの安堵と、深い愛情に満ちていた。

「湊さん……ここは、どこなの?」

 湊さんはとても優しい笑みを浮かべた。いつもの王子様を思わせる、優しくて美しい微笑み。

 でも、何かが違う。

 うまく言えない。

 何と言えばいいのか……例えば、この美しい部屋に似たもの。

 心配とか、優しさとか、愛情とか。そういうきれいなものに何かを隠している。

 彼はトレイをベッド脇のボードに置いた。私の手を取り、自分の頬に寄せる。

「もう大丈夫ですよ。ここは、世界で一番安全な場所です」

 湊さんの声は陶然としていた。

 彼は頬を寄せた私の手に、唇を這わせた。甘いはずの感触に、背筋が凍る。

 あの海辺の別荘でキスしそうになった時も、彼は私の意志を確かめてくれていたのに。今は何のためらいもない。

 これまでは相応の節度をもって接してくれていたのに、タガが外れている。

 彼は私の指に一本ずつ口づけを落とした。うっとりと幸せそうな様子で、いかにも大事な宝

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