เข้าสู่ระบบ「では、取り合えずケンタウロスの草原へ案内してもらえるか」「我らがプラートゥム草原へ案内しよう。ああ、名乗るのを忘れていた」 栗色のケンタウロスが言った。「オレはプフェーアトだ。助けてくれた礼を忘れていた。感謝する」 褐色のケンタウロスが名乗る。「吾輩はパールト。吾輩たちを案じてくれたに疑ったこと、申し訳ない」 灰色のケンタウロスが最後に言った。「我はカル。我らの為に力を貸してくれること、深く礼を言う」 ケンタウロスたちは深々と頭を下げた。 それからのスピードは速かった。 俺がプフェーアトに、レーヴェがパールトに、ヤガリがカルに跨る。ブランに背負わせた荷物をケンタウロスに振り分けて、ブランはコトラと一緒に走る。コトラはともかく、坑道暮らしで足が遅いかと思っていたアシヌスは、意外と荷物がなければケンタウロスと並走できるスピードを持っていた。 ケンタウロスは何処から連れてこられたか分からないが、草原の方角は分かると言った。草原の匂いが微かにする、と言うのである。すげえ。 しかし……尻が……痛い。 どからんどからんと地面を蹴るケンタウロスの上半身にしがみつくので精一杯、しかも背中は激しく上下するので尻が浮いては叩きつけられで困る。「少し速度を落とすか?」 プフェーアトが言うのに、俺は「いいや」と首を振る。「スピード、が、命、だ」「なら、あのエルフの真似をしろ。馬の正しい乗り方を知っている」 胴体にしがみついて、並走するパールトとその背のレーヴェを見る。 レーヴェは微かに腰を浮かせ、太ももで背中を締め付けて、リズムに合わせて馬を上下させている。 上手いな。馬だけに。 って考えてても仕方ない。俺も何とか真似をする。 少し、尻へのダメージが減った。 だけど今度は足に……! 自在雲さえ使えれば、ケンタウロス以上のスピードで草原移動できるのに……いやいや人前では神具や神威は控えるって決めたんだった……でもこの揺れは現代日本人には無理っぽい……免許のいらないバイク代わりって言われてもバイクすら乗ったことない俺には厳しい……基本自転車乗りでした……。 どからんどからんと走っているうちに、少し揺れが減った。「ん?」「分かったか。草原に入ったのだ」 見回せば。 丈の長い草が生い茂る、広い広い、ハーフリングの草原なんか目じゃないって
「でも、サーラ」 俺が力を振るうところを見られたら、ケンタウロスに俺の正体がバレてしまう。生神が来たと分かれば、ケンタウロスに何か影響は出ないだろうか。「ケンタウロスの諸君。幾つか聞きたいことがあるがよろしいだろうか」 サーラの声に、ケンタウロスたちは一斉に彼女を見た。「何だ、ヒューマンの女」「君たちはケンタウロス狩りに捕らえられた場所を正確に覚えているだろうか」「無論だ。あの場所は我々の縄張りだ。草原に戻れば簡単に案内できる」「あと、頭に袋を被せられてから、それを外されるまで、どのくらい時間がかかったか分からないだろうか」 ケンタウロスたちは考え込んで。「うーむ……。そうだな、巨犬木から奥の岩までオレの足で並足で行ったくらいか」 さっぱり分からん。ケンタウロスの人種に時間感覚ってのはないのか。「ふむ……場所は絞れるな」 サーラにはこれで分かるのか? すげえな。「シンゴ、地図を出してくれ」「え? それはミクンが」「お前の持っている地図だ」 俺の持っている地図って……。あ、端末か? マントの内側に手を突っ込んで、荷物の中から取り出したように見せかけて端末を出す。地図を開くと、やはり行っていないここから東は真っ黒のまま。 何が分かるんだ?(お前、神の力というものを深く考えていないだろう) どえっ、サーラ!(目の前にいるのにいきなり心の中に話しかけてくるのやめてくれ!)(こういう時に使わずして何の神威だ) 呆れた空気が伝わってくる。(お前が端末に頼らないと神威を発揮できないのは、お前が自身の力を把握できていないからだ。お前の力は空気のようなもの。風にも刃にも凍えにもなる。だが、空気を動かす方法が分からないからお前の世界で言うせんぷうき? や、えあこん? みたいに限られた力しか使えないのだ)(お説教はいいから。何が言いたいんだ?)(捕らえられた場所は特定できる。運ばれた……移動時間も推定できる。端末を使えば、その歩くスピードを計ることもできる。そして目的地は洞窟のような場所だったという。洞窟があるような崖や、丘、あるいは地底……草原では限られてくるだろう) 納得。 それにしても多分全世界の生神が苦労しているだろうなあ。昨日まで普通の人間、死んでいきなりあんたは神様と言われて別世界に派遣されて、分からん力を渡されて、さ
「魔物、だったんだね」「ああ、魔物だ」 ケンタウロスは頷いた。「魔獣の攻撃が剣呑になって来て、我らもできるだけ仲間とはぐれぬよう、仔馬は集団の真ん中に入れるよう、と対策をしていた。だが、唐突に十余の魔物が現れた。足が二本の魔物だ」 魔物と魔獣、手っ取り早く見分けるのは足の数だ。ワーラットやワーベアと言った変身型の魔物も、普段は二本の足で歩いている。足が四本以上あったら普通は魔獣と考えて間違いない。もちろん、人間にもケンタウロスという例外種族がいるが、もしそんな例外種だったらケンタウロスはまずそれを指摘していただろう。「彼らは魔獣を自在に操り、我らの群れを取り囲み、魔法の縄で一気に群れごと捕えて連れて行く。その縄から逃れた数少ない仲間が他の群れに警告を告げ、我らはできるだけ対処しようとしたが、我らの群れにもケンタウロス狩りの魔物が来た。我らは散ることにした。群れでいたら被害が大きくなると忠告されたからだ。俺たちの群れは俺たちが囮になることで逃げ果せた……と思う。捕らえられた直後頭に袋をかぶせられて縄で縛られ、何処に連れて行かれたのか。恐らくは洞窟を掘りぬいたような場所で、他の群れのケンタウロスたちと牢獄に入れられ、俺たち三人が連れ出され……。連れ、出され?」「そこで記憶が終わってる」 俺が口を挟むと、うむ、とケンタウロスは頷いた。「もしかして、我らは何かをされたのだろうか。失った記憶の中で、何か酷いことをしていたのだろうか。思い出せぬ……きっと貴公らに世話になったはずなのに」「あ、無理に思い出そうとしなくていいです。それするとキツイから」 俺は片手をあげて考え込むケンタウロスを止めた。「今までもらった情報で十分です。魔物がケンタウロスを捕えていること、この街道の近くにそいつらの本拠地があること。それだけ分かれば」「分かれば、どうするのだ」 狩りに行くだけだ。 人間を捕えて人体実験して魔獣化させて人を襲わせた、その落とし前をつけに行く。 そう言ったら、三人は決意を目に漲らせて言った。「吾輩たちも、共に連れて行け」 三人のケンタウロスが、そう言い張った。「意識戻ったばっかなんでしょ? 危険だよ」「危険は承知」「だが、捕らえられているのは我らの仲間の群れ。そして我らの群れも襲われた。もしかしたら我らの群れの誰か
四本の足を折って座り込んでいるケンタウロス三人の様子を確認する。 呆然自失……っつーか何が起きたかもわかっていないって顔だ。仕方ない、俺の神威【巻き戻し】は記憶も過去に巻き戻す。自分が何をされてどうなっていたか、ほとんど覚えちゃいないだろう。 でも、とりあえず。「大丈夫……ですか?」 ケンタウロス……栗色一人、褐色一人、灰色一人、計三人は辺りを見回す。「オレたちは……」「確か、魔物のケンタウロス狩りに遭って……」「ケンタウロス狩り?」 俺の言葉に三人はやっと俺たちの存在に気づいたらしく、立ち上がって警戒態勢に入る。「あー、えーと」 どういえばいいかなあ。俺が生神だって名乗っちまうのが一番早いんだけど、できればそれは噂にならない方がいい。神の力に頼らないで生きて行けるように世界を【再生】するのがおれの仕事なんだから、それ以上のことをやってはいけない。「……とりあえず、ケンタウロス狩り、ではないです」 一応自己弁護。「西の方から来た人間です。皆さんを捕まえようとか、そう言う気はありません」 M端末を懐に収めるようにして収納してから、俺は両手を広げて敵意がないことをアピールした。「第一、俺たちの装備で、皆さんをどうにかできるようなものはありません」 灰色が胡散臭げに俺を見たが、俺は両手を広げたまま、三人のケンタロスに訴えた。「敵意はないと言う。ならば何をしに来た。西の草原へ、二本足の人間どもよ、貴様らは何をしに来た」 警戒バシバシモードだなあ。まあ無理もない。魔物狩りに襲われた後何処まで記憶が残ってるか分からないけど、この後人体実験に使われてむごい姿で俺たちを襲わされたんだもんなあ。「あー。あのね」 ミクンがグライフから飛び降りて、前に出た。「おお! 丘の民!」「分かる? ハーフリングだって」「分かるとも、丘の民。共に草原を駆ける小さき人間。我ら草原の民と丘の民は友だ。長い間報せがなかったので、どうなったかと心配していた」「ありがと。この人たちも心配いらない。あたしの友達で、ケンタウロスがどうなってるか心配してたあたしと一緒に来てくれたんだ。ケンタウロス狩りとやらには一切関係してない。むしろ助けてくれたんだ」「……むう」 ケンタウロスは腕組みをして俺を見下ろした。「……確かに、そのような悪事を成す顔ではない。しかも
俺より頭五つほど高い位置にあるケンタウロスの人間の顔が、不気味に歪んで笑ってた。 殺す気だ。殺したいんだろう。魔獣の戦闘本能を植え付けられている。 だけど。 ……なら、何で、泣くんだ? 見上げれば、笑いながら涙を流す魔獣ケンタウロス。「まだ人間の心が残っている」 サーラが呟いた。「魔獣の魂を受け入れられるよう魔獣化された肉体と精神で、それでも抗っているんだ。魔獣の本能と……」「なんとかできないの、シンゴおにーちゃん」「何とか……出来れ、ば」 ふと、グライフの上のアウルムに目が留まる。 少し考えて、サーラを呼んだ。「サーラ、サーラの炎は魔獣の魂を焼き尽くすことができるか?」「できるが、魂だけを焼き尽くすのは無理だ。肉体は魂の座と化している。あの肉体が崩れたりしない限り、中の魂は焼けない。今の彼らは肉体改造で魂を無理やり同化されているから……」「肉体が戻れば、いいんだろ」 俺はM端末を構えた。「神威」 前脚で踏みつぶそうと後脚で立ち上がるケンタウロスの一体に、端末を向けて。「【巻き戻し】」 神威の光が漆黒のケンタウロスを包み込む。 光の中、しゅるるるる、とケンタウロスが縮んでいく。はちきれんばかりの筋肉が解かれていくように小さくなり、大木並みに膨れ上がっていた四つ足もしっかりバランスの整った馬のものとなり、漆黒がすぅぅ、と口から吐き出されていく。「サーラ!」 名を呼ばなくても、炎の守護獣は自分の役割を分かっていた。サーラが翻した手から炎が溢れ、小さくなったケンタウロスの頭上に漂う漆黒の靄を焼き尽くした。 おっと、気をつけないと子供にしてしまう。 肉体が通常サイズ(それでもヒューマンの二倍くらいはあるんだが)に戻ったところで【巻き戻し】を止めた。 かくんっとケンタウロスの膝が折れ、その場に座り込む。「ぶしゅう!」「はいはい! 今度はそっちかブラン!」 四つ足で狙われて、小柄なブランが逃げ回っているが、なんせ荷物を積んでいるから身軽とはいかない。時々ミクンの操るグライフが上空からケンタウロスの気を引くけど、アウルムを積んでいるので思い切った動きができない。 俺はブランを襲っている魔獣ケンタウロスに【巻き戻し】をぶっ放す。しゅるるる……とケンタウロスは縮み、漆黒の靄が出てきたところで停止。即座にサーラがケンタウロス
木々を薙ぎ倒して現れた巨大な生き物。 ……魔物と言わなかったのは、俺が信じたくなかったからだ。 筋骨隆々とした人の上半身。 均整美さえ感じさせる馬の下半身。 見上げるほどの巨体に殺意を漲らせ。 噂に聞いた……いや、地球にいた頃からも神話として語られていた、肌も、神も、尾の一筋までもが漆黒に染まった巨大なケンタウロスが三人、襲い掛かって来たのだ。「ケンタウロス?!」 レーヴェが言ったきり言葉を発しない。「落ち着け! 草原の民、おれたちは……」「ヤガリ、離れろ!」 俺は叫んで、何とかコミュニケーションを取ろうとしたヤガリを後ろに追いやった。「ケンタウロスだぞ!」「やられてる!」「何……?」「やられてる、敵対勢力にだ! 分かるんだ……何かがあって、敵対勢力の魔獣の魂を埋め込まれて、望んでもいない暴走をしている!」 ヤガリも言葉を失った。 くそ……あの嫌悪感に満ちた、何とかしなければならないっていう本能はこれだったんだ!「うぉるるる……」 口から遠吠えに近い息を吐きだした魔獣ケンタウロスが前脚で地面を掻く。「どうする」 サーラが珍しく憂鬱そうな顔で言った。「敵対勢力は試している。魔獣化した人間がシンゴを殺せるのか。生神が魔獣化したケンタウロスを殺せるかどうか」「分かってるよ。敵対勢力にとって損は小銭程度の負けでしかないし、勝てば世界そのまま滅亡に持って行ける、分のいいギャンブルだ」「ぎゃんぶる?」 アウルムが首を傾げた。目の前に魔獣ケンタウロスがいるのに動じていないのは、恐怖を感じないほど幼いのか俺たちに絶対の信頼を寄せてくれているからか。「あいつら、何考えてこんなひどいこと……」 ミクンの言葉にサーラはひどく憂いだ声で説明した。「魔獣化したケンタウロスがシンゴを殺せれば、あちらは大喜びで世界滅亡へとまっしぐらに駆けだすだろう。魔獣化されたくなかったら……これは立派に脅しになる。そして、何も出来ず、シンゴがケンタウロスを殺せば、生神が人間を殺したという事実が野火のようにモーメント中を駆け巡るだろう。生神を信じる人間はいなくなる。そして、シンゴが力を失って死ねば、モーメントは滅亡へとまっしぐら」「そして俺たちにとっては最良の結果が出たとしても、実験の一つが失敗しただけで、敵対勢力は次の手を打ってくる。もっ







