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第4話

Auteur: ASAMI
last update Date de publication: 2025-12-22 23:16:42

ドクン……。

まだその先は見ていないのに、心臓が勝手に反応する。

大きく動く鼓動が、あたしの全身を震わせた。

瞳が小刻みに揺れて、視界がぶれる。

マキが指差したその先には、廊下側から2列目の一番後ろに腰かける、柊の姿があった。

見間違いなんかじゃなかった。

同姓同名でもなかった。

柊だ……。

大好きで、中学からずっと想い続けてきた、古賀 柊だ……。

約2年ぶりに見る彼の顔立ちは、少し大人になっているようだった。

中2の時はまだ丸く童顔だったのに、顎のラインがスッと通り輪郭がはっきりしているし、体格だってガッチリしていた。

黒い髪は、ワックスで程良く整えていて、すっかり子供っぽさはなくなっている。

また、この町に戻って来たんだ。

「……柊」

思わず、声が漏れてしまった。

胸の中でこっそり名前を呼ぼうと思っていたのに……。

あたしのつぶやきが柊に聞こえたのか、ふと、柊が視線をあげ、こちらを向いた。

真っ直ぐ、目が合う。

あたしを見つけ小さく微笑んだ彼の切れ長の目が、優しく下に垂れた。

あの頃の面影は少し残ってはいるけれど、2年とういう歳月のせいか、まるで別人のように見える。

あたしは、彼にうまく微笑み返すことができなかった。

少し口角を上げて、目を泳がせながらすぐに俯く。

そんな消極的なあたしを見兼ねたマキが、あたしの背中をトンと押した。

勝手に足が2,3歩進み、机1個分の距離を開けたまま足にブレーキがかかる。

「久し、ぶり」

まだ、柊の顔を見れない。

俯く視界に入るのは、柊の机の上に乗っているスクールバックと、その上に置いている彼の手。

彼の手の甲に浮かび上がる血管が、男らしさを感じさせる。

「久しぶり」

とても低い声だった。

やっぱり、知らない人みたい……。

「元気、だった?」

「うん。そっちは?」

「うん。あたしも、元気だったよ」

何ともぎこちない会話。

なかなか言葉が続かなくて、たった2,3個言葉を交わしただけで終了。

これ以上どうしたらいいのかわからなくて、柊の目をチラリと見て小さく笑い、出席番号順に並んだ自分の席を探す。

席は、柊の左斜め前の席だった。

どうしよう……。

何を話したらいいんだろう。

もっと喜ぶべきだ。

いや、嬉しい。物凄く嬉しいよ。

だって、2年間想い続けた人がまたこの町に戻ってきて、しかも同じクラスなんだから。

2年で同じクラスってことは、来年だって一緒だ。

もう、離れることはない。

それなのに……。

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