Share

47

Author: 酔夫人
last update Last Updated: 2026-01-04 11:00:18
桔梗と花岡社長の関係については調べた。

男の嫉妬は女に向かうから、見当違いの俺の嫉妬で桔梗を傷つけないため、桔梗と花岡社長の関係については調べておいたほうがいいと祖母さんに言われたからだ。

調べてみると桔梗と花岡社長は確かに仲が良かったらしいが、年頃の男女にしては珍しく性愛めいたものはなく、二人の間にあったのは友情だったという。

但し、あえて名前をつけるなら『友情』という雰囲気。

互いに互いしかおらず他の者は信じられないといった排他的な雰囲気が二人の間にはあり、友情でくくるには大きすぎるが、だからといって恋人になる前のような雰囲気は一切なかったという。

二人は大学3年生のときに同居を始めた。

花岡社長はあの通りのルックスなので女にかなり人気があり、二人の同居のニュースは大学でかなりの騒ぎになり、大勢が二人の同居理由を探った。

その結果、分かったのは異性からのアプローチを避けるため。

二人とも異性からのアプローチに困っていた。

桔梗のほうは困るというレベルを大きく超えていて、大学2年のときに同じ学生アパートの男子学生に帰宅したところを襲われている。

当時隣人だった花岡社長が助けたので大事はなかったが、二人の同居のキッカケはそれだったらしい。

それでも二人は同居。

二人は周囲の思惑に反して恋人同士にはならず、家族のような関係でいた。

そのことからかつ桔梗には花岡社長の生き別れの妹という説さえも出ていたという。

友情。

――あの子を返せ!

桔梗にとって花岡社長は感情の関係。

桔梗の記憶がなくなり花岡社長は桔梗と距離をとるようになった。

桔梗は花岡社長に安心感を抱いていたが、それは目が覚めた直後の本能的な反応だったようだ。

時間が経つと記憶がなくて整合性のとれない感情は薄れていき、いまの桔梗にとって花岡社長は『大学時代に仲よくなったらしい人』。

かつては子どもの後見人にと、そこまで信頼し合っていた友人だったというのに……俺はそんな存在を互いから奪ってしまった。

「花岡社長にアポを取ってくれ」

桔梗は俺にそれを奪われるまで処女だった。

あれだけの女性だ、それまで誘いが一度もなかったとは考えられない。

最初は花岡社長への思いからだと思っていたが、調べれば調べるほど桔梗は彼に対して女の情はない。

それなら、やはり……錦野柾のために純潔を守っていたのではないかと思ってし
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 知らないまま、愛してた   57

    苦しい!「ぐっ!」自分のうめき声で目が開いた。一体何が……うっ。体の中を逆流してくるものにえづくと、口の中にあった大きなものがなくなって……。「げぇっ……ぐっ、げっ……」びしゃりと床に吐瀉物が落ちる。その様子に思わず怯み、続いてせり上がってきたものをぐっと押さえる。 「我慢してはいけない、吐きなさい」……優しい声。あの男とはちが……っ!「はな……っ!」目の前にあった体を思い切り押しのけて、距離をとると着物の合わせを強く握る。……え?知らない、ひと。誰? 「落ち着くんだ、まずは胃の中のものを吐き出すんだ」「え? あ、きゃあっ」戸惑っている間に男性の手が私の後頭部を押さえ、反対の手が私の口の中に入ってこようとする。私はその手を噛んだ。「痛っ」叫んで男性は手を引いたが、それに安心する間もなくその腕に抱きしめられる。「いやああ……っ、ぐふっ」男性の拳がみぞおちをぐっと押してきて、喉が動いたと思ったらまた胃の内容物が逆流してきた。「そうだ、上手だ。苦しいよな。でも、そこに酒瓶が落ちてた。それでこの状況だ。強い酒が何かしらの薬かは分からないが早く、できるだけ多く吐き出したほうがいい」あ……。「そうだ。体の力を抜いて、我慢するな。もう1回いくぞ」そう言われて吐いたところで胃酸しか出ず、彼の舌を打つ音に体が震えた。「これ以上は無理か……君、連れは?」「お、お義祖母様と……あ、の?」難しい顔をした男に戸惑う。「この状況を見たら君のお祖母さん、吃驚して心臓が止まるんじゃないか?」着物は着崩れどころか脱げていて、暴れながら吐いたから吐瀉物が……この人の服にも……。「あ……」私の目線を追った男性が苦笑する。

  • 知らないまま、愛してた   56

    連れていかれたのは8畳ほどの部屋。動かない私の体は男に人形のように運ばれる。意識はあるのに、体に力が入らない。これは、意図的。ソファに横たえられると、背中に柔らかいクッションの感触を感じた。この先の嫌な想像にゾッとする。「やめ……て……」白州と名乗った男の私を見下ろす目は、まるで玩具を見つけたようなもの。喜びと、残忍さがチラついている。「いやあっ」せり上がった恐怖に押されて喉から声が出る。涙が盛り上がるのを感じる。 「ああ、とても素敵だ。その怯えた表情……あはあ、堪らない」男は恍惚とした表情を浮かべると、スーツの内ポケットからお酒の携帯瓶を出した。男は私の目の前でその瓶を揺らす。瓶の中の液体はほんのりと琥珀色を帯びていた。男がふたを開けると、飲み口を私に寄せる。甘い香りに、スパイスのような刺激。「飲み給え」男はそう言うと私の顎を強く掴み、口の中に瓶の飲み口を深く差し込む。「んぐっ!」喉が詰まって、反射的に吐き出そうとしたのに、私の反応を分かっていたように男は瓶の底を頭のほうに押した。慣れた手口。反った首が気道を確保して、得体のしれない液体は喉を下って体の中に入っていく。とろりとした甘さ微かな苦味。「げほっ!」男が瓶の飲み口を口から外すと、ずっと我慢させられた咳が出た。喉が痛い。生理的な涙の滲む目に、男が満足気に空の瓶を振るのが見えた。「おお、ちゃんと飲めたな。うんうん、こうすれば君の体を傷つけずにすむし、お互いに気持ちいい」男の指が帯締めに触れる。結び目の中心に指がかけられ、力を込めて引くと一瞬苦しくなり、絹のこ

  • 知らないまま、愛してた   55

    「素敵な絵ですね」和美お義祖母様に誘われてきた日本画の展示会場で、私は1つの絵に魅せられたように目を奪われた。隣りにいるお義祖母様も納得したように頷く。「石川明梗の作品ね。彼はまだ若いけれどすでに名の知れた日本画家なの。彼の絵はどれも素晴らしいけれど、私は彼の美人画が特に好きね」「そうなのですね」私が相槌を打つと、お義祖母様は私の絵を見比べて笑った。「どこか桔梗さんに似ているわ」「そう、でしょうか」美人画に描かれた人に似ているなんて、美人だと間接的に言われた気がして照れくさい。それが憧れて目標としている女性の一人であるお義祖母様なら尚更だ。 「桔梗さん?」「お義祖母様、私はもう少し……」お義祖母様が楽しそうにフフッと笑う。「とても気に入ったのね。素敵な出会いは大切にしなくてはね。私はのんびりと他の作品を見ているから、満足したらいらっしゃい」お義祖母様の気遣いに感謝して、また絵に向き直る。美しい。そして――懐かしい。なぜだろう。初めて見るはずなのに、胸の奥がきゅうっと締めつけられる。まるで忘れていた誰かに再会したよう。夢の中のような朧げで、でも何かを掴んだような感覚。絵の中の女は椅子に座り、うつむき加減で顔は見えない。薄紅の小袖に墨色の帯、髪は結い上げられて白い襟足が無垢でありながら艶めかしく際立っている。目元は伏せられ、唇は閉じて、その僅かな表情とも言えない表情には言葉にならない、切なく儚げな感情が見える。静かで、凛としていて、ああ、そう、誰かを待っているような寂しさを感じる。傍にいたい?だからここから離れられないの?心が、絵の中に引き込まれていくよう……。

  • 知らないまま、愛してた   54

    恋をすると人は綺麗になると言うが――。「予想はしていたけれどこれほどとは……」佳孝の畏怖混じりの感心に深く同意する。凄みのある美しさといえばいいのか、毎日これに晒されている桐谷蓮司に軽く同情した。 「どうしたの?」不思議そうに首を傾げる仕草は嫋やかで、黒髪が揺れて華奢な首筋が顕になる様子に同じ女の感覚を持つ私でさえドキリとしてしまう。百合めいた感覚というのか、目をそらすべきと本能は言うのに、目をそらしてホッとしても、気づけばまた桔梗を目で追っている。 桔梗は、よけい危うくなった気がする。これまでの桔梗はどこか“張りつめた美しさ”があって、誰にも触れられたくないと願う花のように他人を拒絶していた。でも今は、摘み取られることを心待ちにしているような芳しさがある。健康な身体で性欲のある者には堪らないだろう。隣で佳孝が目で『これ、外に出して大丈夫?』と訴えてくる……正直、この匙は桐谷蓮司に投げつけたい。お前のせいだ! 「蓮司さん、珈琲のおかわりは?」幸いなのはこれが向けられているのは桐谷蓮司だけであること。私や佳孝に向けるものと、桐谷蓮司に向ける眼差しは違う。ほんの少しまぶたが長く閉じて、次に開かれた目は甘やか。話しかける声はしっとりとした尾を引き、唇のわずかに揺れが艶めかしい。恋を知った桔梗は、強烈だ。健康的な身体で、健全な性欲もあり、桔梗に惚れている桐谷蓮司には堪らないだろう。 媚びているわけではない。肌を寄せるでもなく、甘えた言葉を発するわけでもない。振られたという事実と、桐谷蓮司の妻であるという現実とを合わせて、せめて桐谷蓮司の妻と名乗って恥ずかしくないように努力しようとでも思っているのだろう。その努力が、努力家の桔梗らしいその結果は

  • 知らないまま、愛してた   53

    「なんで俺たちが呼び出されるわけ?」佳孝と一緒にスタッフに案内された個室に入ると、中にいた桐谷蓮司が顔を上げた。顔色も表情も素面だが、桐谷蓮司の前に置かれたボトルが今日おろした新品ならかなり飲んでいることになる。「花岡社長、滝田さん。なにを飲む?」私と佳孝は互いの顔を見て、肩を竦めるとまだ扉の前にいたスタッフにそれぞれのお酒を注文した。 それにしても、桔梗の夫となったこの桐谷蓮司とこうしてお酒を飲む仲になったことに驚かされる。それもこれも――。「相変わらずいい男だなあ」佳孝のせい。この滝田佳孝は私のパートナーで、普段は完璧に同性愛者であることを隠している。でも桔梗とこの桐谷蓮司にはすぐにバレた。桔梗には性的なものを感じないという理由で、逆に桐谷蓮司には性的なものを感じたという理由で。桐谷蓮司はこの見た目だから男にも好意を寄せられることが多く、何となく分かるようになったという。私も一応この見た目だから言い寄られることが多いから、何となく分かるのもわかる。 あの日、桔梗のことで話したいことがあると桐谷蓮司に言われ、心配だから一緒に行くという佳孝の提案を受け入れたのが間違いだったのか。勘がいいところも桐谷蓮司は桔梗に似ていて、桐谷蓮司に見惚れた佳孝に私がムッとした一瞬を逃さず、私たちの関係に気づいた。ただ、私がトランスジェンダーとは気づいていないようだけど、それは桐谷蓮司にとってはどうでもいいらしい。私から見て桐谷蓮司は桔梗にしか興味がなく、私が桔梗にとってそういう相手でなければ脅威なしと見なしてそれ以上の興味はない。桐谷蓮司にとって私たちは桔梗に関する情報源、ただそれだけ。だから今回の呼び出しも桔梗絡み――。「桔梗に、好きだと言われた」……なに、これ?ラブコメ? *「難しいとこだよね〜。俺は桔梗ちゃんの想いを受け入れればいいに一

  • 知らないまま、愛してた   52

    「アレを使えば俺でもインスタントラーメンを作れるから桔梗は寝て……「多分、無理ですよ」」 被せ気味に否定してしまった……落ち着こう、まずは蓮司さんの空腹を満たさないといろいろ先に進まない。 それに、実際に無理なの。 タッパーといい、インスタントラーメンといい、名家と言われる桐谷家にこういう物があることには驚いたが、納得できる理由がある。 桐谷家とその一族には「まずい料理しかできない」という呪いがかかっている。 蓮司さんが言っているアレ、朋美さんが買った電子レンジでインスタントラーメンが作れるという調理器具。 今日の午前中、まさに今の蓮司さんと同じ顔をして朋美さんは材料を用意し、説明書を熟読し、私が見ている限りミスなく準備を終わらせた。 「温めてスープの粉を入れようとしたのですが、スープの粉が入った袋が調理台の上からなくなっていたのです」 「どうして?」 「理由はさっぱり。あのときキッチンにいたのは私と朋美さんだけで、捨ててしまったのかと思ってゴミ箱も確認したのですが、ありませんでした」 「ホラーじゃないか」 呪いはホラー・サスペンスのジャンルに分類される。 完全に呪われている。 そして、漏れなく呪われている。 誠司用のご飯を作るため、ブレンダーで材料を混ぜていたときお義母様が手伝いたいと仰った。 失礼だけど、ブレンダーのスイッチを押すだけだから大丈夫だろうと思って渡したら――。 「ブレンダーが壊れたんです」 「予兆は?」 「ありません。最初の数秒は普通に動いていたんです。お義母様が……」 あ……。 ――ばあばが美味しいものを作ってあげる。 ブレンダーが壊れる直前、お義母様はそう仰った。 ――美味しくできるかな。 朋美さんは電子レンジを覗き込みながらそう言っていた。 「まさか……美味しいものを作ろうとすると呪いが発動するのでしょうか?」 まさか……でも、蓮司さんはハッとした。 「ラーメンの味変で成功したことがないのはそういう訳か」 そんなレベルなの? 「美味くなるかと思って入れるからか……でも、それ以外にどう思う?」 「それは……筋金入り、としか……」 「こんな筋金いらん。この呪いが誠司まで……」 今度は落ち込んでしまったわ。 蓮司さん、もしかして結構酔っているのかしら。 でも、落ち込む蓮司さんには申し

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status