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第1032話

Auteur: 栄子
実は、この質問を口にした時、音々は少し不安だった。

輝が最初に自分のアプローチを断ったのも、自分の身の上の事情が原因だったからだ。

だから、質問を口にした後、音々は少し後悔し始めた。

衝動的に行動してしまったことを後悔した。彼と正式に付き合う前に、これらのリスクについて話しておくべきだった。

もし、ここまできて、輝が後を引いたら......

「怖くない」

だが輝のその一言に音々はハッとして、彼を見つめた。聞き間違えではないかと、確かめるように聞き返した。「今の、どういう意味?」

「あなたを選んだからには将来一緒に人生を歩む覚悟があるってことだ。音々、私は以前、葛藤し、抵抗もした。でも、だからこそ、今、あなたと一緒にいるのは、熟慮した上での決断なんだ」

彼は音々を見つめ、深い色をした瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。

音々の鼻の奥がツンときた。

たった2日間で、自分がこんなにも感情的になってしまうなんて、音々はとても不思議に思えた。

そして彼女は微笑んで、目に浮かぶ涙を見られたくなくって、輝の視線を避けるように、目を逸らした。

そんな時、輝は音々の手を握り、指を絡ませた。

音々が振り返ると、輝の熱く真剣な眼差しと不意に見つめ合った。

「音々、私はあなたの身の上の事情で引いたりしないから、心配するな。危険がどうこうよりも、あなたが何も言わずに一人で抱え込んでしまうことの方が私は怖いんだ。だから頼ってほしいんだ。少し伝統的な考えかもしれないが、私は二人が一緒になったからには、どんな困難だって一緒に乗り越えて行かなければいけないものだと思ってるんだ。私の気持ち、分かってくれるか?」

それを聞いて、音々の心には温かいものが流れ込んだ。

輝の期待のこもった視線を受け、音々は力強く頷いた。「わかるよ。私のために考えてくれてる気持ちは。でも私、組織を抜けて何年も経つし、ずっと静かに暮らしてきたから、敵に復讐されることも今まで一度もなかったの」

「あなたがそう言ってくれるなら、私は信じるよ。だけど、たとえ何かあっても、私は決して逃げたりしないってことを分かっていてほしい」そう言って輝は音々の手を引いて歩き出した。「あそこで何かイベントをやってるみたいだ。行ってみよう」

音々は微笑んで、「うん」と答えた。

......

付き合い始めたばかりの恋
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