تسجيل الدخول哲也は隣に座り、嬉しそうにはしゃぐ優希を、愛おしそうに見つめていた。そして、イベントの最後、観客が一体となって盛り上がるタイミングになると、色とりどりのテープが会場に舞い降り、照明がふっと暗くなった。マイクを通して、ステージから歌手の声が会場にいるすべての人に届いた。「今から、あなたの人生で一番愛する人に、情熱的なキスを――」すると、会場にいる若いカップルは、次々と抱き合って熱いキスを交わした。優希はこの壮大な光景に思わず驚き、とっさに志音と安人もここに来たら、恋人が見つかるかもなんて思ったから、写真を撮って二人に送ろうとしたのだった。しかし、スマホを構えた途端、大きな手に手首を掴まれた。優希がはっとして顔を上げた瞬間、男の大きな手がうなじに添えられた。そして哲也の端正な顔が目の前でどんどん大きくなっていき、やがて唇にいつもの感触が伝わってきた。優希のまつ毛が震えた。一方、哲也は彼女の唇を吸いながら、低い声で囁いた。「俺の人生で、一番愛してる人。目を閉じて、うん?」そう言われ優希の瞳がかすかに揺れ、思わず胸が高鳴った。そして哲也は目を閉じると、彼女の唇をこじ開けて舌を滑り込ませた。それは、強引だけど優しいキスだった。優希も目を閉じ、ぎこちなく、そして拙く彼に応えた。ステージでは、歌手が最後の曲を歌い終え、マイクを片手に高らかに叫んだ――「『あなたを愛し続けることが、人生で一番素晴らしいことなんだ』って、きっと時間が証明してくれる!今夜ここにいるカップルの皆さん、これからも素敵な毎日を、隣にいるその人と迎えられるように!!」かつて若気の至りによって、二人は一度すれ違ってしまった。でも幸運なことに、時を経て運命に導かれ再び互いにめぐり逢えたのだ。こうして、26歳の優希と29歳の哲也は、今日という日を一緒に過ごすことができた。そして未来も――優希は、これからも二人はずっと離れずに、命が尽きるその時まで、一緒にいるのだと固く信じていた。......3年後。幼稚園の入園式の日。今日は、4歳になる双子の兄弟が幼稚園に入園する初日だ。哲也と優希は、わざわざ休みを取って、二人の付き添いに来たのだ。正確に言うと、もし夫婦が今回、他の人は来ないでと強く言わなかったら、今頃は両家の親族がみんな集ま
寝室で、優希は眠っている間も眉をひそめていた。哲也がそばに来て座り、大きな手で彼女の額に触れた。体温は少し高いけど、幸い、医師は2日ほど休めば大丈夫だと言っていた。優希はぼんやりと目を開けた。哲也の姿が見えたが、まだ頭がはっきりしない。「どうしてまだ仕事に行ってないの?」哲也は苦笑いして、「もうお昼だよ」と言った。「え?」優希は目をこすった。「私、そんなに寝てたの?」「熱があるんだよ」優希は黙り込んだ。「俺のせいだ」哲也は彼女の頬を撫でた。「昨日の夜は、つい夢中になってしまった。これからは気をつけるよ」もともと微熱で赤らんでいた優希の頬は、哲也の言葉でさらに真っ赤になった。「よく言うよ......」優希は彼をちらりと見た。「昨日の夜、最後の時はもうやめてって言ったのに、あなたが無理やり......」そしていざ言葉にしてみると、優希の頭に昨夜の光景が浮かんできた。そう思うと優希は恥ずかしさのあまり、布団を引き上げて顔を隠した。一方哲也は、彼女のそんな仕草がたまらなく愛おしく感じた。「これからはしないよ。一晩に、多くても1回だけにするから」すると、優希は布団を少しだけ下げて、両目だけを覗かせて言った。「週に1回」「......それは、ちょっと難しいかもな」「じゃあ、2回」それを聞いて、哲也は困ったように言った。「優希、俺たちはまだ新婚1年目だぞ。しかも、この1年でまともにできたのは昨日の夜だけなんだ。俺に禁欲しろとでも言うのか?」「でも、あなたももうすぐ30歳でしょ」優希はぶつぶつ言った。「男の人は25歳を過ぎたら一気に衰えるって言うじゃない。今から気を付けないと、体が持たなくなるよ!」そう言われ哲也はきょとんとして、一瞬、困惑した表情を浮かべた。だけど、優希はそれに気づかず、目をこすりながら、「ちょっと喉が渇いたな」と言った。すると、哲也ははっと我に返り、優希の視線に応えた。「水を汲んでくるよ」「うん、ありがとう」優希は彼に甘く微笑んだ。それを見て哲也は優希の頭を優しく撫で、立ち上がるとリビングへ行って水を一杯汲んできた。優希は、その水を一気に飲み干した。水を飲むと、彼女も少し気分がすっきりしたようだった。「何が食べたい?シェフに作らせるよ」優希はお腹を
そして出窓のオーダーメイドのクッションは、結局ぐっしょりと濡れてしまっていた。長い夜。カーテンには二人の影が映り、濃淡を変えながら揺れ動いていた。こうして優希は夢見心地のなか、ドアの外から彩香の声が聞こえたような気がした。もっとよく聞こうとした瞬間、鎖骨にちくりと痛みが走った。優希は甘い声を漏らし、潤んだ瞳を開けて、戸惑ったように無邪気な表情で哲也を見つめた。すると哲也は顔を上げ、優希の無邪気な視線を受け止めた。彼の低く掠れた声は、人の心を惑わすようだった。「余計なことを考えるな」それには優希は何も言えなかった。なぜなら、言い返す言葉は哲也に砕かれてしまったから、優希はただ本能的に彼に抱きつくしかなかったのだ。再び涙がこぼれ落ちたとき、哲也は彼女の指を固く絡め、熱いキスでその唇を塞ぎ、抑えきれずに漏れた泣き声をすべて飲み込んだ。いつの間にか月光が雲の隙間から差し込んで、窓辺を照らしたが、揺れるレースのカーテンが、室内の睦言を隠してしまっていたのだ。聞こえてくるのは、か細く甘い女の声で、彼女はすすり泣きをしながら何度も男の名前を呼んでいたのだった。「哲也、哲也、哲也......」しかし男は強引に、彼女の耳たぶを甘噛みしながら、「愛している」と言うように促していた。すると、優希は涙に濡れた瞳を半分開けたまま、許しを乞うように、「愛している」と何度も繰り返した。それに応えるように、男はさらに激しく、情熱的な愛を注いだ............激しい夜を過ごしたせいで、優希は次の日、まったく起き上がれなくなってしまった。そして、哲也が仕事に出かける時間になっても、彼女はまだ眠っていた。一方、昨夜、優希を疲れさせてしまったとわかっていたので、哲也も彼女を起こさなかった。そして出かける前に、彼は彩香に言いつけた。「会社に行ってくる。優希は今日は遅くまで寝ているだろうから、起こさないで。自然に目が覚めたら、何が食べたいか聞いてあげてくれ」彩香は、若葉が夫婦の世話係として手配してくれた人で、哲也の成長を見守ってきた石川家の古くからの使用人だった。昨夜、酔い覚めの薬を持って部屋へ行ったが、ドアの外から何度か声をかけても返事がなかった。だから、彩香は気を利かせて、そのまま階下へ戻ったのだ。今朝、哲
そう思うと優希は、自分に近づいてくる哲也が、ちょっと怖いと思った。彼女は後ずさりしながら、必死に落ち着いたふりをして笑った。「あなたは飲みすぎよ。藤本さんに酔い覚めの薬を用意してもらったから、まずそれを飲んでからシャワーにしない......ちょっ!いきなり服を脱がないでよ、飲んだ後に体を冷やしたらだめでしょ......」だが哲也は、優希のぎこちない逃げ腰の様子を見て、口の端をくいっと上げた。「優希、いくつか質問するから、正直に答えてくれると嬉しいな」「どうぞ!」優希は彼に手のひらを向けて制止した。「でも、お願いだから、これ以上近づかないでくれる?」すると哲也は足を止め、壁際に追い詰められた女を見た。その瞳は暗く、どこか面白がっているようだ。「わかった、ここから質問するよ」それを聞いて、優希はひきつった笑顔で言った。「どうぞ」「息子は二人いるけど、どっちの方が好きなんだ?」優希は眉をひそめた。「二人とも私が産んだ子よ。どっちも同じくらい大好き。贔屓なんてできないわ!」哲也は片眉を上げた。「じゃあ、俺と息子たちだったら?どっちが好きなんだ?」すると、優希は黙り込んでしまった。なるほど、ここで引っ掛けてくるつもりだったのね。「優希、本音を言ってごらん。じゃないと、どうなるか......」そう言うと哲也は手を上げ、長い指でシャツのボタンを外し始めた。「あなたの方が好き!」最後のボタンまで外されるのを見て、優希は思わず本能的に言った。「あなたの方が好きよ!これでいいでしょ!」「ふぅん?」哲也は彼女に近づいていく。「俺の方が好き、か。それなのに、どうして俺には全くそう感じられないんだろうね?」「それは、あなたが飲みすぎて、感覚が鈍ってるからじゃない......」その言葉に、哲也は低く笑った。「ああ、かなり飲んだけど、使い物にならないほどじゃないさ」すると、優希は言葉を失った。こんな露骨なことを、よくも恥ずかしげもなく言えるわね。そう思っていると、哲也は白いシャツをはだけさせ、鍛えられた胸を半分見せながら、そこに立っていた。優希の視線がそこを通り過ぎ、思わず下へと動いた。そしてきれいに割れた腹筋を見て、ゴクリと唾を飲み込んだ。この1ヶ月、彼のトレーニングに付き合ってきたけど、ますますいい体になったんじ
優希は結翔を抱き、その小さな鼻先をつんつんしながら、優しい声であやした。「もう、おバカさんね。一晩ママに会えなくても泣かないなんて。少しは日向を見習わないと、構ってもらえなくなるわよ」すると、結翔は母親そっくりの綺麗なおめめをぱちくりさせ、彼女を見ては、意味がわかっているようで、にっこりと口を開けて笑った。その姿はまるで小さな天使みたいで、優希の心はとろけてしまいそうだった。そう思っていると、哲也が手を伸ばしてきた。「俺が抱くよ。あなたはもっと食べな」「まだ5分も抱っこしてないわ!」優希は結翔を渡そうとしなかった。「もうお腹いっぱいよ。あなたこそ食べて」「俺ももう食べた」哲也は真顔で言った。「子供たちは大きくなったんだ。ずっと抱っこしてると疲れるだろ」「......疲れてないわ。いつも私の息子を奪おうとしないで!」哲也は呆れて笑った。「『俺たちの』息子だろ。最近重くなったんだ。長く抱いてると腕が痛くなる」「よく言うわ。どうせ息子たちが私にべったりなのが羨ましいんでしょ」すると、哲也は唇を引き結んだ。「あなたの方があの子たちにべったりなんだ。いつも彼らを抱っこしてる時に話しかけても、聞こえてないフリをするんだから」優希は目をぱちくりさせ、ためらいがちに言った。「わ、私、そんなことないわ」「ある。証拠の動画もあるぞ。見るか?」優希は絶句した。......それを見た同じテーブルに座っていた両家の親族が、彼ら夫婦のやり取りに思わず笑みをこぼした。結局、哲也は妻の腕から結翔を奪うことはできなかった。なぜなら、子宝に恵まれた父親は、友人たちに連れ去られてしまったからだ。今夜、友人たちは哲也をただで帰すつもりがないらしかった。優希も、今回は彼らを止めようとは思わなかった。哲也が酔いつぶれたらゲストルームで寝かせよう、と彼女は思った。そうすれば、今夜は二人の息子と川の字で眠れるからだ。子供たちが生まれてこの方、まだ一度も添い寝したことがないのだ。そう思うと、優希はなんだかワクワクしてきた。......一方、哲也は友人たちに捕まってかなり飲まされた。もともと彼はお酒に強いほうだ。飲みながらも、優希が子供を抱っこして疲れていないか、誰か代わってくれる人はいないだろうかと、気になって仕方がなかった。
それに優希はもともと、一度やると決めたら最後までやり遂げるタイプだった。ダイエットをすると言えば、次の日にはもうヘルシーな食事とヨガを始めていた。哲也は、最初から最後までずっと彼女に付き合った。優希がヘルシーな食事をすれば彼も同じものを食べ、優希が朝ランニングをすれば、彼も一緒に走った。優希がヨガを始めると、哲也はわざわざペアヨガの先生を探してきて、喜んで彼女の練習相手になった。1ヶ月後、優希の体重は無事に妊娠前の数字に戻り、体つきも一層引き締まってしなやかになった。哲也は彼女をデパートに連れて行くと、目についた素敵なワンピースやバッグ、靴にアクセサリーなどを片っ端から買って帰った。こうして産後の安静期間が終わってからというもの、優希は毎日のように外出した。法律事務所か実家に行き、石川家や新井家にも顔を出した。とにかく、一日中家にいる日はなかった。その様子に哲也も苦笑いをしながら、「まるで鬱憤晴らしでもしているみたいだ」と言った。しかし、そんな状態は長くは続かず、おおよそ2週間ほどで落ち着いたのだ。というのも2週間後、双子の息子たちが人の顔を認識するようになったのだ。昼間、起きていて、「あー、うー」と彼女に反応してくれる時間も長くなった。すると優希は家を空けるのが惜しくなり、二人の息子と遊ぶことが毎日の何よりの楽しみになった。そして哲也も毎日、仕事が終わると一目散に家に帰った。仕事の付き合いも、友人との集まりも、すべてきっぱりと断って、仕事が終われば、すぐに妻と子供たちのところに帰ることで頭がいっぱいだった。初めて親になった二人は、今の生活にとても満足していた。その暮らしは、温かくて幸せに満ちていた。......12月中旬、両家の年長者たちが相談し、優希と哲也の意見も聞いた上で、双子のお食い初めを祝ってちょっとした集まりをすることに決めた。今回は身内だけのお祝いで、石川家、新井家、碓氷家の親族や親しい人だけが招待された。子供が小さい頃は静かに見守るのが一番で、盛大なお祝いは成人式にしよう、と両家の大人たちが考えていたからだ。優希と哲也も、特に親しくしている友人だけを招いた。パーティーの会場は、二人が結婚式を挙げた山荘だった。当日は山荘が丸ごと貸し切りになり、双子のお食い初めのために行われた催しだけに
誠也はドアを閉めた。二人は見つめ合った。誠也は背筋を伸ばし、崖っぷちに立たされていた頃の面影は消えていた。要は、彼の変化を見抜いた。妻子の存在が誠也に自信を与えているようだった。一方、自分はまるで生き地獄を味わっているようだった。要は唇を歪めた。「誠也、俺たちはお父さんの血を引いているのに、なぜあなたと俺の人生はこんなにも違うんだ?」「自業自得だろ」誠也は冷淡な表情で言った。「彼の悪いところは病気みたいなものだ。病気なら治療できる。だが、そのためには、自分が間違っていると認めなければならない。悪いところを病気として受け入れる必要がある。しかし、あなたはそう思っていな
綾は首を揉みながら目を閉じた。......一方で、誠也は3階のゲストルームへ冷水シャワーを浴びに行った。冷水が頭から流れ落ち、俯く男の暗い瞳には、何かを堪えているような光があった。10分間も浴び続けて、ようやく沸き立つ欲情が冷めてきた。彼が2階の寝室に戻ると、ちょうど綾も浴室から出てきたところだった。湯上りの綾は、白いシルクのキャミソールワンピースを着ていて、明かりに照らされて滑らかな白い肌は玉のように輝き、その美しい姿は誠也の目を奪った。当初、移植後に出た軽度の皮膚の拒絶反応は、すべて消えていた。綾は元の白い肌に戻っていたのだ。透き通るように白い。綾は
綾は唇を噛み締めた。綾が反論しないのを見て、誠也は自分の言ったことが当たっているのだと確信した。そして、彼女の頬にキスをして、言葉を続けた。「山崎圭という身分は複雑かつ特殊で、グレーミッションが終わるまでは、軽々しく明かすことはできないんだ」綾は少し迷ってから、尋ねた。「ということは、あなたが投資していたお金も、違法なものだったの?」「心配するな。違法な金なら、お前に渡したりするわけないだろ。噂されている通り、最初はA国の裏社会から成り上がったのは事実だ。武器の取引でな。当時はグレーミッションが難航していて、特殊なルートで協力者を探すしかなかった。音々のように、政治的な
星羅の様子がおかしかった時も、綾は星羅をあのカウンセラーのところに連れて行ったんだ。最近、星羅の状態は少し落ち着いてきて、丈との関係も以前よりずっと穏やかになった。人にはそれぞれの人生があり、それぞれが抱える悩みや、乗り越えるべき試練がある。真奈美は唇を噛み締め、少し考えてから言った。「さっき、大輝に娘が欲しいって言われたんです」綾は少し驚いた。大輝の変わりようが、あまりにも急すぎるから。「光希ちゃんが可愛いから、つい、そう思っただけでしょうね」真奈美は力が抜けたように笑った。「そうとも限らないですね。彼は哲也くんのこともすごく可愛がっていますよ。哲也くんはもう8歳







