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第654話

Author: 栄子
要は運転席に座り、額から血を流していた。

しかし、彼は笑っていた。おぞましく、どこか悲しげな笑みだった。「綾、いい子だ。戻ってこい。あと一歩でも前に進んだら、俺はお前を撃つしかないんだぞ」

綾は、そんな彼と見つめ合った。

拳銃を向けられているのだ。恐怖を感じないはずがない。

しかし、ここまで来たのだ。今更引き返すことなんてできるわけがないのだ。

「いやよ、私は戻らないから」

綾はベールを取り、イヤリングを外し、首のネックレスを引きちぎった......

そして手の甲で口紅を拭い、要を睨みつけ、強い意志を示した。「死んでも、あなたとは結婚しないから」

要は、真っ赤な目で彼女を見つめた。

「綾、あなたは本当に残酷な女だ」

綾は笑みを浮かべ、振り返りもせず、ためらいなく前へ進んだ――

ドン。

銃声と共に彼女の足元に銃弾が一発撃ち込まれていた。

綾は一瞬だけ立ち止まった。それは危険に直面した時の人間の本能的な反応だった。

しかし次の瞬間、彼女はドレスの裾を持ち上げ、ぬかるんだ地面を踏みしめ、前へと歩み進んで行った――

ドン。

再び銃声が轟き、弾丸は彼女のすぐそばの
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