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第130話

Author: 花野めい
三久の足がピタリと止まり、無意識にそばの物陰へと身を潜めた。

薄暗い駐車場の一角、一台のマイバッハの傍らに、酒井母子二人が立っている。

車のドアは半ば開かれており、由樹が乗り込もうとしたところを、摩美に呼び止められたようだった。

彼は車に片足を踏み入れ、片腕をドアの枠にかけたまま、三久のほうへと背を向けている。

三久には彼の表情までは窺えない。ただ、その低く沈んだ声音だけが耳へと届いた。

「あなたたちが目障りだと言うのなら、追い出さずにどうする気ですか」

摩美は由樹をじっと見つめ返したが、しばらくの間、その気品ある端正な顔立ちからは何の感情も読み取れずにいた。

それでもなお不安を拭いきれず、彼女は言葉を重ねた。

「千歳ちゃんが甘やかされて育ったのは確かに事実よ。それについては私にも責任がある。しかし、たとえあの子は仕事の面であなたを支えられないでも、少なくとも三久よりずっといい家柄の娘なのよ。あなた……絶対に千歳ちゃんを裏切っては駄目よ!」

しばしの沈黙の後、由樹の薄い唇から零れ落ちたのは、たった一言だった。

「ああ」

そのわずかな一言が、三久の胸の奥底へと重く沈
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