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第2話

Penulis: ベルベット
目の前には、ボディーガードを従えたキャシアンが立っていた。

その表情は氷のように冷たく、まるで死神そのものだ。

くっ……こんな最悪な状況だというのに、とんでもなく綺麗な顔をしている。

まさに私の好みど真ん中。長身で、気品があって、ただそこに佇んでいるだけで、周囲の存在を霞ませてしまうような男。

キャシアンの鋭い視線が、まず私を射抜いた。

そして、私が恥じらう暇さえ与えず、その視線は滑り落ちる――私の手が、まだホストの裸の胸に触れている場所へ。

一拍の後、安全装置を外す硬質な音が響いた。

ボディーガードの一人が、ホストのこめかみに銃口を押し当てている。

私は静かに、手を引いた。

キャシアンの視線が、店内の空気そのものを凍らせていく。私には一言も発さず、彼は哀れなホストに向かって冷徹に命じた。

「出ていけ」

美しい顔から一瞬で血の気が引いたホストは、仲間たちと共に慌てて出口へと駆け出していった。

私もくるりと向きを変え、そっと逃げ出そうとした。

けれど、一歩も進まないうちに力強い腕が腰に巻きつき、彼の体へと強引に引き寄せられた。

「誰の許可を得て、こんな場所に来た?」

「私は好きなところに行くわ」

私は顎を上げて、挑むように言い放つ。

「余計なお世話よ」

キャシアンの瞳が、ふっと暗くなった。

一瞬、本気で頭を撃ち抜かれるかと思った。

だが次の瞬間、何の前触れもなく、私は荷物のように彼の肩へと担ぎ上げられた。

「ねえキャシアン!何を考えてんの!?降ろして!この、クソ男!」

背中を殴り、蹴り、暴れたけれど、キャシアンは何一つ反応せず、平然と前進し続けた。

クラブから連れ出され、待機していた黒塗りのロールスロイスに押し込まれる。

「行け」

「はい、ドン」

車が動き出す。私は即座に身体を捻り、ドアハンドルを掴んで開けようとした。

キャシアンは止めようともしない。

ボーンチャイナのカップで優雅にコーヒーを啜りながら、まるで女を拉致するのが朝の日課であるかのように振る舞っている。

「無駄な体力を使うな」

滑らかな声で彼は言った。

「防弾仕様だ。開けられると思うか?」

私の手が止まる。彼を睨みつける。

彼はまっすぐに私を見返してきた。

「婚姻契約書を読まなかったのか?」

もちろん、読んでなどいない。

キャシアンが身を乗り出してくる。近い……近すぎる。顔が数センチの距離にあり、鼻先が触れそうなほどだ。

もし今キスをされたら……押し返す力があるかわからない。

「契約には明記されている」

その低い声が、吐息のように唇を撫でる。

「俺の妻として、バー、ナイトクラブ、そのような場所への出入りは厳禁だとな。読まなかったのか?」

そこで彼は身を引いた。キスはしなかった。

彼が説教を続けている間、私は心の中で盛大に溜息をついた。

「今後、このような場所は出入り禁止だ。そして今日の行いについては、教会でその薄汚れた性根を、清めてこい」

……教会?清め?

胸が激しく上下する。笑いを堪えるのに必死だった。

キャシアン、あなた本気で私が「前世の私」のままだと思ってる?

あなたの従順な人形だと思ってるの?

今世では、前世のような愚かな真似は、二度としない。

私は叫ぶように言い返した。

「懺悔ですって!?冗談でしょ!あなたの婚姻契約なんて私には関係ないわ。だって、結婚なんてしないから!」

車内に、爆弾が落ちたかのような静寂が満ちた。

キャシアンがゆっくりと振り向く。その瞳は暗く、感情が読めない。

長く、危険な沈黙の後、彼は言葉を絞り出した。

「――何を、言った?」

瞬時に頭が冷えた。

もしここで花嫁が入れ替わったことがバレたら……一方的に捨てられたと知られたら……飛行機に乗る前に殺されるかもしれない。

「何でもない。怒ってただけよ。本気じゃないわ」

彼は鋭く息を吐いた。

「いつになったら従うことを学ぶ?」

「一生無理ね。生まれつきこうなの」

私は視線を逸らさずに言い返す。

「支配されるのが大嫌いなのよ」

言い合っている間に、ロールスロイスが実家の邸宅前で停車した。

玄関からデミが出てくる。柔らかい素材のドレスに、優しげな笑顔。まるで天使のような従順さを絵に描いたようだ。

心の中で、私は嗤った。

ほら、キャシアン。

あなたの望む「完璧な人形」のお出ましよ。

デミが甘い声で言う。

「まあ……教会から帰ってきたところなんです。お姉様の罪深き魂が、少しでも救われますようにと、お祈りしてきましたの」

キャシアンの視線が私に向けられる。その目が語るメッセージは明白だった。

――彼女を見ろ。そして、自分を見ろ。

月とスッポン、とな。
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