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私の彼氏はちょっとだけ心配性。:009

Penulis: 美木 猫助
last update Tanggal publikasi: 2026-06-15 22:48:51

後ろ髪より少しだけ長い前髪が横頬を擦り、薄い唇がゆっくりと動く。その様子がスローモーションのように見えて、理解するのに時間がかかった。

「好きだ」

またもや言われ。

壱の顔は信じられない程に真剣で冗談を言っているようには見えない。

「そ、そんな……何度も言わなくても……」

「俺は下田葵依が好きだ」

熱い吐息と共にフルネームで名を呼ばれた葵依は口を噤んだ。

どうして壱に告白をされているのか理解が追い付かない。

「俺は何度でも言う。好きだ」

葵依は返事の代わりにギュッと目を閉じる。

どうして告白をされているのか暗闇の中考えようとして目を閉じたのだが……これでは『キス待ち』をしているように見えた。実際、壱は堪えるように眉間に皺を寄せていた。ゴクリと唾を飲み込む音が壱から漏れる。

ふー、と壱は長い息を吐くと、葵依の頬に触れた──全理性を総動員させて葵依の唇に触れるのを止めた。それを知らない葵依は自分の頬にひんやりとした何かの感触に瞼を痙攣させる。目元をなぞる何かの動きが目を開けるようにと催促しているように感じて、葵依はゆっくりと目を開いた。その正体は壱の
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     「──キスさせて」 そう言った壱の唇に彼女の言葉は吸い込まれてしまった。 薄い唇が重なり「んっ」と甘い声が鼻から漏れる。角度が変わる度にリップ音と一緒に漏れる自分の声を聞いて、キュンと腹の奥が疼く。 壱の柔らかい舌が気持ち良くて、ウットリして葵依は目を閉じた。 (壱さんは、キスが好きなのかな。うん。私よりも、壱さんの方が好きだと思う)  普通、どれだけキスをするものなのか葵依には分からない。ただ、唇が腫れるくらいキスをしてばかりいる気がする。それ以外もされたけど……。 壱から肩を押されて、葵依はまたもビーズクッションに沈んでいく。 髪に触れていた壱の手は耳の輪郭をなぞり、耳朶をフミフミと擽る。もう片方の手からは腰のラインを愛撫され、キス以外の感触にも葵依は吐息を漏らした。 夢中になってキスを受けていたら、腹の奥からまたもトロリと蜜が新しく湧き出てきて、新しい蜜が内腿を濡らす。その感触で葵依は自分が壱へ伝えたかった言葉がある事を思い出した。 大きな目を見開いて、壱と目が合って一瞬怯んでしまう。キスの最中、ずっとこうやって見られていたのかと思うと羞恥心が湧いてくる。思わず目を閉じようとするも、目的を思い出して葵依は壱の胸を弱い力で叩いた。「……どうした?」  唇に触れるか触れないかの距離で喋られて、葵依が息を漏らした。その息に、壱が悩まし気に眉を下げる。「私、妊娠しません」「──は?」 首を傾げた壱を見て、自分の声が聞こえなかったかな、と。「私、妊娠しません」 同じ事を声に出してみるも、壱はきょとんと首を傾げたまま葵依を見下ろしたまま動かない。「私! 妊娠しません!!」と叫んだら「ごめん、聞こえてる」と謝られた。「さっき、壱さんが妊娠とか言ってたから、訂正しなきゃと思って」「危険日とか安全日とかあれは当てにならないから……」「危険日? 安全日?」

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      チュッと額に唇を当てられて、葵依は目を細めた。 触れてすぐに葵依の投げ出された両脚を挟んで壱は畳に膝をついた。 全身の骨が抜けたようにふにゃふにゃで動けない葵依は、ぼんやりと天井を見つめた。 軟体動物にでもなった気分だ。このままビーズクッションと一体化してしまいそうだ。 溶けちゃってる気がする……。 不安になって、腹の上で手を組む。確かな手の感触があって葵依は胸を撫で下ろした。 開いた股の間から、濡れた感触が生々しくてこれ以上漏れちゃいけないと内腿同士を擦り合わせる。さっき触られたクリトリスがじんと疼いて、疼いた腹の奥を誤魔化すように組んだ手に力を入れた。 カチャカチャという金具の音が聞こえてきて、何の音だろうと不思議に思っていると、「あー」と頭を抱えるような悩ましい声が彼女の耳に届いた。 「あークソ……」 壱はチッと舌打ちをして、両手で激しく髪を掻き乱す。 「ど、うしたんですか……?」 葵依は背中を少しだけ上げて、身を起こした。 さっきまでは完全に挿れるモードだった男の表情は今では嘘のように落ち着き払っている。しかし、どこか残念がっているようにも見えた。 壱は目を覆い隠しながら天井を見上げて、 「ゴムがない」と嘆いた。「ごむ」 (──輪ゴム)「それなら、台所に……」「輪ゴムじゃない」 葵依を見た壱から違うと言われ葵依は押し黙った。「コンドームのこと」「あ、ぁ、あ~~」 葵依はリアクションに困ってしまい、視線を右往左往させながら取り敢えず納得したようにコクコクと何度も首を縦に振る。壱の手が伸びてきて、「頭を振り過ぎると、血が上るぞ」 髪を撫でられてからやっと葵依は頷くのを止めた。 クスっと笑う壱からは、先程まで感じていたいやらしい雰囲気が嘘のよう

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    「わっ、かんなぁっ……んあっ、あぅ、ひぁ」「ここ、性感帯になっていて、ここをこうすると気持ち良いんだ」「ひゃ、んぁっ、あ、あ」 優しく扱うような指の動きなのに、自分を襲っている快感が強くてずっと目の前がチカチカしている。その快感に堪えようと身を小さくしているのに腰は自分の意思に関係なく揺れてしまって……腰が揺れる度に、熱くて硬い何かが太腿に触れた。さっきよりも硬さを増したそれは、葵依の腰が揺れて擦ってしまう度に熱量も硬さも増していく。その正体が何なのか、今は気にしている余裕はなかった。「蜜が沢山溢れてきた……俺の右手がびしょ濡れだ」「ふっ……、んっ、あふっ」 ぐちょぐちょという音が聞こえてくるから、彼が言うようにびしょ濡れなんだろう──そんなに恥ずかしい事を声に出して教えてくれなくても良いのに……そう思って自分を愉悦を浮かべて見つめる男を憎らしく思った。「音、聞こえるだろ?」 ──言われなくたって、分かってる。「いやらしいな」 ──そんなことないもん……意地悪なこと言わないで。 文句を言いたい。 そう思っても葵依の口から洩れてくるのは言葉ではなく、甘い嬌声ばかりだった──塞いでいる意味ないかも……。 「はっ、ふうっ、ふっ、はっ」  ぎゅうっ。 頬が白く変色するほど口を塞ぐ指に力を込めた。喘ぎ声は漏れなくなったものの、そのせいで呼吸が上手に出来ず……。 (──苦しい) 力を緩めたら、息苦しさから解放されるのは分かっている。肌に食い込むほど力を入れたお陰で喘ぎ声が小さくて済んでいるのに、緩めてしまったらもっと変な声が出ちゃうに決まっている。「フーっ、はーっ、はっ、ふ」 息苦しさのせいで葵依の目に涙が浮かんだ頃──壱

  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:045

    「お、話……する」 葵依は小さく頷いた。「じゃあ、叔父さんと楓君のお話を……」 壱に万里と遥の話をしたから、従兄の話をしようとするも壱から不満げな声が上がった。「二人の話は嫌だ」「えぇっ……」 男女が身体を重ね合っている時に、好きな女の口から男の話を聞きたくない男心を葵依が知る由もなく。「じゃあ、学校のお話……」「それがいい」 葵依は唇に生温かい息が当たる。壱が笑ったようだ。雰囲気が和らいで、さっきのピリっていた空気が嘘のようだ。 膣内にある指を動かしながら壱は葵依の首筋を音をたてて吸った。葵依の腰が痺れ、話どころじゃないのに「話して」と壱から催促されて、葵依は息を整えるように小さい深呼吸を繰り返す。「体育の実技が、苦手……」「因みに、体育の教師は男?」「は、はい」「ふぅーん」「……?」「そうだ、俺の話をしようか」 そう言った壱は、少しだけ身を起こして葵依の顔を見下ろした。壱の肌の熱さが離れ、お互いの汗で湿った胸元にひんやりした風が二人の身体の隙間を通る。壱の体温が、ただ離れただけなのに恋しいと思ってしまった理由を掴めないでいた。「二年前──仕事でヘマをした。いつもならすぐに忘れて立ち直るのに、珍しく落ち込んだ」 ゆったりした口調に低い声は、葵依の耳にすんなりと入る。穏やかな表情だ。一瞬、自分の体内に壱から指を挿れられているという事は夢ではないかと思うも、膣内に感じる圧迫感は本物だ。 その圧迫感は指が一本増やされたからである。たじろいながらも、葵依は壱の話に耳を傾けた。 「同僚全員が俺を慰めようと気を使い……まぁ奴らは一番年下の俺をいつも気にかけてくれてるけど……この時だけは心が荒んでたから何を言わ

  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:044

     壱から心配されて、不快な気持ちにならなかったのは元から彼の性格が心配性だったからかも、と葵依は思った。 目を開けて、壱を見るも酷く落ち込んだ表情を浮かべていた。この答えは違うらしい。「葵依を愛しているから、という答えに結び付く」「あいし!?」 好きだ、という言葉の他に「愛している」という言葉を伝えられて葵依は瞠目した。自分の気持ちが追い付いていないのに、まさか「愛している」って告白されるなんて……。 「俺を受け入れて欲しい」 壱は葵依の手に唇を当てたまま、彼女の栗色の双眸を覗く。「愛してるんだ」 絹のようにサラサラな前髪から覗く黒い瞳は熱が篭っていて、その瞳を見ているだけ葵依の身体が熱を帯びていく。愛を告白されたから恥ずかしくて熱いのか、手の甲に壱の熱い吐息が当たっているからなのか──……。「葵依……」 壱の左手で薄い腹を五本の指でなぞられて、一気に心拍数が跳ね上がった。ゾゾっと粟立って、壱からされたいやらしい記憶が蘇る。 「な、め、られるのは、いや……」「今日はもう舐めない」「こっ、こわい──」 涙がまたせり上がりそうで、葵依は空いている左手を握り締めた。痛みで涙を流さないように、親指と中指で人差し指を抓る。(泣いちゃダメ) 泣きじゃくるなんて、人前であんな失態を晒す事は二度と出来ない……。「毎日、毎時間、毎分、毎秒、幸せにする」「そんなに、ずっと、くっついていられないのに……」 告白された後に言われた同じ言葉を囁かれて、葵依は不覚にも──ときめいてしまった。「離れていても、俺の事を考えるだけで幸せにさせるから」  再び上に圧し掛かられて、息苦しさを覚えるくらいに抱きすくめられてしまう。 体温を直に

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      涙でぐちゃぐちゃになった顔を、唇を噛み締めたまま壱は見下ろす。葵依の乱れた前髪を左手で整えて、眉の上に綺麗に揃えた。 親指の腹で彼女の目元を擦り、ポツリと「ごめんな」と呟いた。「わ、たしのこと、すき、なんてウソっ」「葵依」「す、きなら、あんなところなめたり、しないもん!」 そうだ、と葵依は心中で叫んだ。そして自分で言った言葉に酷く傷付いた。「葵依が好き」だと言った言葉が嘘だという事実がどうしてこんなに苦しいのか分からない。彼は世に言うレイプ犯だったんだ。そのレイプ犯が身を守る為の防犯講座を話してくれた理由は、私の気を緩める為だ。「好きだよ」 嘘に決まっている。 涙を口で吸われて、頬に口付られ「好きだ」と言われて、葵依はギュッとそっぽを向いた。「好きなら、胸を触らないし、あんなところ舐めたりしない」「セックスをするには、葵依の中を解さないとただ痛いだけなんだ。葵依は処女なんだから」  思わず壱を見たのだが、何も言い返せずに葵依は口を噤んだ。眉を八の字に下げた壱は、顔を歪め、思い詰めたような表情なのに、どんな顔でも憎らしい程の美青年で破壊力がある。 何か……文句を言うべきだ。罵るべきでもある。押し倒して身包み剥がされたんだから、一発殴っても文句は言われないはずだ──壱のその表情を見て、全て許してしまった。見惚れてしまった自分の変わり身の早さが信じられなくて、壱の顔を見ないで済むように瞼を閉じた。「胸と葵依の大事な場所を触ったのはセックスの行為の一つで」「せ、説明しなくていいです」「説明をしておかないと、俺が葵依を好きじゃないって勘違いをし続けるだろ?」「でも、嫌がらせとしか、思えないです。も、もらしたのを……それをその、な、めるとか、飲、むとか……あれが行為の一つなんですか? もしかして、壱さんは他の女性にもした事が……?」 壱が黙ったので、不思議に思って目を薄く開ける。「兎に角、突

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     葵依は小柄なうえ童顔で、小さな顔に仔猫のように大きい目を縁取る長い睫毛、毛先が外側にクルンとカールしたセミロングストレートの髪型……守ってあげたくなるような無垢な高校生。女子高校生というブランドと小柄で童顔というセットはある界隈の男達から絶大にモテた。仕事中何度も遊びに誘われたが、葵依は全て「勉強をしなきゃ」と言って断った。これは下手な断り文句ではなく本当の事である。葵依はバイトが休みの日は友達と寄り道せず、学校が終われば真っ直ぐ家へ帰り授業の予習をするのだ。  可愛いけど男への免疫がない葵依を騙すのは簡単だろう──胸が小さいのは残念だが、世間知らずな見た目だから簡単に堕ちるだろう……そ

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    葵依は小柄なうえ童顔で、小さな顔に仔猫のように大きい目を縁取る長い睫毛、毛先が外側にクルンとカールしたセミロングストレートの髪型……守ってあげたくなるような無垢な高校生。女子高校生というブランドと小柄で童顔というセットはある界隈の男達から絶大にモテた。仕事中何度も遊びに誘われたが、葵依は全て「勉強をしなきゃ」と言って断った。これは下手な断り文句ではなく本当の事である。葵依はバイトが休みの日は友達と寄り道せず、学校が終われば真っ直ぐ家へ帰り授業の予習をするのだ。  可愛いけど男への免疫がない葵依を騙すのは簡単だろう──胸が小さいのは残念だが、世間知らずな見た目だから簡単に堕ちるだろう……そう

  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:001

     高校一年生から二年間勤めたコンビニのバイトを下田葵依は、高校三年生の五月、ゴールデンウィーク最終日をもって円満退職を果たす。  二十二時。終業時間になりバックヤードへ行くと、店長の田中から「みんなからだよ」とプレゼントが入った袋をもらった。バイト仲間たち全員からの寄せ書きが入っていて『一緒に働けて楽しかった』『遊びにきてね』『寂しい』などと書いてある。ガラスドームに入ったプリザーブドフラワーと「受験勉強を頑張って」という気持ちが込められた本革製のペンケースも贈られた。うるっと涙が出てきて、葵依は慌てて手の甲で涙を拭った。 「葵依ちゃん」 『葵依ちゃん』と呼ぶ声

  • 私の彼氏はちょっとだけ愛がオモい。   私の彼氏はちょっとだけ心配性。:008

      「……照れ隠し?」  目をパチパチさせる葵依に113番は「あぁ」と短く答えた。 「下田さんのバイトは今日が最後だから声を掛けようと思ったんだ」 「あれ? 名前?」  どうして名前を知ってるんだろ? と首を傾げると 「バイト中、名札を見てたから」  と男は自分の右胸を指した。バイト中はその場所にネームプレートを差すのだ。 「そうなんですね」  納得して頷く。  名前を知られていたなんて、と思うとどうしてか嬉しい気持ちが沸いてきて口元が緩んでしまう。 「俺は壱だ」 「いちさん?」 「あぁ」と113番──金城 壱は頷いた。名前を呼ばれただけで

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