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第 13 話

Author: 藍葉
薬を盛られたのか?

くそっ。

低く舌打ちすると、彼は素早く自分のジャケットを脱ぎ、綾香の体をすっぽり包み込んだ。

そしてそのまま横抱きにして外へ飛び出す。

和也はすでに二人のボディーガードを連れて入口で待機していた。

健司の姿を見るなり、ルームキーをスラックスのポケットへ押し込む。「上に俺の専用スイートがある。とりあえずそこへ行け」

しばらくすると、美月が数人の友人を引き連れ、勝ち誇ったような顔でやって来て、休憩室のドアを勢いよく開けた。

本来は、浮気の現場を押さえるつもりだった。

だが、目の前に広がる光景を見た瞬間、彼女は血の気が引いた。

自分が金で雇った男が、服をすべて剥ぎ取られ、屈辱的な格好のままソファに縛りつけられていたのだ。

そのとき、背後から冷たい声が響いた。「美月さん、その手は間違った相手に使ったね」

和也はいつの間にか背後に立っていて、目には一片の温もりもなかった。「虎に爪を立てるのは危険だよ」

美月は顔面蒼白になり、慌ててすり寄る。いつもの手でごまかそうとした。「和也さん、私たち昔からの知り合いじゃない。今回だけは見なかったことにしてくれない?」

「悪いが」和也は冷たく彼女を見下ろした。「今回は俺にもどうにもできない。君はとんでもない相手を敵に回した」

そう言って軽く顎を動かす。「連れて行け」

黒服のボディーガードがすぐに前へ出ると、悲鳴を上げる美月をそのまま引きずっていった。

最上階のスイートルーム。

健司が綾香を柔らかなベッドへ寝かせた途端、彼女は蔦のように彼へ絡みついてきた。

落ち着きのない小さな手がネクタイを引っ張り、もう片方の手はシャツの中へ滑り込み、引き締まった腹筋をあちこち触り回る。

健司のこめかみが脈打ち、額には青筋が浮かんだ。

理性が崩れそうになる衝動を必死に抑えながら、彼はその手を掴んだ。

そして声を荒げる。「綾香、よく見ろ。俺が誰かわかるか!」

その声に、綾香の動きがぴたりと止まった。

ぼんやりと目を上げ、焦点を合わせると、愛と憎しみが入り混じる顔が目の前にあった。

瞳が大きく揺れる。

健司だ。

まさか、健司だったなんて!

だめだ。もう彼とは何の関わりも持ちたくない。

綾香は火傷でもしたかのように彼を突き飛ばし、洗面所へ駆け込むと、「バン!」と勢いよくドアを閉めた。

シャワーをひねると、冷たい水が頭上から降り注ぎ、少し意識が戻る。

彼女は膝を抱えて床にしゃがみ込み、冷水に打たれながら火照った体を冷やそうとする。

だが、体の奥で燃える熱はどうしても消えない。まるで無数の虫が体中を這い回り、噛みついているようだ。

苦しい。

あまりのつらさに体を丸め、ついに泣き崩れた。

どれくらい時間が経ったのか、外からチャイムの音が聞こえた。

しばらくして、洗面所のドアが開き、健司が入ってきた。

冷水の下で小さく縮こまり、震えながら声を上げて泣く綾香を見た瞬間、胸の奥が不意に痛んだ。

彼女が必死に耐えていることはわかっている。こんな形で自分を苦しめてでも、もう自分と関係を持ちたくないのだ。

健司はシャワーを止め、広めのバスタオルを手に取り、頭からつま先まで包み込むと、抱き上げて外のソファに置いた。

少し力を取り戻した綾香は、かすれた弱々しい声で言った。「この部屋から出て行って、今すぐ」

健司は上から彼女を見下ろし、口元に冷たい笑みを浮かべた。「綾香、まだ俺のベッドに上がる資格はない」

そう言いながら、ポケットから小さな薬瓶を取り出し、テーブルの上へ放る。「解毒薬だ」

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