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第90話

Auteur: 霜晨月
last update Date de publication: 2026-03-16 14:58:48

夕暮れどき、颯斗は車を走らせ、診療所へと帰る道をたどっていた。

先ほどから助手席に座る練は一言も発さず、バックミラー越しに後部座席の男をじっと見据えている。鎮静剤を打たれた青峰は、いまだ昏睡したまま、ぴくりとも動かない。

颯斗はちらりと練の横顔を盗み見て、唐突に口を開いた。

「……今日はどうしたんだ?」

「何がだ」

「さっきの皆川先生の家だよ。あんなふうに激昂するお前、初めて見た」

「そうか?」

練は淡々と言った。

「普通だと思うが」

「あんなに言葉を荒らげることなんて、今まで一度もなかったじゃないか。まして当事者の目の前で。……いつものお前らしくない」

練は無表情のまま顔を背けた。

「……随分と俺のことを知っているような口ぶりだな」

その言葉が放たれた瞬間、車内の空気は氷点下まで冷え込んだ。

バカでも分かるほど、颯斗は練の「地雷」を踏み抜いてしまったのだ。

「そうだね」

颯斗は二秒ほど沈黙したあと、自嘲気味に笑みを浮かべた。

「俺はただの、何も分かっていない助手だから」

表向きは、練が上司で颯斗が部下。

そして心界においては、互いに信頼し支え合うパートナーであるだけでなく、常軌を逸
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