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第14話(31)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2026-01-28 17:00:37

「自分の兄貴に会って不安になっているお前が、実家の件で俺に頼みごとをすることも、予想しているだろ。――お前は、自分が蛇みたいな男のオンナだってことをよく自覚するべきだな。蛇の執念深さは、凄まじいぞ」

 このとき和彦の脳裏を過ったのは、賢吾の代理で結婚披露宴に出席したとき、父親の同僚と出会ったのは、本当に偶然だったのだろうかということだった。

 佐伯家が和彦になんの関心を持っていないのであれば、父親の同僚とは、あの場で他愛なく挨拶を交わして、穏便に別れられたはずだ。しかし現実は、そうならなかった。

 佐伯家は、和彦を捜している。しかも、父親に近しい存在とはいえ、他人までもがそのことを把握しているのだ。父親が話したにしても、外聞にこだわる人間がそこまでする理由が気にかかる。

 そしてもう一つ気にかかるのは、賢吾の思惑だ。どうしてもこう考えてしまう。

 賢吾は、佐伯家の反応を知るために、和彦そのものを餌に使ったのではないか、と。

 緩やかに動いていた思考が、ここで一気に苛烈さを増し、頭の芯が不快に疼く。

「大丈夫か」
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