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第21話(22)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-03-24 08:00:28

「ぼくはこれでも、モラリストのつもりなんだ。妖しい空気の中、平然となんてしてられない」

「……冗談ですか?」

「本気で言ってるんだっ。君らはぼくを、なんだと思ってるんだ」

 和彦がムキになって抗議すると、秦と中嶋は顔を見合わせたあと、大仰に神妙な顔つきとなる。これならまだ、笑ってもらったほうがよかったと、和彦は顔を背けてワインを飲む。

 からかわれた仕返しというわけではないが、ここを訪れる前に賢吾と電話で交わしたことについて、中嶋に質してみた。

「――組長に、しっかり報告してくれたそうだな」

「先生と、鷹津という刑事との夜景デートの件ですね」

 顔を背けたばかりの和彦だが、たまらずじろりと中嶋を見る。

「本当に、そういう表現をしたのか……?」

「見たままを正直に。長嶺組長からは、そう言いつかっていますから」

「ぼくの側にいて見聞きしたことは、なんでも、か」

「なんでも、ですよ」

 和彦と中嶋のやり取りを聞き
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     守光は、浴衣に着替えてはいるものの、相変わらずの端然とした佇まいで待っていた。部屋に入った和彦を見るなり、頬を緩める。「髪がまだ濡れているな。慌てなくてもかまわないから、脱衣所で乾かしてくればいい」「……いえ」 入浴後すぐに部屋に来いと言われたわけではないのだが、ゆっくりと髪を乾かそうなどと思いつきもしなかった。 ふいに沈黙が訪れ、立ったままの和彦と、コタツに入ったままの守光との視線が交わる。柔らかな微笑を浮かべていた守光の表情が瞬きする間に変化した。 静かにコタツから出た守光が襖を開ける。奥は思ったとおり寝室となっており、すでに床が延べられていた。 振り返った守光に軽く手招きをされ、反射的に半歩だけ後退った和彦だが、自分がこの部屋に来た覚悟を思い出し、すぐに従う。 枕元には、見覚えのある文箱と折り畳まれたスカーフがあった。体を強張らせた和彦の背後で襖が閉まり、手を取られて布団の傍らに立つ。穏やかな声音で守光に言われた。「服を脱いで見せてくれないか。先生」 いまさら裸を見られたところで、という気持ちはある。しかし、脱がされるのと、自ら脱ぐのとでは心構えはまったく違う。和彦はすがるように守光を見たが、意に介した様子もなく守光は畳に正座する。 さあ、とでも言うように見上げられ、ぐっと喉が詰まる。できませんとは、口が裂けても言えなかった。 和彦は機械的にトレーナーを脱ぎ捨ててから、数秒のためらいのあと、パンツと下着を一気に下ろす。このときすでに、それでなくても熱くなっていた全身は、うっすらと汗ばんでいた。 脱いだものを畳もうとして、手首を掴まれる。引っ張られるまま膝をつくと、守光に顔を覗き込まれた。「そのままで」 そう言って守光がスカーフを取り上げる。薄い布をどう使うか、もちろん和彦は知っている。今の守光との関係では、もう必要としていない小道具であることも。 今晩は、いつもと何かが違う――。 本能的な怯えから、ざわりと肌が粟立った。頬にスカーフの滑らかな感触が触れ、和彦は顔を背けようとしたが、かまわず両目を覆われ、きつく後頭部で結ばれた。

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  • 血と束縛と   第4話(27)

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    last updateLast Updated : 2026-03-19
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