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第26話(15)

Author: 北川とも
last update publish date: 2026-04-21 11:00:27

 連休初日から慌ただしいと、後部座席のシートに体を預けた和彦は、ほっと息を吐き出す。

 賢吾に言われるまま、数日分の着替えなどを急いでバッグに詰め込み、急き立てられるように車に押し込まれたのだ。

 じっくりと服を選ぶ余裕もなく、和彦の今の格好は、ジーンズとTシャツ、かろうじて掴んできたジャケットという軽装だった。車で移動するだけなので、ある意味、正しい選択だったかもしれない。

 業者の到着を部屋で待つという賢吾とは、玄関前で別れた。長嶺組組長という多忙な身でありながら、〈オンナ〉の部屋にまで気を配らないといけない立場というのは、少しは同情してもいいのかもしれないが、和彦の連休の予定をすべて無視してくれたことで、差し引きゼロといったところだ。

 もっとも、台無しにされたといって怒るほど、立派な計画を立てていたわけではないのだが――。

 和彦はわずかにウィンドーを下ろす。外は雲一つない晴天で、初夏らしく気温は高いが、車内に吹き込んでくる風は爽やかだ。ドライブ日和ともいえ、こういう日に自分で運転をして
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     さらに和彦の興奮を煽るように、三田村の指が内奥の入り口を軽く擦り始める。刺激に弱いその部分はすぐに物欲しげにひくつき、押し込まれる指を少しずつ呑み込み始める。和彦自身の汗と、三田村の唾液が垂れて湿っているせいもあり、引き裂かれるような痛みはなかった。何より、三田村が慎重だということもある。 挿入された指が円を描くように内奥で蠢き、自分でもどうしようもない反応として和彦は、引き絞るように内奥を収縮させた。その感触を楽しむように指を出し入れされ、そうしているうちに、三田村を受け入れる態勢ができてくる。 指の数を増やされて、内奥の浅い部分をある意図を持って押さえられる。三田村の口腔で和彦のものが完全に熟し、あとは破裂する瞬間を待つだけとなる。すると三田村が口腔での愛撫をやめて顔を上げ、内奥からは指を引き抜いた。「三田村……?」 声を発した瞬間、和彦は羞恥で燃え上がりそうになる。甘ったるくてすがりつくような自分の声が信じられなかったのだ。三田村も気づいたはずだが、何も言わず、口元に微かに笑みめいたものを浮かべてすぐに、表情を引き締めた。 片足をしっかりと抱え上げられて、綻んだ内奥の入り口に猛った欲望が押し当てられる。指とは比較にならない大きさと熱を持ったものが、内奥を押し広げていく。 息苦しくなるような異物感に、眩暈がするほどの高揚感を覚え、たまらず和彦はきつく目を閉じる。瞼の裏では鮮やかな色彩が点滅し、飛び交っていたが、それもわずかな間だ。一気に真っ赤に染まった。 混乱するほど強烈な感覚――快感が和彦に襲いかかっていた。「んあっ……」 ビクビクと体中を震わせながら目を開けると、三田村は食い入るように和彦の下肢を見つめていた。三田村の欲望を内奥に受け入れながら、和彦は絶頂に達していたのだ。迸らせた精で、下腹部が濡れている。「――〈これ〉を、見たかったのか?」 和彦が抑えた声で問いかけると、ふっと眼差しを和らげて三田村が頷く。「ああ」 三田村が腰を進め、内奥深くまで逞しい欲望を埋め込まれる。息を詰めて重々しい衝撃に耐えていると、三田村が覆い被さってきた。和彦は

  • 血と束縛と   第26話(21)

    「そんなこと言って、どうなっても知らないからな」 三田村の胸元に顔を伏せ、舌先で肌を舐め上げる。すると三田村が大きく息を吸い込んだ。「先生――……」 わずかに動揺を滲ませた声を発した三田村だが、あえて無視した和彦は、微かに濡れた音を立てながら肌を吸い上げ、舌を這わせる。 三田村が深くゆっくりとした呼吸を繰り返すたびに、胸が大きく上下する。落ち着いているようだが、触れている三田村の肌が熱を帯びていくのを、和彦は感じていた。それだけではなく――。 腹筋のラインを舌先でくすぐりながら、スウェットパンツの上から三田村の両足の間に触れる。何よりも明らかな反応がそこにはあった。上目遣いで三田村の表情をうかがう。優しいだけではない、狂おしい欲情を湛えた眼差しが、じっと和彦を見つめていた。 次の瞬間、三田村に腕を掴まれて引っ張られる。体を引き上げられてベッドに押さえつけられ、間近で三田村と目が合ったかと思うと、強引に唇を塞がれた。 これが今日、三田村と初めて交わす口づけだった。一瞬にして和彦の全身が、燃え上がりそうに熱くなり、身悶えしたくなるような強い欲情が胸の奥で生まれる。 唇と舌を貪り合いながら、三田村の指がパジャマの上着のボタンにかかる。ボタンを一つ外されるごとに期待が高まり、和彦は小さく声を洩らす。そんな和彦を宥めたいのか、煽りたいのか、三田村の舌が口腔に入り込み、感じやすい粘膜をじっくりと舐め回される。 ようやくパジャマの上着を脱がされると、和彦は両腕を三田村の背に回し、虎の刺青を夢中でてのひらで撫でる。三田村の筋肉がぐっと引き締まり、一際体が熱くなった。普段は誠実で優しい男だが、背の虎に触れると簡単に猛々しい獣に変わり、その変わり様に、和彦は惚れ惚れとしてしまう。 自分が、この男を変えられる特別な存在なのだと、強く認識できるからだ。 背の虎に夢中になっている間に、三田村に下肢を剥かれる。さらに、すでに高ぶっている三田村の欲望を両足の間に擦りつけられ、互いのものがもどかしく擦れ合い、焦れるような感覚を生み出す。「――先生、俺に舐めさせてくれ」 三田村が耳元で、掠れた声で囁く。耳朶に触れ

  • 血と束縛と   第26話(20)

     不器用で優しい男を、そんな気持ちで苦しめていいのか――。 ふっと魔が差したように、そんなことが頭を過る。すると、中嶋に言われた。「先生がそんなことを考えていると知ったら、多分三田村さんは、喜ぶと思いますよ。もっとも、あの無表情は変えないと思いますけど」「……根拠は?」「元ホストの勘」 真剣に聞くのではなかったと、和彦は背もたれにぐったりと体を体を預ける。「元ホストの勘で、もう一つ言いたいことがあるんですが」「この際だ。なんでも言ってくれ」「――三田村さんは、手に入れるためじゃなく、失わないために鬼になるタイプですよ。命がけで先生に手を出したんなら、死んでも先生から離れないでしょう。そんな人が、先生に振り回されたぐらいで参るとは、到底思えません」 のろのろと姿勢を戻した和彦は、どういう表情を浮かべればいいかわからず、結局、聞こえなかったふりをしてコーヒーを啜る。 空気の読める中嶋はそれ以上は何も言わず、澄ました顔でチョコレートを摘まみ上げた。** さすがに夜は少し冷えると、開けた窓から外を眺めていた和彦は軽く身震いする。パジャマ姿で夜風に当たるのは、少々無謀だったようだ。 ただ、窓を閉めていては感じない夜風の冷たさや、街中とは明らかに違う空気の匂いは、堪能する価値がある。何より、静かだ。風が木々を揺らす音がせいぜいで、車のエンジン音すら響くことはない。本当に、周辺に人気がないのだ。 こんな環境に身を置くと、ふらりと夜の散歩に出かけたくなる和彦だが、それは明日の楽しみにしておこうと、静かに窓を閉めた。 ベッドの傍らを通り過ぎ、部屋を出る。廊下はぼんやりとした明かりで照らされているが、人影はない。立派すぎる別荘も、宿泊者が少ないときはただ寂しいだけだなと思いながら、和彦は隣の部屋の前へと行く。 露骨な気遣いを示した中嶋は一階の部屋を利用しているため、二階で休んでいるのは、和彦ともう一人しかいない。 ノックもせずに静かにドアを開けると、室内の様子がわかる程度には明るかった。光源は、音量を抑えたテレビだ。和彦は足音を

  • 血と束縛と   第26話(19)

     かつてペンションだったという建物は、そこかしこにその名残りがある。食器の数だけではなく、そもそも部屋数が多いし、風呂も大きい。立地的には、ほどよく隠れ家と呼べる場所にあり、総和会が人を集めるのに利用しているのも、こういったところが使い勝手がいいためだろう。「……悪党の巣窟、か……」 さきほど三田村から聞いた言葉を、無意識に和彦も呟く。賢吾のことなので、三田村に話しながら、自虐とも皮肉ともとれる表情を浮かべていたかもしれない。 和彦に気づいた中嶋が、皿をテーブルに置いて声をかけてきた。「先生、コーヒーを飲みませんか? コーヒー豆を買ってきたんですよ」「だったら、ぼくが淹れる。君はその間に、自分の仕事をしてくれ」 脱いだジャケットをイスにかけると、さっそく和彦はキッチンに入り、コーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れる。 三田村の分はサーバーに残し、コーヒーを注いだ二つのカップを持ってダイニングに戻ると、中嶋は皿にお菓子を出しているところだった。「準備がいいな」「先生のお世話係ですからね、俺は。なんでも言ってください」 和彦は苦笑を洩らしてテーブルにつく。「適当でいいよ。手を抜かれたなんて、誰かに告げ口するつもりはないから」「さらりと怖いこと言わないでくださいよ、先生」 中嶋が隣に座り、同じタイミングでコーヒーを啜る。ほっと吐息を洩らした和彦は、高い天井を見上げた。「なんだか、寂しいな。こんなに広い別荘を、三人で使うなんて」「だからといって、総和会と長嶺組からぞろぞろと護衛を引き連れて、泊まる気にもなれないでしょう?」「まあ……。贅沢を言ってるな。みんな気をつかってくれたことなのに」「同じぐらい、思惑はあると思いますよ」 中嶋から意味ありげな流し目を寄越され、和彦は顔をしかめる。「……何か、聞いているのか?」「長嶺組長からは何も。さっき言ったとおり、別荘に滞在する間のお世話係を頼まれただけです。それと南郷さんからは、先

  • 血と束縛と   第26話(18)

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     和彦は少し考えてから、再び窓の外に視線を向ける。建物の中でじっとしているのがもったいなくなるような天気のよさと、風景の美しさだ。何より風が心地いい。「外の空気を吸いたい。つき合ってくれないか?」「……ああ」 今日の三田村はやはりどこかおかしい。和彦は、三田村と一緒に一階に下りながら、さきほどから感じていた違和感が、自分の気のせいではないと確信していた。 いつもの三田村であれば、和彦の望みに応じるとき、こう答えてくれるはずなのだ。『先生の望み通りに』と。 だが、今は――。 一階に降りると、まずキッチンを覗く。買ってきたものを冷蔵庫に入れている中嶋に、遠慮しつつ声をかけた。「庭にいるから、何かあったら呼んでくれ」 ごゆっくり、という言葉に送られて外に出ると、まず和彦は思い切り背伸びをする。あまりに勢いをつけすぎたせいで足元がふらついたが、背後に立っていた三田村にすかさず支えられた。振り返った和彦が礼を言うと、何事もなかったように三田村が離れた。 一体どうしたのかと問いかけようとした和彦だが、さすがに建物の前で話すことではないと思い、庭へと移動する。 庭には、和彦の名の知らない花たちが植えられており、穏やかな風に揺れている。まさか、こんなにきれいな――少女趣味すら感じる手入れされた庭を、巨大な暴力団組織が管理しているとは、誰も考えもしないだろう。ある意味、カムフラージュとしては完璧すぎる働きをしているともいえる。「――三田村、ここに咲いている花の種類、わかるか?」 腰を屈めて花を覗き込んでいた和彦は、傍らに立つ三田村を見上げて問いかける。三田村は、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような無表情だった。初夏の陽射しが降り注いでいるというのに、三田村が立っている場所だけ、温度が違っているようだ。もちろん、低いほうに。「先生がわからないのに、俺みたいな奴にわかるはずがない」 ここで会話が途切れ、二人の間に沈黙が流れる。姿勢を戻した和彦は、花ではなく、三田村の顔を覗き込んだ。「なんだか、あんたらしくない話し方だ。……何か、あった

  • 血と束縛と   第6話(12)

    「気にしなくてよかったのに……。中嶋くんには、忙しいなら無理しなくていいと言っておいたんです。ぼくと違って、彼は仕事の拘束時間が長いですから」「まあ、今日の用件は、正直奴がいなくても問題なしでしょう。わたしがしっかり務めを果たしますから」 そう言って秦が艶やかな笑みを向けてくる。中嶋には悪いが、確かにその通りだ。 今日、こうして秦に来てもらったのは、クリニックのインテリアについてアドバイスをもらうためだった。スポーツジムでいつものように中嶋と世間話をしていて、クリニックのインテリアで悩んでいることをポロリと洩らすと、秦に相談

    last updateLast Updated : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第6話(18)

    「この間買ったコロンをつけてみたんだ」「ふうん。……でも先生には、もう少し甘い香りをつけてほしいな」 強い光を放つ目が、じっと和彦を見据えてくる。その目の中に激情ともいえるものが渦巻いているのを感じ取り、とにかくこの場を離れるのが先だと思った。 こんな目をしている千尋には、自制というものが働かないということを、一度千尋に軟禁されたことがある和彦は身をもって知っているのだ。「千尋、ここは暑いから、場所を変えよう」「でも先生、用があるからここに来たんだよね? 一人で何してたの?」 そう問いかけ

    last updateLast Updated : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第5話(40)

    **** さまざまな機材などが運び込まれた部屋を見回してから、和彦は手で顔を扇ぐ。締め切っているため、室内の空気はひどく蒸れて暑かった。だからといって窓を開けて回るほど、今日はここに留まる気はない。  いよいよ明日からクリニックの改装工事が始まるため、若い組員一人を運転手として伴い、立ち寄ったのだ。今日は業者は昼前に引き上げたので、和彦も室内の様子だけ見て引き上げるつもりだ。  もう何度もここに足を運んでいるが、いよいよ改装工事が始まるとなると、もうすぐ自分の城ができるのだという実感が湧いてくる。自分

    last updateLast Updated : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第6話(9)

     そんな思いもあり、トラブルについて深く尋ねようとしない和彦の態度に、賢吾は満足したようだった。 自分の知らないところで、今こうしていても、長嶺組内部ではさまざまな事情が蠢き、大事なことが決まっているのだろうなと、ぼんやりと和彦は考える。 このとき絶妙のタイミングで賢吾に言われた。「――なんでも俺が決めてやる、というわけにはいかないからな」 ハッとして隣を見ると、賢吾はニヤニヤと笑っていた。「えっ……?」「クリニックのスタッフのことだ。昼間働くスタッフについては、お前がいいと思う人間を雇え

    last updateLast Updated : 2026-03-21
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