Masuk*
*
*
*
土曜日の午前中、自宅マンションで一人過ごしていた和彦は、突然の連絡を受け、急遽出かけることになった。こちらの予定も聞かず、自分につき合えと言うのは、口調の違いはあれど、長嶺の男に共通する特徴だ。
後部座席のシートに身を預けた和彦は、ウィンドーの外を流れる景色を眺めつつ、守光からかかってきた電話でのやり取りを思い返す。 美味い山魚を食べさせる店があるので、これから出てきなさいと、まず言われたのだ。面食らう和彦に、さらに守光は言葉を続けた。 一昨日の南郷の無礼について、詫びがしたい、と。 こう言われては、和彦には断る術はない。もとより、守光からの誘いを断られるはずもない。 マンション前に停まっていた車に乗り込んだのだが、肝心の守光の姿はなかった。運転手を務めている男によると、守光は昨日からある旅館に宿泊しており、そこに和彦はこれから向かうのだ。 一体何を言われるのだろうかと考えて、心がざわつく。 和彦を騙して呼び出した南郷の行為末恐ろしい高校生だなと思いながら、ちらりと笑った和彦は玲の胸元に唇を押し当てる。舌先でくすぐり、柔らかく肌を吸い上げ、確認しながら小さな鬱血を残していく。 引き締まった腹部から胸元に舌を這わせてから、自分がされたように腕の内側に吸い付く。軽く歯を立てると、玲がビクリと身を震わせた。 切ない声で呼ばれ、口づけを交わす。腰を抱き寄せられ、擦りつけられたので、男を甘やかしたいという和彦の本能が疼く。舌を絡ませながら、手探りで玲の欲望を掴むと、精を溢れさせる内奥に呑み込んでいく。玲の息遣いが弾み、同時に、内奥深くまで受け入れた欲望が震えた。 体を繋げる快感を知ったばかりの玲を驚かせないよう、ゆっくりと腰を動かす。心地よさそうに玲が目を細め、掠れた声を上げた。 欲望を柔らかく締め付けながら和彦は、全身を使って玲を甘やかし、愛していく。玲は驚くほど柔軟に、貪欲に、快楽に馴染んでいく。もっと、もっとと欲していく。和彦の腰に両手をかけ、自らぎこちなく突き上げるようにして、律動を刻み始めていた。「あっ、あっ、い、ぃ……」 玲の眼差しが、律動に合わせて揺れる和彦の欲望へと向けられていた。反り返ったものは、先端から止めどなく透明なしずくを垂らしている。「佐伯さんがイクところ、見たいです。まだ一度も、イッてないですよね。俺ばかり気持ちよくなって、申し訳ないです」 玲の手が欲望にかかりそうになったが、和彦は柔らかく拒む。その代わり、自身のてのひらで包み込んだ。「んっ……」 欲望を扱き始めると、意識しないまま内奥を収縮させる。玲の欲望がゆっくりと膨らんでいくのを感じながら、そっと腰を上げ、すぐにまた下ろす。玲は、自分が何をやるべきか思い出したらしく、再び和彦の腰を掴んで、自ら動き始めた。 間欠的に喘ぎ声をこぼしていた和彦だが、激しさを増す玲の動きにバランスを保てなくなり、たまらず片手を布団に突く。「あうっ」 一際大きく下から突き上げられた拍子に、初めて絶頂を迎える。迸り出た精が、玲の腹部から胸元にかけて飛び散り、きれいな体を汚してしまったと思った途端、和彦は身を貫くような快美さ
背に玲が覆い被さってきて、ちろりと肌を舐められる。背後からきつく抱き締められながら、次にうなじに唇が押し当てられた。荒い息遣いが耳朶に触れ、和彦は甲高い声を上げる。 玲が夢中で腰を動かしているとわかる。内奥から欲望を出し入れされ、ぐちゅっ、ぐちゅっと淫靡な音を立てて濡れた粘膜が擦れ合い、その音が、一層欲情を煽り立てる。「んっ、んんっ、あっ、あっ、玲、く……」「その声も、いい――。んっ、また、出していいですか……? 出したい」 中に、と掠れた声で囁かれ、鳥肌が立った。 誘い込むように玲の欲望を締め付ける。内奥深くに、二度目の精を受け止めていた。 玲の額が背にぐりぐりと押し当てられ、和彦は息を喘がせながらも笑ってしまう。 玲は今度は、和彦の背に愛撫の痕跡を残し始める。肌にときおりチクリと走る小さな刺激だけではなく、微かに聞こえる濡れた音に鼓膜を刺激され、和彦は自分の両足の間にそっと片手を這わせる。まだ一度も絶頂を迎えてはいないが、中からの刺激に反応していないわけではなく、十分に熱くなり、反り返っていた。「はっ……ん、ふっ、は、あぁ――……」 玲の愛撫を受けながら、自らを慰めようとしたが、ふいに内奥から欲望が引き抜かれ、背から玲が退く。肩を掴まれて、なんとなく意図を察した和彦が仰向けとなると、勢いよくしがみつかれた。 汗で濡れた体をぴったりと重ね、擦りつけ合う。和彦は、いまだに力強さを漲らせている体をてのひらで愛撫する。しなかやな筋肉を覆う肌の感触も心地よかった。「こうしていると、よくわかる。本当に、きれいな体だ。……たまに考えるんだ。君たちぐらいのとき、ぼくはこんなふうに、圧倒されるぐらい眩しい存在だったんだろうか、って」「君たち?」 和彦は自分の失言に気づいたが、うろたえたりはしなかった。玲が知ろうと思えば、明日にでも耳に入ることだ。「ぼくをオンナにしている一人が、君とそう歳が違わない」「――……犬っころみたいな奴。昨
和彦の内奥は、侵入者を見境なく締め付ける。玲はまだ快感を味わえてはいないだろう。 玲が緩く腰を突き上げながら、少しずつ侵入を深くしていく。和彦は浅い呼吸を繰り返し、なるべく下腹部に力を入れないよう努める。内奥の圧迫感と異物感が増していき、馴染みのある感覚に安堵する。 何度か出し入れを繰り返し、内奥の肉を押し広げていく。玲なりに、和彦に苦痛を与えまいと努力しているのが伝わってきて、じわりと胸の奥が温かくなる。「んうっ」 切羽詰った声を上げたのは玲だった。内奥に欲望を根元まで埋め込むと、和彦の胸元に倒れ込んでくる。熱くなった体からはすでに汗が噴き出し、濡れている。 繋がっているせいもあり、玲の力強い鼓動がこちらにまで伝わってくるようだった。一回り以上も年下の青年の生命力をこんな形で感じて、繋がった部分が疼く。 しがみついてくる玲の背を何度も撫でながら、和彦は低く囁く。「もう少し待ってくれ。中が柔らかくなって、具合がよくなる」 顔を覗き込んできた玲が笑った。「――エロいな、あなた。すごく」 ここで唇を重ね、貪るように唇と舌を吸い合う。短い間に、玲の口づけはどんどん和彦好みのものへと変化していた。 差し出した舌先を擦りつけ合い、唾液を交わす。それから舌を絡め合いながら、和彦は腰を揺らす。内奥で息づく熱い欲望の存在を強く意識して、吐息を洩らしていた。玲がぎこちなく欲望を動かし、やはり吐息を洩らす。「本当だ。中、柔らかくなってきました。でも、締まってます」「痛くない?」 和彦は息を詰め、内奥を収縮させる。玲が呻き声を洩らし、欲望が小刻みに震えた。「気持ちいい……。すげー、いい。腰が溶けそうです」 玲が腰を揺すり、和彦は小さく喘ぐ。意外にがっしりしている腰に両腕を回して抱き寄せると、玲は呻き声を洩らす。 あっ、と和彦が声を洩らしたときには、玲は内奥で達していた。 ビクビクと震える欲望の蠢きに、和彦は快感にも似た愛しさを感じる。相手が誰であろうが、自分が快感を与えられたと強く実感できるこの瞬間は、好きだった。 ポタポタと汗
まったく経験したことのない触れられ方に、心臓の鼓動が速くなっていく。愛撫とはまったく違うからこそ、玲の手の動きを意識してしまう。 飽きることなく和彦の体をてのひらで撫で続けていた玲が、ふと思い出したように顔を寄せてくる。何を求めているのか即座に察した和彦は、玲の首の後ろに手をかけ、口づけを受け入れた。 唇を吸い合い、舌先を擦りつけ合ってから、互いの口腔をまさぐる。露骨に濡れた音を立てながら舌を絡め合うようになった頃、和彦は片手を玲の腰の辺りに這わせ、指先で探り当てた帯を解いた。玲が帯を抜き取り、浴衣を脱ぎ落とす。 すがりつくように玲が抱きついてきたので、和彦は両腕で受け止めながら、厳かな気持ちで熱く滑らかな肌にてのひらを這わせた。すると玲がまるで何かに急き立てられるように、もどかしげに下着を引き下ろしながら、腰を密着させてきた。「――……君、やっぱりおかしい」 今にも破裂しそうなほど高ぶった欲望を擦りつけられ、和彦は小声で洩らす。玲が笑ったような気配がしたが、表情を確かめることはできなかった。和彦の体を撫で回したあとで、新たな興味に移ったらしく、さっそく実行に移したのだ。 肩に強く吸い付いた玲が顔を上げる。どうやら、肌に跡が残るか確かめたらしい。 微かに濡れた音をさせながら、強弱をつけ、ときにはそっと歯を立てられて、肩だけではなく、腕の内側や胸元、脇腹へと吸い付かれる。最初はくすぐったさに声を堪えていた和彦だが、いつの間にか息が弾み、肌に触れる硬い歯の感触にゾクリとするような疼きを感じるようになっていた。 玲が、肌に残った鬱血の跡を満足げに眺める。「これ、キスマーク……、初めてつけました」「嬉しそうだな」 和彦は、玲の髪に手荒く指を差し込む。何かの儀式のようにまた口づけを求めてきたので、今度は玲の好きなようにさせる。口腔に入り込んできた舌に隈なく舐め回され、流し込まれる唾液を喉を鳴らして飲んでやると、興奮したように強く腰をすり寄せてきた。「……入れたい、です」 口づけの合間に、苦しげな声で玲が言う。一瞬、このまま続けていい
「……ぼくをオンナにしている人に、初めて抱かれたとき、部屋に、若武者の掛け軸がかかっていた。ぼくに似ていると言われたけど、自分ではまったくそんなふうに思えなかったんだ。ぼくとはあまりに違う。若く、凛々しいきれいな顔立ちをして。本当に君によく似ている。一目見て、惹かれた」「掛け軸の若武者に? それとも――」 ハッと我に返った和彦は、ここでやっと肝心なことを玲に尋ねる。「君はどうして、この部屋に……?」 それに、今の自分の格好だ。和彦は慌てて体を起こそうとしたが、玲の肩が手にかかり、動けない。玲は体重をかけないよう気遣いながらも、和彦の体の上にしっかりと馬乗りになっていた。「欲が出ました。父さんがしていたように、俺も――、オンナを抱きたいです」 大胆な告白に、今の状況も重なって、怒りを感じるべきなのかもしれないが、まず和彦は戸惑う。夕方交わした口づけで、自分が玲を煽ってしまったという自覚もあった。その自覚は、罪悪感とも呼べる。 これは、やはり年下である千尋と初めて口づけを交わし、体の関係を持ったときですら、抱かなかった感情だ。そもそも千尋との出会いは、あくまで後腐れのない享楽的なものから始まり、複雑な事情も、厄介な男たちの存在も、当時の和彦は一切関知していなかった。 今、体の上にいる青年は、個人としては普通の高校生かもしれないが、少なくともオンナの存在を把握している。それどころか、毒され、魅了されていると言ってもいい。 玲の父親である龍造は、どれほど〈オンナ〉を魅力的に語っていたのかと、内心で詰っていた。刺激が強すぎて、未成年に語っていい存在ではないはずなのだ。「……ダメ、だ……。それは、ダメだ。君は、これ以上ぼくに関わるべきじゃない。ぼくをオンナにしているのは、怖い男たちだ。君の父親の立場も考えたら、ぼくと君の手に負えない事態になる」「関係ないです。俺には、父さんの立場なんて。今、俺の目の前には、あなたしかいない」「子供のような屁理屈を言うなっ」 声を荒らげたところで、玲がその子供であることを思い出
微かに濡れた音を立てながら、玲の舌を優しく吸い、自分の口腔に誘い込む。和彦のマネをするように玲の舌が蠢き始めた。されるに任せながら、初めて見たときから惹かれていた玲の背にてのひらを這わせる。 まっすぐ伸びたきれいな背筋を何度も撫で、清廉さがそのまま現れているようなうなじを指先でくすぐる。同時に、玲の舌を甘噛みする。玲の反応は素直で、再び体を震わせた。 際限なく口づけを続けてしまいそうで、和彦はなんとか頭を引く。追いすがってきた玲の口元をてのひらで覆った。「ここまでだ」「……嫌です。まだ、続けたいです」「思い出にはなっただろ。ほら、清道会の人が来るから、君は部屋に入っていろ。その顔じゃ――」 二人揃って唇を赤く腫らして、人前に出るわけにはいかない。和彦が言おうとしていることを理解したらしく、玲はあからさまに残念そうな顔で一旦体を離したが、次の瞬間、思い直したようにまた和彦を抱き締めてくる。 体を締め付ける腕の感触に、心臓の鼓動が大きく跳ねる。ズルリと音を立てて、自分の中にある感情の塊が玲に引き寄せられたのを、このとき確かに和彦は感じていた。** 枕元のライトの明かりが、ぼんやりと天井を照らす。布団に横たわった和彦は、きれいな木目をじっと見上げていたが、両足の熱が気になって、結局起き上がる。 今日は歩き過ぎたせいで、足の裏が熱をもっている。ふくらはぎは少し痛かった。和彦はパジャマのパンツの上から足を丁寧に揉みながら、鷹津と街をさまよった日のことを思い出す。ずいぶん遠い日の出来事のように思えるが、まだ一か月も経っていないのだ。 その間、自分は――。 夕方、玲と交わした口づけが蘇り、布団に突っ伏したくなる。羞恥からではなく、どうしようもない罪悪感からだ。 夕食は、和彦たち三人以外に、準備を手伝ってくれた清道会の組員たちも加わって、ずいぶんにぎやかなものとなったのだが、和彦は、なんでも見通してしまいそうな御堂の色素の薄い瞳が、非難の色を浮かべるのではないかと気が気でなかった。その点玲は、何事もなかったように堂々としていた。 あの一度の口づけで気が済んだ
和彦はゆっくりとまばたきを繰り返し、なんとか賢吾の話を頭に留めようとする。いろいろと考えようとするのだが、思考はどこまでも散漫だ。「……蛇蝎の、サソリ……」「ああ、そうだ。あれは、悪党ってやつだ。暴力団担当の刑事だったくせに、その立場を利用して悪辣なことをヤクザ相手にやらかして、それこそ蛇蝎みたいに嫌われていた。そこで、ある組が鷹津をハメたんだ。かなり大問題になってな、警察の監査室まで引っ張り出して、県警の本部長のクビが飛ぶかという話までいった」 淡々と話す賢吾のバリトンの響きが耳に心地いい。ふ
「この間買ったコロンをつけてみたんだ」「ふうん。……でも先生には、もう少し甘い香りをつけてほしいな」 強い光を放つ目が、じっと和彦を見据えてくる。その目の中に激情ともいえるものが渦巻いているのを感じ取り、とにかくこの場を離れるのが先だと思った。 こんな目をしている千尋には、自制というものが働かないということを、一度千尋に軟禁されたことがある和彦は身をもって知っているのだ。「千尋、ここは暑いから、場所を変えよう」「でも先生、用があるからここに来たんだよね? 一人で何してたの?」 そう問いかけ
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく
嫌という生易しい感覚ではなかったが、さんざん快感を与えられ続けた体は、蜜を含んだように重く、思考もまた、同じような状態だった。 「―― 俺の〈オンナ〉の中を、指できれいにしてやってくれ。お前も、まったく知らない場所じゃないだろ。うちの組で、俺と千尋以外に先生の尻を開いてやったのは、お前だけだ」 ビクリと腰を震わせて、一瞬だけ和彦は抵抗しようとしたが、三田村の指が内奥に挿入されたとき、賢吾の腕の中で悶え、溶けていた。**** 長嶺の本宅で、布団に横になっていた和彦は、三田村の手を取って胸元に