LOGIN下腹部に鈍痛と異物感が広がり、息を喘がせる。その間、守光の手は休むことなく動き続け、和彦の欲望を愛撫し続ける。一度は力をなくしかけたものは、おずおずと勃ち上がり、敏感な先端を執拗に指の腹で擦られていくうちに、しっとりと濡れていく。
「んっ」 先端を爪の先で弄られ、刺激の強さから本能的に腰を浮かせて逃げようとするが、次の守光の言葉を聞いて、動きを止めた。「そのうち、新しいおもちゃを作らせて、あんたの〈ここ〉を可愛がってやろう……」 顔を強張らせる和彦に対して、あくまで穏やかな声で守光が続けた。「冗談だよ。少しだけ、言葉であんたを苛めたくなった」 本当にそうだろうか――。 率直に疑問を感じたが、欲望を緩やかに扱き上げられて、甲高い声を上げる。 守光の欲望を根本まで内奥に呑み込むと、それを待っていたように腰を掴まれて軽く揺すられる。狭くひくつく内奥で欲望が蠢き、荒く短い呼吸を繰り返しながら和彦は顔を仰け反らせる。「これは、いい…&hell「……どうかな。いっそのこと、完全に関わりを絶ったほうが――」『それはダメだっ』 思いがけず里見の激しい反応に、和彦は目を丸くする。「里見さん……」『家族ともう二度と会わないつもりか? おれとも……』 そもそも里見とは、高校を卒業してから十三年ほど顔を合わせるどころか、連絡も取り合っていなかった。長嶺の男たちと知り合うことがなければ、そのままの状態が続いていたはずだ。里見は佐伯家の厄介な問題に巻き込まれることなく、和彦とのことも、単なる思い出になっていただろう。 だからこそ、里見の物言いが気になった。しかし指摘してはいけないように思え、和彦はあえて違うことを口にする。「――今、〈おれ〉って言った」 数秒ほど、戸惑ったように沈黙した里見が、ああ、と吐息のような声を洩らした。『仕事でもそれ以外でも、ずっと〈わたし〉で通しているから、馴染んだつもりだったけど……。君が相手だとダメだな』「ぼくにとっては、そっちのほうが里見さんらしい」『何があったのか話してくれたら、昔の言い方に戻すよ。和彦くんだけに』 口ぶりは冗談めかしているが、電話の向こうで里見は真剣な顔をしているのであろうと想像できた。「……ズルいな、その言い方」『前に会ったとき、おれは言ったよ。大人は、ズルいんだと。きっと、大人になった君でも想像できないぐらい』 自嘲気味に洩らした里見が、大きく息を吐き出したあと、囁きかけるような声で言った。『また、会いたいな。君に』 里見の声音に記憶を揺さぶられる。蘇ったのは、和彦が高校生の頃、体を重ねたあとに里見から惜しみなく与えられた、甘い睦言の数々だった。 そんな場合ではないと頭ではわかっていながらも、顔が熱くなって冷静ではいられなくなる。里見にはまだ聞きたいことがあり、なんとか言葉を紡ごうとした和彦の耳に、電話の向こうから微かな物音が届いた。続いて、里見が発した鋭い息遣いが。明らかに里見は動揺していた。『悪
**** 明日の今頃、自分は俊哉と会っているのだと、ベッドに腰掛けた和彦はぼんやりと考える。 久しぶりの父親との対面だというのに、湧き起こるのは困惑と恐れという感情だけだ。自分勝手な行動の果て、実家に迷惑をかけていることに対する申し訳なさは、自分でも不思議なほど感じなかった。 かつて、英俊と会うことになったとき、和彦はひたすら警戒し、委縮していた。自分の背後にあるものの存在を悟られてはいけないと、そのことだけに神経を費やしていたかもしれない。あのとき、同じ状況の相手が俊哉になったら、と考えないわけではなかったが、現実は和彦の想定を超えてしまった。 俊哉は、何もかも知っている。鷹津が把握している範囲のことを。 守光から、俊哉に会うよう告げられたあと、胸にじわじわと広がっていったのは、諦観だ。もし俊哉から、実家に戻るよう宣告された場合、和彦は抗う術がない。英俊にはかろうじて虚勢を張れたが、俊哉が相手では――。 和彦はブルッと身を震わせると、ベッドを下り、落ち着きなく室内を歩き回る。 ここは、総和会本部四階の宿泊室が並ぶ一角の、和彦のために準備されたワンルームだ。人の気配を気にせず過ごすには申し分ないスペースだが、窓の外の景色を見ることも叶わず、なんとなく自分が檻に閉じ込められた動物のような感覚に陥る。 総和会の都合で本部に留まるのは、よくあることだ。そのこと自体に誰も――、賢吾が不審に感じることはないだろう。まさか、和彦と総和会が父子対面の準備をしているとは、考えもしないはずだ。そうでないと困る。 賢吾を裏切っているという罪悪感に心が痛まないわけではないが、自分たちの事情に巻き込みたくなかった。 俊哉にぶつけるのは、総和会であり、長嶺守光でなければならない。 ひっそりと心の中で呟いたとき、ナイトテーブルの上に置いた携帯電話が鳴った。反射的に駆け寄り、携帯電話の一台を取り上げる。里見との連絡用に持っているもので、今晩話せないか、事前にメールを入れておいたのだ。『――今、平気かな。和彦くん』 里見の穏やかな声で呼びかけられると、和彦の感覚は高校生までの自分に戻る。
鷹津は清廉潔白という言葉とは対極にある存在だ。ヤクザを取り締まる職業に就きながら、そのヤクザから金品を受け取り、見返りに便宜を図っていたと悪びれることなく話していた。南郷が今言ったことを、あの男ならやりかねないと、正直、和彦は思う。 しかし鷹津は、危険を冒してまで和彦と関係を持とうとした。あの行動力は、打算だけで生まれるものではない。最後に会ったとき、鷹津は言ったのだ。 惚れた相手を、性質の悪い連中のもとから連れて逃げたいと。自分一人では無理だから、俊哉と手を組むことにしたとも。 あの言葉を信じるなら、鷹津の行動には明確な目的があるはずだ。 そう、和彦は信じたかった。「うちが金を出さないとわかると、鷹津は本当に行動を起こすだろう。あんたがやめろと言ったところで、暴走が治まるとも思えない。だからオヤジさんは行動を起こした。あの男があることないことを吹き込む前に、あんたの父親に連絡したんだ」「それでぼくが、父に会うことになったんですね」「交渉は、あんたが父親と会うところからスタートする。あんたの後ろ盾は総和会となるが、結局のところ、長嶺と佐伯の家同士の話し合いだ。オヤジさんは、あんたを返すつもりはない。いざとなれば、どんな手を使ってでも養子にするつもりだ。――あんたの父親は、どう出るだろうな?」 そこまで言って南郷は立ち上がる。「オヤジさんから聞いただろうが、あんたは何日か、長嶺組の人間との接触は避けてくれ。事を大きくしたくない。あんたにしても、長嶺組長やその跡目に、心配はかけたくないだろう」「……わかっています」「けっこう。あんたが予想外の行動を取らないなら、こっちも余計な手間をかけなくて済む。急なことだから、あんたら父子につける監視と護衛の人員を、急いで手配しないといけないが、前回と違って、こちらの正体を一切隠さなくていいというのは、ずいぶん楽だ」 英俊と会ったときのことを言っているのだ。その後、自分がどこに連れて行かれ、何をされたのかを思い出した和彦は、きつい眼差しを南郷に向ける。すると、こちらの神経を逆撫でるようなことを言われた。「今回は、あんな〈お楽しみ〉はなしだ」
** 四階のエレベーター前のラウンジは深夜ということもあり、人の姿はなかった。 和彦は窓際のソファに身を預け、顔を強張らせたままずっと考え込んでいる。突然訪れた事態を、賢吾に相談したくて仕方なかったが、守光から、少なくとも明後日までは本部に滞在するだけでなく、長嶺組への口止めも言い渡されていた。 和彦が俊哉と会うことは、総和会の中でもごく限られた人間にしか知らされていないのだという。長嶺組は一切関わらせないとも、守光は断言した。 そのことに和彦は、不安である反面、安堵している。混乱ゆえに暴走して、賢吾に泣きついて長嶺組に迷惑をかける恐れもある中、守光の発言はある意味、和彦の行動の抑止力となる。今も、賢吾に電話をかけたい気持ちを、何度も押し殺して耐えていた。 いつかは訪れる現実から目を背けてきた報いとして、長嶺組に警察の手が及ぶ事態になるぐらいなら、守光にすべてを委ねたほうがいい。 これまでも、そうだったではないか――。 自虐的に心の中で呟いたとき、エレベーターの到着を告げる音が響いた。正面の窓ガラスに、エレベーターから降りた南郷の姿が反射して映る。 守光の住居スペースのほうに行きかけた南郷だが、和彦に気づくと、迷うことなく歩み寄ってくる。いつもなら露骨に避けるところだが、今の和彦はひどく体がだるく、何より、南郷に聞きたいことがあった。「何もかもに絶望したような顔をしてるな、先生」 隣に腰掛けた南郷は、こんな状況でも揶揄するような言葉をかけてくる。本当に嫌な男だと思った和彦だが、窓ガラスに映る自分の顔は確かにひどい。「南郷さんは、知っているんですよね。会長が、ぼくの父と――……」「オヤジさんを恨むのは、筋違いだ。全部、鷹津のせいだ」 心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受け、和彦はビクリと体を震わせていた。過剰な反応を南郷に気づかれたのではないかと警戒し、横目で反応をうかがう。案の定、南郷はじっと和彦を見ていた。「その様子だと、まだ鷹津を想っているようだな、先生」「……何を、言って……」
情欲が冷めることを許さないとばかりに、道具で内奥を嬲られる。否応なく肉の愉悦を引きずり出され、円を描くように道具を動かされると、尾を引く甘い呻き声を上げてしまう。奥深くまで捩じ込まれて苦しいはずなのに、和彦の欲望は再び身を起こしていた。 両足を大きく開いた格好を取らされ、その中心に守光が顔を埋めてくる。「あっ、ふあっ……」 欲望を守光の口腔に含まれていた。先端を舌先でくすぐられたあと、きつく吸引される。同時に、内奥で道具を動かされ、和彦は腰を揺らす。 軽い絶頂を迎えたような気もするが、まるで波のように絶え間なく快感を送り込まれ、和彦は惑乱していた。口淫の合間に守光に囁かれるままに、卑猥な言葉を口走り、獣のような姿勢も取る。 守光によって限界まで精を搾り取られ、ようやく内奥から道具を引き抜かれたとき、和彦は息も絶え絶えになっていた。一方的に快感を与えられる代わりに、思考力を奪われたようで、まるで自分が肉でできた人形になったような感覚に陥る。 そんな和彦を満足げに見下ろしてから、守光に唇を塞がれた。行為の仕上げとばかりに、触れ合わせた舌先を伝って口腔に流し込まれたのは、和彦自身が放った精だった。「んっ、ん」 わずかに抵抗の意思を示したが、吐き出すことは叶わず、唾液とともに自分の精を嚥下していた。 濡れた唇を守光に拭われて、和彦はぼんやりとする。全身が汗と精と潤滑剤で汚れてしまい、一刻も早く体を洗ってしまいたいと思いながらも、腕を持ち上げる気力も湧かない。 体を起こした守光が傍らに座り、和彦の髪に指を絡めてきた。「あんたは従順だが、わしに対して常に、心を硬い殻で覆っている……、いや、守っている気がする。わしに心を探られるのが怖いかね?」 和彦はふうっと息を吐き出すと、何も考えられないまま、だからこそ正直に答えた。「はい……」 頭の片隅で、守光と俊哉の関係について聞かなければと思うが、どう切り出せばいいのか、会話の糸口を見つけられない。「だが今は、そうでもないだろう。あんたの体と心を、快感でドロドロに溶かし
下腹部に鈍痛と異物感が広がり、息を喘がせる。その間、守光の手は休むことなく動き続け、和彦の欲望を愛撫し続ける。一度は力をなくしかけたものは、おずおずと勃ち上がり、敏感な先端を執拗に指の腹で擦られていくうちに、しっとりと濡れていく。「んっ」 先端を爪の先で弄られ、刺激の強さから本能的に腰を浮かせて逃げようとするが、次の守光の言葉を聞いて、動きを止めた。「そのうち、新しいおもちゃを作らせて、あんたの〈ここ〉を可愛がってやろう……」 顔を強張らせる和彦に対して、あくまで穏やかな声で守光が続けた。「冗談だよ。少しだけ、言葉であんたを苛めたくなった」 本当にそうだろうか――。 率直に疑問を感じたが、欲望を緩やかに扱き上げられて、甲高い声を上げる。 守光の欲望を根本まで内奥に呑み込むと、それを待っていたように腰を掴まれて軽く揺すられる。狭くひくつく内奥で欲望が蠢き、荒く短い呼吸を繰り返しながら和彦は顔を仰け反らせる。「これは、いい……。じっくりと、あんたの悦ぶ様を観察できる。あんたが、わしを悦ばせるために尽くす様も」 尻の肉を鷲掴まれて、それだけでビクビクと体を震わせる。鈍痛と異物感はいつものように淡く溶けていき、狂おしい肉欲の疼きへと姿を変えていく。 守光の手の動きに導かれ、和彦はゆっくりと腰を前後に揺らし始める。次第に、自らの意思で。 守光との行為が常にそうであるように、この夜もじっくりと時間をかけて行われる。決して急ぐことなく、守光は和彦の内奥を犯し、蕩けさせていくのだ。 潤滑剤を塗り込められた襞と粘膜が、ぴったりと守光の欲望に吸いつき、まとわりつく。淫らな蠕動を始めて締め付ける頃には、和彦は恥知らずな嬌声を上げ、肌を汗で濡らしていた。「演技ではなく、感じているんだろう。あんたの肌が赤く染まり始めた。尻の奥も、さっきからよく痙攣している。いつ味わっても、具合がいい……」 腰を掴まれて揺すられ、内奥で息づく欲望が蠢く。意識してきつく締め付けると、守光の両てのひらが腹部から胸元へと這わされ、敏感に尖ったままの
外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう
さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自
** 別れ際、玄関で秦に抱き締められてから、和彦は部屋をあとにした。 エレベーターの中で、もう二度と秦と会わないということはおそらく不可能だろうなと、ぼんやりと考える。秘密を共有してしまったということもあるが、秦との間に確かな結びつきができたことを実感していたのだ。 賢吾や千尋、三田村との間で生まれた結びつき――縁と、同種だ。肉欲と切っても切れない縁で、それはすぐに、情へと変化する。さすがに和彦も、それぐらいは学習していた。 複雑になった事態と人間関係を、自分はどうするつもりなのか、考えたくなかった。体も心も、秦から与え
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく