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第7話(33)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-12-02 08:00:30

 和彦は、楽しそうな賢吾を睨みつけたあと、相変わらずドアの傍らに立ったままの三田村にも視線を向ける。こういうとき、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような三田村の無表情に救われる。

「さあ、どっちがいい? どっちでも、たっぷり先生を感じさせてやる」

 耳に唇を押し当てながら賢吾に唆され、和彦は陥落した。

「――舐めて、くれ……」

 背後から大きく突き上げられて和彦は悲鳴を上げる。同時に、二度目の絶頂の証をシーツに飛び散らせていた。

 絶頂の余韻で、内奥深くに押し込まれている賢吾のものをきつく締め上げていたが、いきなり引き抜かれて、和彦の体は仰向けにされる。すぐにまた、内奥に凶暴な欲望を挿入された。

 和彦は喘ぎながら、まるで子供のように賢吾にすがりつく。汗で濡れた背に両腕を回すと、力強い律動が再開される。

「二度もイかせたのに、まだ俺のものにしゃぶりついてくるな、先生の中は。やっぱり、大好きなものを中に出してもらわないと、満足できないか?」
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    last updateLast Updated : 2026-03-28
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  • 血と束縛と   第12話(4)

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    last updateLast Updated : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第12話(18)

     頭を上げさせられた和彦は、賢吾に引っ張り起こされ、向き合う形となって抱き締められる。その背後で千尋が身じろぐ気配と衣擦れの音を聞いた。「俺の息子に対しては、先生は徹底して甘いな。俺が妬けるほどだ」 賢吾の肩に額を押し当て、息を喘がせていた和彦は、その言葉を聞いて顔を上げる。楽しげに見える賢吾だが、大蛇を潜ませた目はじっとりとした熱を孕んでいる。この男も興奮しているのだ。 今朝まで、別の男に抱かれていた和彦の体に触れながら、賢吾は何を思っているのか。 想像の余地はあるが、深い闇を覗き込むような行為に思え、怖かった。 ただ、和彦に

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