LOGIN秦の店のパウダールームでされたように、内奥を指でこじ開けられ、挿入される。
「……ひくついてますね。やっぱり、素直な体だ。そうであるよう、長嶺組長にずっと愛されているんでしょうね。三田村さんは、そんな先生に溺れている、といったところですか」 指の動きに合わせて、顔を背けて喘いでいた和彦は、思わず秦を見上げる。秦は唇に笑みを刻んだ。「なんとなく、ですよ。店に駆け込んできて、先生を大事そうに抱えているあの人を見たら、そんな気がしたんです。――で、先生は、長嶺組長の一人息子とも仲がいいと聞いているんですが」 話しながら秦の指は内奥から出し入れされ、感じやすい襞と粘膜を擦り上げていた。和彦が一瞬、答えを拒むように唇を噛むと、浅い部分をぐっと指の腹で押し上げられ、痺れるような感覚が生まれる。「あうっ……」「もしかして先生は、長嶺組長だけの〈オンナ〉じゃないんですか?」 肉を掻き分けるようにして、長い指が付け根まで内奥に挿入されると、条件反射のように嬉々和彦がぎこちなく手を動かしているのとは対照的に、賢吾の指の動きは巧みだ。確実に和彦の弱みを探り当て、弄んでくる。すべてを賢吾に委ねた証として、無意識のうちに力が抜け、自ら大きく足を開いて愛撫を求めてしまう。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾はそっと目を細めた。 オンナの従順ぶりを愛でているようでもあり、そのオンナに、同じような愛撫を施した男の動きを追っているようでもある。「どの男に対しても、こんなにいやらしい蜜を垂らして悦んで見せているんなら、少し仕込みすぎたかもしれねーな」 ゾッとするほど優しい声で囁いた賢吾の片手が、反り返り、先端から尽きることなく透明なしずくを垂らしている和彦の欲望にかかる。唇を噛んで声を堪えたが、反応そのものを堪えることはできない。賢吾の手が動くたびに腰を揺らし、熱くなったものを震わせる。「ふっ……」 凶暴な熱の塊が、ひくつく内奥の入り口に擦りつけられる。それだけで和彦の背筋に、痺れるような疼きが駆け抜けていた。指で解されたとはいえ、まだ狭い場所をゆっくりとこじ開けられ、痛みと異物感が生まれはするものの、大蛇の化身のような男に内から食らわれるという高揚感の前には、あまりに淡い感覚だ。 和彦はすがるように賢吾を見上げながら、逞しい腕に懸命にしがみつく。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が残酷な質問をぶつけてきた。「――こんなふうに、南郷を受け入れたか?」 瞬間的に怯えた和彦だが、欲望の太い部分を内奥に呑み込まされ、強い刺激に気を取られてしまう。さらに追い討ちをかけるように、賢吾が緩く腰を揺する。「んあっ、あっ、あうっ……」「どうだ」 反り返った欲望を、賢吾の下腹部に擦り上げられながら、唇の端を軽く吸われる。吐息をこぼした和彦は、ようやく言葉を発することができた。「……な、い……。受け入れて、ないっ……」「本当か?」 賢吾の口調が穏やかだからこそ、腹の内に滾っているものを想像して恐怖する。和彦は恥らう余裕もなく、事実を答えていた。
念を押すように賢吾に問われ、顔を背けながら和彦は頷く。ここで一旦賢吾が体を起こし、ベッドに沈められそうな圧迫感から解放される。だが、ほっとはできなかった。顔を背けたままの和彦の耳には、しっかりと衣擦れの音が届いていたからだ。 再びのしかかられ、今度はしっかりと素肌同士が重なる。全身で感じる賢吾の体の重みと熱さに和彦は、一気に高まった高揚感から眩暈に襲われる。その間にも膝を掴まれて両足を広げられると、逞しい腰が割り込まされる。擦りつけられた賢吾の欲望は、すでに猛っていた。「先生、俺を見ろ」 傲慢に命令され、和彦はおずおずと従う。見上げた先で、賢吾は唇に薄い笑みを浮かべていた。かつては酷薄そうに見えていた笑みだが、今は違う。ひどく官能を刺激される魅力的な表情だと思った。「あっ……」 こちらの求めがわかったように、賢吾に唇を吸われる。和彦は箍が外れたように賢吾の唇を吸い返しながら、夢中で両腕を広い背へと回し、てのひらで存分に大蛇を撫で回す。口づけの合間に賢吾に問われた。「――こいつが愛しいか?」 和彦は息を喘がせながら、賢吾の目を覗き込む。背だけではなく、この男は身の内にも大蛇を棲まわせている。残酷で獰猛なくせに、蕩かしそうなほどオンナを甘やかしながら、底知れない強い執着心と独占欲を持つ生き物だ。だからこそ、己の手から離れると知ったとき、この生き物は容赦なく、オンナの首をへし折ってしまうだろう。他人の手に渡るぐらいなら、と。「そんなわけ……ない。こんな、怖いもの……」「だが、欲しいだろ?」 甘く優しい声で囁かれ、和彦は賢吾を睨みつける。しかし賢吾の唇が瞼に押し当てられると、もう抗えなかった。「……欲し、い」 指にたっぷりの唾液を絡めた賢吾が身じろぐ。予期したとおり、濡れた指が内奥の入り口をまさぐり始め、和彦は反射的に腰を揺らしていた。内奥をこじ開けるようにして指を挿入され、堪えきれず呻き声を洩らしていたが、賢吾は冷静に和彦の内を探る。 きつい収縮を繰り返す内奥から指を出し入れし、確実に入り口を解してい
反論は唇に吸い取られ、そのまま舌を絡め合う。賢吾の指が器用に動き、ネクタイを解かれ、ワイシャツのボタンを外されていく。賢吾の指がわずかに肌を掠めるだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じてしまい、浅ましく愛撫をねだってしまいそうになる自分が忌々しい。「……そんな、気分じゃ、ない……」 ほんの一時間ほど前に会った南郷の顔がちらつき、情欲のうねりとは裏腹に、拒否感がチクリと胸の奥を刺激する。嫌でも、あの男に触れられたときのことを思い出していた。 そして、賢吾に申し訳ないと感じてしまうのだ。「生憎だが、俺は、そんな気分だ。――他の男の毒気にあてられたオンナを、さっさと正気に戻してやらねーとな」 大蛇が潜む目でじっと見据えられ、危うく息が止まりそうになる。一見、普段と変わらない――むしろ機嫌がよさそうにすら見えた賢吾だが、胸の内では激しいものが吹き荒れているのだと、この瞬間、思い知らされた。 怯えた和彦が何も言えなくなった間に、賢吾にワイシャツのボタンをすべて外され、ベルトも緩められる。「うっ……」 賢吾の熱い体が覆い被さってきて、首筋に唇が押し当てられる。所有の証を刻み付けるように、強く肌を吸い上げられた。さらに舌で舐め上げられ、このとき和彦は、首筋に牙を突き立てる大蛇の姿を想像し、恐怖で竦み上がる。 和彦の体の強張りを感じ取ったのだろう。皮肉げな口調で指摘される。「俺が怖いか?」「……ぼくはいつでも、あんたが怖い」「あんたじゃない。賢吾さんだろ。今は」 再び首筋に唇を這わされながらワイシャツを脱がされ、腹部から胸元へとてのひらが這わされる。愛しげに丹念に肌を撫で回されているうちに、寸前の会話を忘れ、簡単に身を任せてしまいそうになっていた。 期待と興奮で硬く凝った胸の突起を、焦らすように指の腹でくすぐられてから、摘まみ上げられる。小さく声を洩らした和彦は、無意識のうちに賢吾の頭に手をかけていた。 和彦の求めがわかったらしく、賢吾の唇が首筋から移動し、胸元に押し当てられる。「
「そうだったな。俺は先生から堅気の生活を奪った。挙げ句が、長嶺の男三人の〈オンナ〉という立場……いや、役目を押し付けている。とっくに腹を刺されていても、不思議じゃない。なのに、こうして俺がピンピンしているのは――どうしてだ?」 賢吾に顔を覗き込まれ、和彦はスッと視線を逸らす。長嶺の男は、いつも和彦から欲しい答えをもぎ取ろうとするのだ。 低く喉を鳴らして笑った賢吾の指に、あごの下をくすぐられる。「先生は俺にとって、大事で可愛い、特別なオンナだ。逃がさないために、何重にも鎖を巻きつけて、この世界に留めておきたくなる。先生にどれだけつらい思いをさせようがな」「まだ……、そこまで、つらい思いはしていない。それどころか、ひどく甘やかされているようだ」「甘い地獄だ。品がよくて優しい一方で、したたかで多淫な先生は、繊細だ。壊さないように大事にしながら、抜け出せないよう深い場所にまで引きずり込む」「……ぼくがそこまで堕ちたら、本性を見せるんだろ」「もう見せているとは、考えないのか?」 返事に詰まった和彦の反応をおもしろがるように、賢吾は目元を和らげ、そして、額に唇を押し当ててきた。 暴発寸前だった怒りが消えてなくなっていくようで、そんな自分の現金さに和彦はうろたえ、視線をさまよわせる。「――ぼくの機嫌を取っているつもりなのか?」 こめかみに唇を這わせる賢吾の息遣いが笑った。「取ってほしいか?」 カッとした和彦は賢吾の肩を押し上げようとしたが、簡単にあしらわれ、強引に唇を塞がれる。喉の奥から呻き声を洩らした和彦は、なんとか賢吾の顔を押しのけようとするが、反対にがっちりと頭を押さえ込まれていた。 食らいつくような勢いで唇を吸われたかと思うと、熱い舌を口腔深くまでねじ込まれ、犯される。あまりの口づけの激しさに息苦しくなり、必死に身を捩ろうとするが、覆い被さっている体はびくともしない。 このまま窒息させられるのではないかと、本気で怯え、動揺した和彦の抵抗をすべて受け止めながら、賢吾は口づけを続ける。 ようやく一度
ジャケットのボタンを外しながら移動する和彦に、揶揄するように賢吾が話しかけてくる。和彦は素っ気なく応じた。「そんなひどいことは思わないが、否定はしない」「ふむ。機嫌が悪そうだ」「……あんなものを見せられて、機嫌がいいわけないだろう」「総和会と縁がありながら、南郷の土下座を『あんなもの』呼ばわりできるのは、多分先生ぐらいのものだろうな」 いつもであれば、苦々しく感じながらも受け流せるのであろうが、事実今の和彦は機嫌が悪かった。ついカッとして、脱いだジャケットを賢吾に投げつける。「手打ち式ってなんだ? まるでぼくが、ヤクザになったみたいだ。長嶺の男に大事にされている立場を利用して、大層な詫びを求めたと思われたはずだ」「傲慢なオンナだと思われるのは嫌か?」 澄ました顔で賢吾に問われ、返事に詰まった和彦は、きつい眼差しを向ける。ささやかに持っているプライドや恥というものを嘲笑われた気がしたのだ。「もう、いい……。今日は誰とも話したくない」 賢吾の足元に落ちたジャケットを拾い上げ、傍らを通り過ぎようとする。次の瞬間、腰に賢吾の片腕が回される。何事かと思ったときには和彦の体は浮き上がり、爪先が廊下から離れていた。「おいっ……」 反射的に身を捩ろうとしたが、まるで荷物のように賢吾の肩に担ぎ上げられる。バランスを崩しかけて、咄嗟に賢吾の着ているワイシャツを握り締める。わけがわからないまま、もう一度身を捩ろうとして、賢吾に尻を叩かれた。「おとなしくしてろ。落とすぞ」「だったら下ろしてくれっ。一体なんのつもりだ」 賢吾の背を逆さまに見ているうちに頭に血がのぼり、さらに声を荒らげると、眩暈までしてくる。たまらず和彦は、広い背を拳で殴りつけたが、まったく堪えていないらしく、賢吾の足取りが乱れることはない。 寝室に入ってから、和彦の体はベッドに転がされる。すぐに起き上がって抗議をしようとしたが、素っ気なく賢吾に肩を押され、また仰向けで転がった。「怒りを露わにしている先生は、艶やかだな。この世界の男たち
こういう表現は変なのだろうが、南郷の土下座は美しかった。 ダークスーツに包まれた大きな体を畳に擦りつけるように折り曲げ、これ以上なく深く頭を下げるという屈辱的な姿勢を取っていながら、どこか誇らしげにさえ見え、そんな南郷の姿に和彦は、ただ圧倒されていた。 初めて目の当たりにした土下座が、よりにもよってヤクザによるものなのだ。しかも、ただのヤクザではない。十一の組で成り立っている総和会の、その頂点に立つ人物の側近だ。 自分は、そんな男を跪かせてしまったのかと、座布団の上に正座をした和彦は、空恐ろしさに小さく身を震わせる。 あくまで和彦と南郷の間に生じた〈些細な諍い〉は、南郷がこうして土下座をすることで、一応の和解となる。正確には、そう公言できるだけの手順を踏んだということだ。 和彦の気持ちとしては、そもそも事を大げさにするつもりはなかったし、頭を下げている南郷にしても、腹の内は煮えくり返っているかもしれない。それでも、和解は和解だ。「――……もう、頭を上げてもらえませんか? 十分ですから……」 こちらから声をかけなければ、南郷の行為を制止する人間はいない。なんといっても、和解のために用意された和室には、和彦と南郷の二人しかいないのだ。総和会と長嶺組双方からの立会い人の同席を求められたが、和彦自身が断ったためだ。その代わり、部屋の外で待機してもらっている。 本当はそれすら断りたかったが、さすがに二つの組織の面子のためにと言われると、無碍にもできなかった。 守光の居城ともいうべき総和会本部の中にいて、何かあるはずもないのだが――。 ようやく南郷がわずかに頭を上げ、鋭い上目遣いで和彦を見つめてくる。「この場に、俺とあんたの二人しかいないが、これでも立派な手打ち式だ。俺が頭を下げて終わりじゃない。あんたが、終わらせるんだ」「……ぼくに、どうしろと?」「簡単だ。ただ一言、許す、と」 ニヤリと南郷に笑いかけられ、数秒の間を置いて和彦は、敵意を込めた眼差しを向けていた。『許す』という言葉が、どれだけの行為に対してのも
「まあ、ぼくに何かあるはずもないので、護衛の彼らも暇なんじゃないかと――」 ふいに、ジャケットのポケットの中で携帯電話が鳴った。取り出して見てみると、長嶺組が、和彦の護衛に就く組員に渡している携帯電話からだ。 何事かと思いながら電話に出た和彦は、すぐに緊迫した空気を感じ取った。「何かあったのか?」『先生、今、トラブルが起きているんで、絶対、駐車場には来ないでください』「トラブルって……」『警官の職質です。駐車場に停めた車で待機していたら、突然パトカーがやってきたんです。通報があったと。いえ
千尋なりに、独占欲をぶつけたいという衝動を、今日までなんとか堪えていたらしい。子供のように不器用に言葉を紡ぐ千尋を見ていると、和彦はどうしても、突き放すことができない。 犬っころのように素直で可愛い反面、とてつもなく扱いにくくて、危険なこの青年を、和彦なりに大事に思っているのだから仕方ない。「十歳も年上の男に、お前は特別だ、と言われて嬉しいか、お前?」「嬉しいよっ」 即答され、和彦は苦笑を洩らす。気が高ぶっている千尋を落ち着かせるため、背をポンポンと軽く叩いてやったが、逆効果だったらしい。切羽詰った表情で顔を上げた千尋に、いきなり唇を塞が
「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく
**** ブランケットに包まってうとうとしていた和彦は、窓を叩く雨の存在に気づいていた。朝から雨というと、普通なら憂鬱になりそうだが、ここのところの晴天続きに辟易していたところなので、雨音が妙に耳に心地いい。 ただし、湿気を含んだ暑さを堪能する気はないので、今日は部屋に閉じこもって、書類仕事を片付けてのんびりしよう――。 和彦は取り留めもなくそんなことを考えながら、雨音を聞いていた。しかし、そんな穏やかな目覚めをぶち壊すように、無遠慮に電話が鳴った。この時間、電話をかけてくる人物はわかっている。