LOGIN鷹津が乱暴にソファに腰掛けると、それが合図のように、和彦は賢吾にあごを掴まれ、深い口づけを与えられた。
賢吾は再び氷の粒を唇に挟み、熱をもって疼いている胸の突起に擦りつけてくる。氷が溶けると今度は、賢吾の熱い舌に弄られてから、きつく吸い上げられる。「あっ、あっ……」「こっちに氷を押し当てたら、もっと早く溶けそうだな」 そう言って、賢吾が次に氷の粒を押し当ててきたのは、内奥の入り口だった。冷たい感触が内奥に押し込まれ、和彦が声を上げて腰を震わせているうちに、あっという間に氷は溶けてしまい、すかさず次の氷の粒が押し込まれる。今度は、一粒ではなかった。 ウイスキーでいくらか溶かされ丸みを帯びた氷の粒が、挿入された指が蠢くたびに、繊細な襞と粘膜を強く刺激する。「ああっ、あっ、んくうっ――」 革張りのソファの上で、和彦は身悶える。氷の粒を呑み込まされていながら、たまらなく体が熱かった。 物欲しげに賢吾の指を締め付けていたが、指が引きぬかれると、溶けた氷が水となり、内「気持ちいいか、先生? 尻が締まりっぱなしだ」 和彦は何も考えられず、夢中で頷く。賢吾の指が、繋がってひくつく部分を擦り上げてくる。それだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じていた。「いい顔だ。先生みたいな色男を、尻で感じさせているのが自分かと思ったら、限界まで奮い立っても仕方ねーよな。俺だけじゃない。先生を抱いている他の男も同じだろう」 一度内奥から引き抜かれた欲望が、すぐにまた奥深くまで押し入ってくる。和彦は思いきり仰け反って、頭の中で閃光が走るような感覚を味わう。「また、イッたのか。こんなにすぐイクなら、こいつはもう、縛ったままでいいか?」 賢吾が怖い声で囁きながら、和彦の欲望に手をかけてくる。きつく縛められているせいで、少し感覚が鈍くなってきている。それでも、精を放ちたいという衝動だけは強くなっていた。「い、や……。イ、きたい……。賢吾さん、早く――」 内奥に収まっている欲望は凶暴に育っているというのに、和彦の顔を覗き込んでくる賢吾の表情は冴え冴えとしていた。「――お前は、俺のなんだ?」 突然の質問に、和彦は目を見開く。思わず口ごもると、欲望に食い込む皮紐を指でなぞられる。その感触に背を押されるように、和彦は震える声で答えた。「あんたの、オンナだ……」「俺は、誰だ?」「……長嶺組、組長」 よく言えた、ということか、唇に賢吾のキスが落とされる。「お前は、長嶺組組長のオンナだ。これは、何があっても変わらない。変えるつもりもない」 皮紐の縛めが解かれると同時に、内奥深くを抉るように突かれる。和彦は声も出せないまま絶頂に達し、賢吾が見ている前でたっぷりの精を迸らせた。「――……お前は、大蛇の大事で可愛いオンナだ。しっかりと、この淫奔な体に刻み付けておけよ。どれだけの男と寝ようが、忘れられないぐらいしっかりと」 大蛇の執着は怖くて淫らだ。そんなことを頭の片隅で考えながら和彦は、賢吾にしがみついて何度も頷いた。*
「刺青の前に、先生にはこっちを可愛がってもらおう。美味そうにしゃぶって見せてくれ」 そう命じられ、全身を羞恥で熱くしながら和彦は賢吾を睨みつける。しかし、逆らうことはできなかった。身を屈め、あぐらをかいたままの賢吾の両足の間に顔を埋めた。 浴衣を捲り上げ、反り返ったふてぶてしい欲望に丹念に舌を這わせる。舐め上げるたびに、自分はこの男の〈オンナ〉なのだという想いが強くなる。愛しいという純粋な気持ちからではなく、快感のために尽くしてやりたいという、身を焼かれそうな衝動に突き動かされていた。 口腔に含んだ欲望が瞬く間に逞しさを増していき、力強く脈打つ。賢吾に頭を押さえられて、和彦は喉につくほど深く呑み込む。苦しさに耐えながら吸引していると、手荒く髪を撫でてから掴まれた。無言の求めに応じてゆっくりと頭を上下に動かしながら、欲望に舌を絡め、唇で締め付ける。 和彦の口淫をじっくり堪能してから、賢吾は口腔で達した。放たれた精を舌で受け止めて嚥下すると、次の瞬間には和彦は、浴衣を剥ぎ取られて布団の上に突き飛ばされる。賢吾も浴衣を脱ぎ捨てて、のしかかってきた。「あっ……」 両足を抱えるようにして大きく左右に広げられ、賢吾が顔を埋めてくる。和彦のものはいきなり熱い口腔に含まれたかと思うと、容赦ない愛撫に晒される。痛いほど強く吸引され、舌先で先端を攻められたかと思うと、括れを唇で締め付けられる。「うあっ、あっ、もう少し、優しく、してくれ――」 和彦は震えを帯びた声で訴えるが、賢吾は聞き入れる気はないようだった。それどころか、加虐的なものを刺激されたのか、先端に歯列を擦りつけてくる。和彦は、感じすぎるからこそ、この攻められ方が苦手だ。 反射的に腰を揺らして愛撫から逃れようとしたが、執拗に先端を攻められると、もう体が動かない。まるで大蛇が牙を突き立てているようだと思った。牙から毒は出てこないが、反対に、和彦の先端から透明なしずくが滲み出てくる。大蛇は嬉々として舌で舐め取り、もっと出せといわんばかりに攻め立ててくるのだ。 和彦の体から力が抜け、愛撫に身を任せるのを見計らっていたように、賢吾が動く。枕の下から何か取り出したのは見えたが、それがな
和彦は勢いよく立ち上がる。覚悟を決めた以上、のぼせそうになるまで湯に浸かっているわけにもいかない。和彦がどれだけ迷い、悩もうが、大事なのは賢吾がどう反応するかなのだ。 なんといっても、和彦を〈オンナ〉扱いした最初の男だ。よくも悪くも、和彦にとって賢吾は、特別な存在だった。 浴衣を着込むと、髪も乾かさずにまっすぐ賢吾の部屋へと戻る。すでに二組の布団を並べて敷いてあった。その中央に、浴衣に着替えた賢吾があぐらをかいて座っていた。 賢吾に軽く手招きされ、和彦は緊張しながら布団の上にあがる。すかさず腕を掴まれて強引に引き寄せられた。よろめき、倒れ込みそうになるが、その前に賢吾の両腕の中に閉じ込められ、背後からがっちりと抱き締められた。力強い腕の感触に和彦は、怯えではなく心地よさを感じた。「数えきれないぐらい抱き締めているのに、飽きねーな、先生の体の感触は」 耳に唇が押し当てられ、官能的なバリトンに囁かれる。ゾクゾクするような疼きが背筋を駆け上がり、和彦は小さく声を洩らしていた。「――先生が旅行に出かけた日、この感触をオヤジが味わっているのかと思ったら、さすがの俺も胸の奥がザワザワした」「えっ……」 思いがけない賢吾の言葉に反射的に和彦は振り返ろうとしたが、耳朶に歯が立てられて動けなかった。一瞬感じた痛みは、すぐに肉の疼きへと姿を変える。湯上がりの和彦の体は、熱が冷めるどころか、燃えそうなほど熱くなっていく。「先生の存在は、オヤジにとっても特別なようだ。いままであの〈化け狐〉は、俺が誰と寝ようが興味を示したことはなかった。それこそ、息子のオンナに手を出すなんざ、天地がひっくり返ってもありえないことだった。――先生が現れるまではな」 話しながら賢吾の手は油断なく動き、浴衣の裾を割って、両足の奥へと入り込んでくる。内腿を撫でられたかと思うと、無遠慮な手つきで下着を脱がされる。さすがに和彦は拒もうとしたが、もう片方の手が喉にかかり、軽く圧迫される。それだけで和彦の抵抗の意思は潰えた。「俺も、自分の息子の〈恋人〉に手を出して、体よく取り上げたんだ。しかも、千尋と違って、単なる色恋だけで行動したわけじゃない。先生に利用価
「それと、旅先でおもしろい話をしてやると言われていたんだ。あんたと千尋も知らない話を……」 ほお、と賢吾は声を洩らす。どんな話かと聞かれなかったが、隠すほどのことではないので、和彦は端的に告げた。「昔会長は、ぼくの父親が抱えた揉め事を解決したんだそうだ。会ったのはほんの数回らしくて、ぼくのことを調べたときに、父親のことを思い出したと言っていた」 守光が言っていたことは本当だったようだ。賢吾は驚きを隠そうともしなかった。しかしすぐに、意味ありげに目を眇めた。「本当に、食えないジジイだ。千尋が先生とつき合い始めて、それで俺が先生に目をつけたときも、オヤジは何も言わなかったんだが、そのときにはいろいろと企んでいたんだろうな」 どんな企みなのか気にはなったが、尋ねることはできなかった。なんとなく、毒気が強そうな話を聞かされそうだと思ったからだ。 自覚もないまま和彦が軽く眉をひそめていると、揶揄するように賢吾が問いかけてきた。「父親のことを聞いて、長嶺との見えない縁を感じたか?」「……ああ、嫌になるほど物騒な縁を」「気分転換がしたいからという理由で、総和会会長との旅行について行った先生が、物騒なんて言葉を言うのか?」 賢吾の物言いは柔らかだが、和彦の神経をチクチクと刺激してくる。愚鈍ではないつもりの和彦は、賢吾が言外に含んだ皮肉を感じ取っているし、自身の罪悪感の痛みであることも知っているのだ。「もし、ぼくが事前に旅行のことを相談したら、あんたは引き止めたか?」 上半身裸のまま賢吾が目の前を通り過ぎる。惜しげもなく晒された大蛇の刺青に和彦の目は釘付けになったが、じっくりと眺める前に隣の部屋へと行き、姿が見えなくなる。ただ、賢吾の声だけは耳に届いた。「しっかりオヤジを骨抜きにしてこいと言って、送り出しただろうな」 和彦は苦笑しつつも、賢吾らしい――いや、長嶺の男らしい発言だと思った。長嶺の男は、三人とも見事に食えない。 賢吾が再び姿を見せたとき、すでにセーターを着込んでおり、大蛇の刺青を見ることは叶わない。それを残念だと思った和彦は、次の瞬間
**** 長嶺の本宅に足を踏み入れたとき、和彦は奇妙な違和感を覚えて一瞬戸惑っていた。玄関の風景も、出迎えてくれる組員たちの顔ぶれも変わっていない。だが、何かが変わっていると感じた。 持っていたコートとアタッシェケースを組員に預けて靴を脱ぐ。廊下を歩きながら中庭に目を向けると、きれいに手入れされた庭木たちが、ずいぶん成長しているように感じた。春が近づきつつある証か、色づき始めている。 ほんの何日か本宅へ立ち寄らなかっただけなのだが、こうして中庭の様子を目にすると、ずいぶん足が遠のいていたように思えてくるから不思議だ。 そこで和彦は、自分が感じた違和感の正体をわかった気がした。 総和会会長の〈オンナ〉という立場になって初めて、この家を訪れたのだ。後ろめたさと羞恥が、和彦の心をざわざわと落ち着かなくさせる。覚悟を決めてきたはずだが、それでも、冷静ではいられない。 夕食の準備で慌しいダイニングを素通りして、まっすぐ賢吾の部屋へと向かう。 今日は、賢吾から呼ばれて本宅に立ち寄ったわけではない。クリニックからの帰りに、和彦が言い出したのだ。自分なりに気持ちが落ち着いたと判断し、これ以上、賢吾と顔を合わせない不自然さに耐えられなくなったためだ。 賢吾は、ただ和彦からの反応を待っていた。大蛇の化身のような男らしく、じっと身を潜め、しかし獲物から目を離すことなく――。 冷たい蛇の目が脳裏に浮かび、和彦は小さく身震いする。たまらなく賢吾が怖いくせに、同時に胸の奥では、無視できない妖しい衝動がうねっていた。 賢吾の部屋の前まで行き、呼吸を整えてから声をかける。中からの返事を待って障子を開けると、賢吾はちょうどジャケットを脱いだところだった。反射的に歩み寄った和彦は、賢吾の手からジャケットを受け取る。「帰ったばかりなのか?」「いや、三時頃には戻っていたんだが、客と会ったりしていたら、なんとなく着替えるタイミングをなくしてな」 賢吾と自然な会話を交わせるだろうかと、頭であれこれ考えていたのだが、いざとなると身構えるまでもない。いつも通りの会話を交わせていた。和彦はほっと息をつくと
『だけど、君が佐伯家に生まれなければ、わたしは知り合うことはできなかったし、近い存在になることもできなかった。君が佐伯家の中で抱えた人恋しさに、わたしがつけ込んだとも言えるが』「見かけによらず、悪い大人だったよ、里見さんは」 受話器を通して里見の笑い声が聞こえ、つられるように和彦も口元に笑みを浮かべる。それだけで、塞ぎ込んでいた気持ちがわずかだが軽くなった気がした。里見と話すことで、やはり気持ちは舞い上がり、正直、嬉しいとも思ってしまう。この気持ちはどうしようもなかった。 すると、今しかないというタイミングで里見が切り出した。『――少しだけでも、佐伯家に顔を出す気はないのか?』「ぼくが身を隠しながらも、きちんと仕事をして生活していると、澤村やあなたを通して知っても、それでも佐伯家がぼくに会おうとしている理由がわかるまで、顔を出す気はない。少なくとも、ぼくから手の内を晒すマネはしない」『だったら、わたしとは?』「そう言われると、なんだか怖いな。のこのこと出かけていったら、そこに兄さんがいたりして――」『わたしは、騙まし討ちのようなことはしないよ。君からの信頼をなくすのは、何より怖い』「……口が上手いな」『英俊くんとは今、官民共同のプロジェクトを手がけていて、よく顔を合わせるんだが、そのたびに君のことを聞かれるんだ。電話で話しただけだからと誤魔化すんだが、それが気に食わないみたいでね。早く和彦と会って、首に縄をつけてでも佐伯家に連れて来い、と言われている』 見た目も内面もクールな英俊だが、ときおり底知れない激しさを見せることがある。和彦は、その英俊の激しさの一番の被害者だと自負していた。どうやら、相変わらずのようだ。 それより和彦が気になったのは、里見が英俊と今も顔を合わせているという発言だ。つまり、二人が一緒に歩いていた姿には納得できる理由があったということだ。「兄さんが、里見さんの職場に出向くことはあるのかな?」『あるよ。特に今は、仕事の引継ぎのこともあるから』「引継ぎって……」『国選出馬の本格的な準備に入る前に、プ
「……悪いが、さすがに今日は、遊んでやれないぞ。お前と一緒にできることと言ったら、せいぜい同じベッドで、仲良く並んで寝ることぐらいだ」「うん、それでもいいよ」 本当に嬉しそうな顔で返事をするから、千尋は怖い。和彦は大きくため息をつくと、千尋の髪をくしゃくしゃと掻き乱す。「昼食にはまだ早いから、コーヒーぐらいならつき合える」「コーヒーはいいから、マンションに帰る前にちょっとだけ俺につき合ってよ。すぐに済むから」 何事かと、露骨に訝しむ視線を和彦が向けると、苦笑しながら千尋に腕を取られて引っ張られる。
和彦は、楽しそうな賢吾を睨みつけたあと、相変わらずドアの傍らに立ったままの三田村にも視線を向ける。こういうとき、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような三田村の無表情に救われる。「さあ、どっちがいい? どっちでも、たっぷり先生を感じさせてやる」 耳に唇を押し当てながら賢吾に唆され、和彦は陥落した。「――舐めて、くれ……」** 背後から大きく突き上げられて和彦は悲鳴を上げる。同時に、二度目の絶頂の証をシーツに飛び散らせていた。 絶頂の余韻で、内奥深くに押し込まれてい
「――今回は、よくやった。執行部の中じゃ、あいつはもう助からないと思っている人間もいたが、それをお前は助けた」 突然の賢吾の言葉に、和彦は目を丸くする。そこで、ここまで抑えつけていた最低限の好奇心が表に出ていた。「あれは、どういった人間なのか、聞いていいか?」「長嶺組の分家の幹部だ。そして刺した人間も、長嶺組の下部組織の人間だ。つまり、内輪揉めだ」 体を起こした賢吾が、内奥からゆっくりと欲望を引き抜く。息を詰めて苦しさに耐えながら、和彦の視線は自然に三田村のほうへと向いていた。 改めて考えると、異常な状況だ。和彦は、今この場にい
賢吾にこうされるときの高揚感と快感は異常だ。ヤクザの組長という肩書きを持ち、何人ものヤクザを従わせている男が、たかが若い医者でしかない和彦のものを口腔で愛撫しているのだ。倒錯した興奮が、快感に拍車をかける。「ふっ……、あっ、んあっ、ああっ――。賢、吾さっ……」 熱い舌にねっとりと先端を舐め回され、ビクビクと腰を震わせて感じてしまう。賢吾の名を呼ぶとき、賢吾の愛撫は淫らさと情熱を増すのだ。 賢吾の髪に指を差し込み、掻き乱す。上下に賢吾の頭が動き、締め付けてくる唇に和彦のものは扱かれながら、きつく吸