로그인鷹津を煽る言葉が、和彦の欲情を煽る。カッと体が熱くなり、触れられないまま紅潮する肌を、ワイシャツのボタンをすべて外し終えた賢吾が確認する。満足したように目を細めた賢吾が、優しい声で唆してきた。
「さあ、先生、この下衆な男に見せてやれ。自分がどれだけ、長嶺組の組長を骨抜きにして、惑わせているか」 賢吾の熱い手にいきなり和彦のものは握り締められて、容赦なく扱かれる。呻き声を洩らした和彦は、咄嗟にソファの端を掴んだ。 片手が胸元に這わされ、すでに興奮のため硬く凝った胸の突起をてのひらで転がされる。片足を押し上げるようにして覆い被さってきた賢吾にベロリと舐められてから、熱い口腔に含まれると、吸い上げられていた。「あっ……」 扱かれ続ける欲望の先端を、指の腹で擦り上げられる。ビクリと腰を震わせた和彦が唇を噛むと、腿から尻にかけて賢吾に撫で回された。「――思い出すな。初めて先生を抱いたのは、ソファの上だった。あのときも、俺たちの行為を、人が見ていた」「人が嫌がっているのに、お構いな「あんたは、いかにも都会育ちという感じだが、俺がガキの頃に住んでいたのは、こういうところだった。俺が生まれてすぐに母親が育児放棄ってやつをして、そんなロクでなしの母親を育てた連中――つまり、俺の祖父母が仕方なく俺を引き取ったんだ。物心ついたときには、もう厄介者扱いされていたな。俺としても、こいつら早く死なねーかなと思っていたから、お互い様というんだろうな。この世界じゃ、珍しくない話だ。ロクでもない環境で育って、ロクでもない人間が出来上がったというだけだ」 南郷の話を聞きながら和彦は、自分が育った環境は非常に恵まれていたのだろうなと思いはするものの、だからといって幸福であるとは限らないのだと、ささやかな毒を心の中に溜める。 すると、南郷に指摘された。「優しげな色男のあんたは、ときどきゾクリとするような冷たい目をするときがある。人を殺しそうな目というわけじゃなく……、なんというんだろうな。自分と、それ以外の存在を切り離したような、孤高――っていうのか。俺は学がないから、上手い表現が思いつかない」 とぼけたような口調の南郷だが、和彦に向けてくる眼差しは、心の奥底までまさぐってくるかのように鋭い。 物騒な世界で生きる男たちは、共通した勘のよさを持っているのかもしれない。いつだったか、賢吾にも似たようなことを指摘されたことを思い出し、和彦は苦々しい気持ちになる。「……あなたの生い立ちの話をしてたんじゃないですか?」 露骨に話題を逸らされたとわかったのだろう。南郷は微苦笑のようなものを唇に浮かべた。「生い立ちなんて立派なものじゃない。まさに絵に描いたような、ありがちなヤクザの成り上がり話だ。俺はとっとと田舎を飛び出し、ささやかな伝手を頼って仕事にありつき、そこから実入りのいい仕事へと転々としていく中で、オヤジさんに出会った」「長嶺会長ですか」「俺が知り合ったときは、長嶺組長だった。……ヤクザらしくない見た目で、惚れ惚れするほど鋭くて、優しかった。が、怖くもあった。俺はまだ十代のガキだったが、声をかけられただけで舞い上がって、組に入れてほしいと、頭を下げて頼み込んだ。そこで
「そう慌てるな。今、風呂を掃除しているところだ。散歩して汗をかいて帰ったぐらいで、ちょうどいい頃だ」「……だったら、部屋で待ってます」「なら、俺もつき合おう。なんなら、添い寝してやろうか?」 小馬鹿にしたような口調で南郷に言われ、和彦は唇を引き結ぶ。あからさまに昨夜の行為を匂わされると、ムキになって断ることすら、屈辱感に襲われる。引き返したところで、南郷なら本当に部屋に押しかけてきそうだと思い、仕方なく和彦は折れた。 この状況で南郷との力関係ははっきりしており、和彦ができるのは、南郷を怒らせない程度にささやかな抵抗を示すことだけなのだ。 痛い目には遭いたくないと、無意識のうちに和彦は、自分の左頬に触れていた。 昨日、英俊に撲たれた頬は、とっくに痛みは消えているが、受けた衝撃を蘇らせるのは容易い。憂うつな気持ちに、投げ遣りな心境も加わった。 和彦が沈黙したことを承諾と受け取ったらしく、南郷が歩き出す。向かったのは、昨日、ここを訪れたときに気づいた、建物の傍らにある石造りの階段だった。「――ここを下りていくと、村があった場所に出る」 ゆったりとした足取りで階段を下りつつ南郷が言う。後ろからついて歩きながら、和彦は話を聞く。興味がないからと、耳を塞ぐのはあまりに大人げがなさすぎる。「村があった?」「ずいぶん前に廃村になった。山が寂れて、村を出ていく人間が増えて、残った人間も生活が不便になって、やむなく山を下りる。そんな場所の家を嬉々として買うのは、俺たちのような者というわけだ」「……南郷さん、ここに来るのは初めてじゃないようですね」 南郷が、肩越しにちらりと振り返る。「あの家を使うときは大抵、目が離せない人間を閉じ込めて、息が詰まるような時間を過ごすんだが、今回は、違う意味で緊張する。あんたに怪我でもさせたら、俺は指を落として謝罪しなきゃいけなくなるからな」「謝罪って、誰に……」「もちろん、長嶺の男たちに。それ以外にも、あんたのファンは多いからな。どれだけ恨まれるか」 ここで階段が終
** 寝起きの気分は最悪だった。全身に倦怠感が残り、終始眠りが浅かったせいか、頭が重い。「暑……」 緩慢に寝返りを打った和彦は、思わず呟く。部屋の空気がいつもと違うと感じ、ここで、自分が今置かれている状況を思い出し、ひどく暗澹とした気持ちにもなる。 汗のべたつく感触が不快で、ようやく体を起こしたところで、腰の辺りに残る鈍く重い感覚に気づいた。和彦にとってはある意味、馴染み深いともいえる感覚だ。 なぜ、と思った次の瞬間に、体中の血が凍りつきそうになる。それは、強い羞恥と屈辱感によるせいだ。 動揺を抑えながら、慎重に室内を見回す。カーテンの隙間から差し込んでくる陽射しのおかげで、電気をつけなくても室内は十分明るい。そこに、不穏な影は見当たらない。 ぎこちなく緊張を解こうとした和彦だが、ある変化に気づき、顔を強張らせる。昨夜つけたままにしておいたテレビが、消えていた。リモコンは、ベッドから離れた場所に置かれたテーブルの上にある。 悪夢などではなかったのだと、和彦は嫌でも現実を受け入れるしかなかった。 ベッドに座り直して、自分の格好を見下ろす。昨夜ベッドに入ったときと同じ、Tシャツとスウェットパンツで、その上からガウンを着込んではいるのだが、違和感がある。わかりやすいのは、ガウンの紐の結び目だ。明らかに和彦が結んだものではない。 和彦は大きく息を吐き出すと、乱れた髪に指を差し込む。そうやって、南郷に体を自由に扱われたという事実を受け止める。そうするしかなかった。 昨日は兄の英俊と会って話したうえに、さらに衝撃的な出来事に見舞われて、和彦の頭は混乱していた。何から整理していけばいいのかすら、判断がつかない。ただ、猛然と腹が立ってきた。 怒りの矛先は、当然南郷に向いている。 何かに急かされるようにベッドから出た和彦は、ガウンを脱ぎ捨てると、部屋を出る。廊下には人気はなく、不気味なほど静まり返っていた。とりあえず、部屋の前で和彦を見張るという無粋なマネはしていなかったらしい。 和彦は慌しく一階に下りる。長嶺組と連絡を取り、とにかくすぐに迎えを寄越してもらおうと思
「やめろっ」 このとき、南郷の目つきが変わった。鋭く、殺気を帯び、射竦めるように和彦を凝視してくる。南郷のこの変化は一体なんなのかと思ったが、それが狂おしい欲情だと理解した瞬間、和彦は上体を捩って逃げ出そうとしたが、南郷に体をうつ伏せにされて押さえつけられ、腰を抱え上げられる。「うああっ――……」 内奥をこじ開けられる。挿入されたのは、三本の指だった。「今の俺に許されているのは、ここまでだ。――我慢してくれ、先生。腰が抜けるほど、感じさせてやるから」 淫靡な湿った音を立てながら、南郷の指が内奥から出し入れされる。襞と粘膜を強く擦り上げられ、否応なく肉欲を引きずり出されてしまうと、和彦は脆かった。シーツを握り締め、腰を揺らして感じてしまう。「あっ、あっ、んんっ……、んっ、くうっ」 南郷に腰を抱き寄せられ、指で内奥を犯されながら、反り返ったままの欲望を手荒く扱かれる。すでに先端から透明なしずくを滴らせていたため、たったそれだけの愛撫でも愉悦で喉を鳴らす。すると、南郷が笑い声を洩らした。「いいみたいだな、先生。尻が締まったまま、痙攣してる。ビクビクッ、ビクビクッてな。……だったら、ここを弄ってやると、もっといいんじゃないか?」 柔らかな膨らみを揉みしだかれ、和彦は声も出せずに絶頂に達する。シーツに向けて、精を迸らせていた。 南郷に乱暴に体を仰向けにされ、緩みきっただらしない顔を覗き込まれる。和彦は南郷の顔を押し退けようとしたが、簡単にいなされた挙げ句、ガウンの太い紐を使って、頭上で両手首を縛られた。そのうえで、南郷から濃厚な口づけを与えられる。縛められた両手を南郷の頭に振り下ろすことは可能だが、快感に浸った体に力が入らない。それはつまり、南郷に屈服したということかもしれない。「……いい顔になってきたな、先生」 南郷に囁かれ、再び内奥に指が挿入される。「んうっ……ん」 鼻にかかった甘い声が洩れ、誘われたように南郷に軽く唇を吸われる。付け根までしっかりと指が埋め込まれ
同じ行為を繰り返され、腰から下に力が入らなくなっていた。南郷は悠々と和彦の両足を抱え、左右に大きく開くが、逆らえなかった。南郷はベッドの上で、完全に和彦の体を支配してしまったのだ。 いつの間にか反り返って熱くなって震える欲望を、握り締められる。「愛想のいい体だ。誰にでも、簡単に懐いて、甘える」 まるで犬猫でも可愛がるような口ぶりに、ほとんど意地だけで南郷を睨みつけた和彦だが、次の瞬間、大きくうろたえていた。南郷が、スラックスの前を寛げ、欲望を外に引き出していたからだ。薄暗い中にあっても、南郷の欲望が高ぶった形をしていることは見て取れた。 逃げるべきなのだろうが、動けなかった。牙を剥き出しにした凶暴な肉食獣を目の前にして、下手に動けば食われると、悟った感覚に近いかもしれない。 和彦が怯えて動けないのをいいことに、南郷は傲慢に振る舞った。和彦の手を取り、前回のときのように、己の欲望を握らせ、扱かせ始めたのだ。そんな和彦に覆い被さり、南郷は顔を覗き込んでくる。 最初は頑なに視線を逸らせていた和彦だが、南郷の眼差しは凶器だ。目が合わなくても、痛いほどの視線を感じ、無視することができない。あごを掴まれたわけでもないのに、見えない力に従わされるように、和彦は南郷を見上げる。 その頃には、南郷の欲望はふてぶてしく脈打ち、燃えそうに熱くなっていた。「あんたと同じだ」 そう言って南郷が、和彦の両足の間に深く腰を密着させてくる。高ぶった二人の欲望が擦れ合い、もどかしい刺激に和彦は小さく声を洩らす。南郷に乱暴に腰を引き寄せられ、指で蕩けさせられた内奥の入り口に、欲望の先端を押し当てられる。 和彦は顔を強張らせ、無意識のうちに南郷の腕に手をかけていた。「――あんたのここに、入れていいか?」 低い声で南郷に問われ、和彦は答えられなかった。どう答えても、行為に及ばれそうだと思ったからだ。本気か戯れかは関係ない。そうしたいと思えば、南郷は和彦を犯し始めるはずだ。この男に怖いものはないのだ。守光以外に。「入れてーな。あんたの尻は、おそろしく具合がよさそうだ。何人もの怖い男たちを咥え込んで、骨抜きにしている場所だ。いまさら、俺一人増えたと
指の腹で軽く押し潰されたあと、胸の突起を熱い口腔に含まれ、きつく吸い上げられる。和彦は小さく身じろいてから、結局顔を背けていた。 反応すまいとする和彦の意思を突き崩すように、南郷の愛撫は執拗で、濃厚だった。さんざん胸の突起を舌と唇で弄んだかと思うと、指で摘み上げてくる。そして、無防備な脇腹に、突然歯を立ててきた。あくまで軽く、痛みはなかったが、歯の硬さ、強靭なあごの力を感じるには十分で、和彦が身を竦めると、今度は機嫌を取るように舌を這わせてくる。 緊張と安堵を繰り返しているうちに、知らず知らずのうちに和彦の体は熱を持ち、肌が汗ばんでくる。もちろん、冷や汗ではなかった。 胸の突起を吸い上げた南郷が顔を上げ、思い出したように和彦の唇を塞いでくる。口腔を舌で犯しながら、手荒く内腿をまさぐられ、欲望を握り締められた。ズキリと腰が疼き、そんな自分の反応に和彦はうろたえる。この瞬間、間近にある南郷の目が笑ったような気がして、ゾッとした。 慌てて大きな体の下から逃れようとしたが、欲望を握る手にわずかに力を込められ、動けなくなる。あとは、南郷にされるがままだった。 大きく足を開いた姿勢を取らされ、欲望を扱かれる。与えられる刺激に無反応ではいられない和彦は、南郷の視線に晒されながら、次第に呼吸を弾ませ、腰を揺らし、欲望を熱くしていく。南郷は、貪欲に和彦の反応を求めてきた。「うっ」 柔らかな膨らみをまさぐられ、上擦った声を洩らす。南郷は口づけを続けながら、無遠慮な手つきで柔らかな膨らみを揉みしだき、和彦はビクビクと腰を震わせる。「ここを弄ったときの、あんたの反応は複雑だ。怖がって、戸惑って、だが、確かに感じてもいる。そのことを恥らってもいるし、媚びてもいる。〈あのとき〉は表情を見ることはできなかったが、声だけでも十分それが伝わってきた。こうして表情を見ると――また格別だな」 弱みを強く指先で弄られ、和彦は悲鳴に近い声を上げる。強い刺激は、恐怖と同じだ。和彦の怯えを察したらしく、南郷は低く笑い声を洩らした。「どうやら、怖がらせたようだな。……痛かったか?」 囁きかけてきながら、南郷が唇を吸ってくる。しかし愛撫が止まることは
「頼むから、部屋の外でそんなことを冗談でも言わないでくれ。ここの組員たちに睨まれたくない」 ヤクザの組長からこんなことを言われると、冗談とわかっていながらも心臓に悪い。ただ、憂鬱さに捕らわれそうになった気持ちは、賢吾のその冗談でふっと軽くなっていた。 コーヒーを啜った和彦が何げなく視線を上げると、賢吾がこちらを見つめていた。そして、自分が腰掛けているソファを指さした。こちらに座り直せと言いたいのだ。わずかにうろたえた和彦だが、結局、賢吾の指示に従う。 案の定、賢吾の隣に座った途端、肩を抱かれて引き寄せられた。 賢吾の大きな手が、ワイシャツの
「これが、総和会会長と長嶺組組長が会うということだ。話した内容なんて関係ない。会ったという事実が、重いんだ。……俺が、ここに近づきたがらないのも納得できるだろ?」 車が走り出してすぐに、和彦の手を握った賢吾が、皮肉っぽい口調で言った。完全に気が抜けた和彦は、シートに深く身を預ける。「だったら、会長が長嶺の本宅を訪ねてくることは?」「帰ってくる、という表現のほうが正しいんだろうな。あの家を建てたのはオヤジだ。俺は、長嶺組を継いだと同時に、あの家も継いだ。……まあ、総和会会長の肩書きがある間は、オヤジ
普通なら、侵入者だと警戒するところだが、生憎、和彦の生活は普通とは言いがたい。部屋の主である和彦の意思に関係なく、自由に出入りできる人間が何人もいる。そしてその人間たちは、和彦に害を及ぼすことは絶対しない。「この落ち着きのなさは――」 和彦は、一人の男の名を呟く。寝室を出て迎えてやろうかとも思ったが、ようやく温まったベッドの中に、夜の訪問者を招き入れるほうが効率的かもしれないと、多少情緒に欠けたことを考えて、じっとしておくことにする。 つまり和彦は、ベッドを出て寒さに震えるのが嫌だったのだ。 それから十分ほどして、ようやく寝室のドアが控え
突然のことに声も出せない和彦は、大きく目を見開く。南郷は、手荒な行動とは裏腹に、静かな表情で和彦を見つめていた。 こんなときに限って、マンション前には人はおろか、車すら通りかからない。 南郷の大きく分厚い手が眼前に迫ってくる。絞め殺されるかもしれないと、本気で危機を感じた和彦だが、仮にも総和会に身を置く男がそんなことをするはずもない。 南郷の手は、和彦の首ではなく、両頬にかかった。「これが、長嶺組長のオンナ……」 和彦の顔を覗き込みながら、ぽつりと南郷が呟く。淡々とした声の響きにゾッとして、和彦は手