Beranda / BL / 血と束縛と / 第9話(45)

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第9話(45)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2025-12-21 14:00:08

 和彦の言葉に、ただでさえ嫌な険を宿した鷹津の目が、さらに険しくなる。相変わらずこの男の目は、ドロドロとした感情の澱が透けて見え、和彦の嫌悪感や警戒心を煽り立てる。

「当たり、みたいだな。……組の人間は、あんたがヤクザ相手に何をしでかしたのか詳しく話してくれないし、ぼくも聞こうとは思わなかった。あんたを悪党だという組長の言葉と、あんた自身を見ていたら、十分だ」

 鷹津が大股で側にやってこようとしたので、和彦はすかさず逃げ、ソファセットを挟んで対峙する。隙を見て寝室か書斎に駆け込めば、中から鍵がかけられるうえに、そこから電話ができる。

「刑事だからと調子に乗りすぎて、ヤクザにハメられたんだろ。あんたがクズだと見下していた連中は、さぞかし気分がよかっただろうな」

「……ああ。ご丁寧に、わざわざ俺の目の前で、嘲笑ったクズがいた。ぶちのめしてやったら、血塗れの顔でのた打ち回ってたな」

 鷹津が下卑た笑みを口元に浮かべ、和彦は怖気立つ。鷹津の凶暴性が怖いと同時に、血の濃厚なイメージが重
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  • 血と束縛と   第22話(14)

    『だけど、君が佐伯家に生まれなければ、わたしは知り合うことはできなかったし、近い存在になることもできなかった。君が佐伯家の中で抱えた人恋しさに、わたしがつけ込んだとも言えるが』「見かけによらず、悪い大人だったよ、里見さんは」 受話器を通して里見の笑い声が聞こえ、つられるように和彦も口元に笑みを浮かべる。それだけで、塞ぎ込んでいた気持ちがわずかだが軽くなった気がした。里見と話すことで、やはり気持ちは舞い上がり、正直、嬉しいとも思ってしまう。この気持ちはどうしようもなかった。 すると、今しかないというタイミングで里見が切り出した。『――少しだけでも、佐伯家に顔を出す気はないのか?』「ぼくが身を隠しながらも、きちんと仕事をして生活していると、澤村やあなたを通して知っても、それでも佐伯家がぼくに会おうとしている理由がわかるまで、顔を出す気はない。少なくとも、ぼくから手の内を晒すマネはしない」『だったら、わたしとは?』「そう言われると、なんだか怖いな。のこのこと出かけていったら、そこに兄さんがいたりして――」『わたしは、騙まし討ちのようなことはしないよ。君からの信頼をなくすのは、何より怖い』「……口が上手いな」『英俊くんとは今、官民共同のプロジェクトを手がけていて、よく顔を合わせるんだが、そのたびに君のことを聞かれるんだ。電話で話しただけだからと誤魔化すんだが、それが気に食わないみたいでね。早く和彦と会って、首に縄をつけてでも佐伯家に連れて来い、と言われている』 見た目も内面もクールな英俊だが、ときおり底知れない激しさを見せることがある。和彦は、その英俊の激しさの一番の被害者だと自負していた。どうやら、相変わらずのようだ。 それより和彦が気になったのは、里見が英俊と今も顔を合わせているという発言だ。つまり、二人が一緒に歩いていた姿には納得できる理由があったということだ。「兄さんが、里見さんの職場に出向くことはあるのかな?」『あるよ。特に今は、仕事の引継ぎのこともあるから』「引継ぎって……」『国選出馬の本格的な準備に入る前に、プ

  • 血と束縛と   第22話(13)

     かつて守光は、総和会会長の立場では、長嶺組の〈身内〉の処遇について命令はできないと言った。今ならこれが、言葉のうえだけの建前でしかないと理解できる。命令はしなくとも、和彦が選択するよう仕向ければいいだけの話なのだ。そして和彦は、選んだ。 男たちの思惑に搦め取られていくうちに、果たして自分はどこに行き着くのか。 考えたところでわかるはずもなく、それがまた和彦の気分を沈み込ませる。何か、しっかりとした支えに掴まっていなければ、今度こそ気持ちを立て直せない危惧すら抱いてしまう。 一度は横になりながらも眠れる心境ではなく、結局和彦は寝室を出る。コーヒーでも入れようかとキッチンに行きはしたものの、カップを出そうとしたところで動きを止める。 一瞬にして芽生えた衝動を必死に抑えようとしたが、できなかった。手早く服を着替えると、財布と部屋の鍵を掴んで玄関を出た。 部屋に引き返したほうがいいと、頭の片隅で弱々しく理性の声がする。しかしそんな声で足を止められるはずもなく、和彦はエレベーターに乗り込む。 マンションを出たときには、これが最初で最後だからと、自分自身に言い訳をしていた。 周囲をうかがいながら小走りで向かったのは、近くのコンビニだった。正確には、コンビニの外に設置された公衆電話に用がある。家から電話をかけると、盗聴器を通して会話を聞かれる恐れがあった。 つまり、組の人間に聞かれたくない電話をかけたいのだ。 慎重に辺りを見回してから受話器を取り上げる。電話番号は、携帯電話に登録したり、メモを手元に残しておくわけにもいかず、頭に叩き込んであった。 番号を押し、呼び出し音を五回聞いたところで受話器を置こうと、心の中で決める。これで、もう縁は切れたのだと諦められると、和彦は思った。 しかし決意とは裏腹に、〈彼〉との縁はそう脆いものではなかったようだ。 三回目の呼び出し音が鳴る前に、あっさりと彼が――里見が電話に出た。『もしもし?』 電話越しに里見の声を聞いた瞬間、和彦の胸は切なく締め付けられる。自分が高校生だった頃の感覚に引き戻されるが、その一方で、自分の今の生活が脳裏を過ぎる。先日里見と会ってから、さほど日は

  • 血と束縛と   第22話(12)

     肩にかかった守光の手に、力が加わる。抱き寄せられた和彦は、抗うこともできず守光におずおずともたれかかった。 守光のもう片方の手があごにかかり、持ち上げられる。初めてこんなに近くから、守光の顔を見ることになる。 端整な容貌の老紳士が、総和会という巨大な組織の頂点に君臨するには、相応の理由がある。見た目がいかに穏やかであろうが、守光の内面がそうであるとは限らない。 守光は、じわじわと本性を露わにしていき、和彦を呑み込んでいく。「あんたは、自分が逆らえない力に敏感だ。そして、その力に対して巧く身を委ねられる。わしに対してもそうであると、考えていいかね?」 目隠しの布一枚分の理屈が、剥ぎ取られる瞬間だった。もう必要ないと守光は確信しているのだ。そして和彦は――。 守光の目を見つめたまま、ゆっくりと唇を塞がれた。 昨夜知ったばかりの唇の感触に、他の男たちには感じない緊張を強いられる。口づけの感覚を分かち合うというより、自分の身を差し出す感覚に近い。一方的に貪られるのだ。 唇を吸われてから、歯列をこじ開けるようにして舌が口腔に入り込む。その間も和彦は、守光の目を見つめ続けていた。賢吾は目に大蛇を潜ませているが、守光の場合は何も捉えられない。冷たい檻が存在していて、その奥に怪物が棲んでいるのだろうかと想像してしまう。守光の怖さは、正体の掴めなさにあるのだ。「んっ……」 口腔の粘膜をじっくりと舐め回されたとき、和彦はゾクゾクするような疼きが背筋を駆け抜ける。 顔を見つめ合いながら唇を重ねて、ようやく和彦は実感していた。守光もまた、長嶺の男なのだと。堪らなく怖い存在である守光に、心と体のどこかで強烈に惹かれるものがあるのだ。もしかすると、そう思い込むことで、この世界での自分の身を守ろうとしているのかもしれないが――。 促されるまま舌を差し出し、守光に吸われる。そうしているうちに緩やかに舌を絡めながら、守光の唾液を受け入れる。守光は目を細めて一度唇を離し、この行為の意味を囁いてきた。「――あんたは今から、長嶺守光の〈オンナ〉だ。いいな?」 まるで暗示にかけられたように和彦は頷く。頭の中

  • 血と束縛と   第22話(11)

    「おはよう。まだ横になっていてもかまわんよ。わしはこれから外を散歩して、露天風呂に入ってくる。朝食はそれからだ」 そうは言われても、起き抜けに強烈なものを見てしまい、眠気など一気に吹き飛んでしまった。 いままで守光を畏怖していたが、それは総和会会長という肩書きに対するものだったのだと実感する。九尾の狐の刺青を目にして、長嶺守光という男の一端に触れ、改めて畏怖していた。その一方で、人間としての輪郭が見えてきて、心惹かれるものがあった。 守光はかつて和彦を、抗えない力に対して逆らわず、巧く身を委ねると表現したことがある。自覚がないまま、この本能を発揮した結果が、この心境の変化なのかもしれない。「ぼくも――」 声を発した自分自身に驚きつつも、和彦は言葉を続ける。「ぼくも、散歩にご一緒していいですか?」 守光は口元に薄い笑みを浮かべて頷いた。「大歓迎だ、先生」** シートに体を預けた和彦は、ウィンドーの外の景色をぼんやりと眺めていた。駅からの景色は見慣れたもので、陽射しが降り注いではいるが、通りを歩く人はまだ厚着が多い。ほんの数時間前まで滞在していた場所とは明らかに気温が違う。 ただ、見慣れた景色に和彦はほっとしていた。帰ってきたのだと実感もしていた。 状況に流されるように守光に同行した一泊旅行に、最初はどうなることかと危惧を抱いていたが、もうすぐ終わるのかと思うと、少しだけ名残惜しさがあった。 緊張はしたし、終始人目を気にして居心地の悪い思いもしたが、その分、総和会の男たちに丁寧に接してもらい、気遣ってもらった。特に、守光には。 懐柔されつつあると、頭の片隅で冷静に分析はしているのだ。和彦など、裏の世界では小さな存在だ。それでも大事にされるのは、組織に対して協力的な医者であることと、長嶺の男たちと関係を持っているからだ。 そんな和彦を男たちは容赦なく、裏の世界の深みへと引きずり込み、逃すまいとしている。 怖くはあるが、嫌ではないと感じている時点で、この世界にしっかりと染まっている証だ。「――さすがに疲れただろう」 外に目を遣ったま

  • 血と束縛と   第22話(10)

     衝撃の波が去り、和彦はぎこちなく息を吐き出す。「こういうとき……、父がかつてお世話になりました、と言えばいいんでしょうか」 冗談ではなく、本気で言った言葉だが、守光は低く笑い声を洩らした。「人の縁は不思議だ。こうして、あのときの青年の息子と、枕を並べて同じ部屋で寝ているんだ」 俊哉に関する秘密を抱えて、その息子である和彦を巡る関係を観察していたのだろうかと思うと、ヒヤリとする感覚が背筋を駆け抜ける。守光が怖いというより、不気味だった。「――あんたは、父親とよく似ている」 守光の言葉に、和彦はちらりと苦笑を浮かべる。「初めて言われました。ぼくも兄も、顔立ちは母方の血が濃く出ていると言われ続けてきたので」「顔立ちのことを言っているんじゃない。あんたも、自覚はあるんじゃないか。自分のどの部分が、父親とそっくりなのか。……佐伯俊哉という人間に会ったのは数回だが、人となりを調べることは可能だ。間違いなく、あんたは父親の〈性質〉を受け継いでいる」 守光の言う通り、自覚はあった。だがそれは、心を抉られるような痛みを和彦に与えてくる。認めたくはないのに、認めざるをえないほど、和彦と父親はある性質がよく似ている。 和彦は返事をすることなく再び寝返りを打ち、今度は守光に背を向ける。そんな和彦を気遣うように、守光が優しい声で言った。「おやすみ、先生」 おやすみなさいと、和彦は小さな声で応じた。**** 久しぶりに父親の夢を見た。 幼いときの和彦にとって俊哉は、ただ畏怖の存在だった。抱き上げてくれることも、手を繋いでくれることもなく、どこかに遊びに連れて行ってもらった思い出もない。だが、成長していくに従い、それすら恵まれていたことなのだと思うようになった。 俊哉は、和彦に一切の関心を示さなくなったのだ。まだ、厳しく躾けられていたほうが遥かにまともな状態だった。少なくとも、父親として接してくれていたからだ。 中学生の頃には和彦は、佐伯家での自分の立場を理解していた気がする。

  • 血と束縛と   第22話(9)

    ** 守光と向き合ってお茶を飲むのは、ひどく落ち着かない気分だった。居たたまれない、といってもいいかもしれない。 静かな表情でお茶を味わっている守光をまともに見ることができず、つい隣の部屋へと視線を向ける。すでに二組の布団がきちんと敷いてあった。その様子を見て、つい数十分ほど前までの自分の痴態が蘇る。 一人で動揺する和彦とは対照的に、守光はあくまで何事もなかったように泰然としている。 守光はさきほどの淫らな行為で、相手が自分であると隠そうとはしていなかった。和彦は確かに目隠しをして、何も見られない状態ではあったが、ほとんど意味をなさないものになっていた。守光なりの、もう目隠しを取ってもいいというサインだったのかもしれない。 必要なのは、和彦の覚悟次第ということか。「――今日は疲れただろう」 守光の言葉に、和彦はピクリと肩を揺らす。『おもしろい話』をいつ切り出されるかと、身構えてしまうのだ。「少し……。遠出は久しぶりなので」「まあ、あんたの場合、気疲れといったところだな。わしと一緒にいることに、多少は慣れてきているようだが、それでもまだ肩に力が入っている」「……すみません」「謝るようなことじゃない。――そのうち、嫌でも慣れる。わしとこうして茶を飲むことも、総和会の人間に囲まれていることにも」 どういう意味かと尋ねようとしたが、そのときには守光は立ち上がっていた。「そろそろ布団に入ろう。横になっても話はできる」 和彦は頷き、部屋の電気を消してから守光の隣の布団に入る。 変な感じだった。布団の中で身を硬くしながら、隣にいるのは一体誰なのだろうかと考えてしまう。もちろん、長嶺守光という名で、総和会会長という肩書きを持つ人間だということは知っている。しかし、こうして隣り合って寝ている自分との関係は、よくわからない。 いや、あえて曖昧にしているのだ。だから目隠しという、布一枚分の理屈を必要としていた。 和彦はそっと寝返りを打ち、守光のほうを向く。枕元のライトをつけるまで

  • 血と束縛と   第10話(6)

    「まずは、一回」 賢吾が低く呟き、限界を迎えようとしている和彦のものを握り、軽く数回扱く。深い吐息をこぼした和彦は、腰を揺らしながら賢吾の手の中で果てていた。 脱力した体はすぐに仰向けにされ、パンツの前を寛げただけの姿で賢吾がのしかかってくる。言葉もなく貪り合うような口づけを交わしながら、賢吾に足を抱えられ、蕩けて喘ぐ内奥を再び貫かれた。 和彦はビクビクと体を震わせながら、賢吾の欲望を締め付け、淫らな襞と粘膜で奉仕する。シャツすら脱いでいない賢吾だが、そのシャツはすでに汗で濡れ、筋肉が硬く張り詰めているのがわかる。本物の大蛇とは違い、この大蛇の体は興奮

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-26
  • 血と束縛と   第10話(9)

     一言も反論できなかった。しかし、十歳も年下の青年に言い負かされたままでは悔しいので、精一杯の抵抗を試みる。「……ぼくの周りにいるのが、食えない男ばかりだからだ。だからぼくは、付け込まれる」「それって、俺も入ってる?」 そう問いかけてくる千尋は、やけに嬉しそうだ。和彦は、そんな千尋の頬をペチペチと軽く叩く。「目をキラッキラさせて、そういうことをストレートに聞いてくるうちは、まだまだかもな」 答えながら和彦は、笑みをこぼす。すると、ふいに真顔となった千尋が顔を寄せてきて、チュッと軽く音を立てて唇を吸われ

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-26
  • 血と束縛と   第10話(8)

    「――何があったのか、オヤジから聞いた」 千尋の言葉に、和彦はそっとため息を洩らす。「知らせなくていいと言ったのに……」「ダメだっ。大事なことだよっ。それに――オヤジだけ知っていて、俺が知らないなんて、おかしいだろ。先生は、オヤジだけじゃなく、俺の〈オンナ〉なんだ」 和彦はじっと千尋の顔を見つめる。脳裏に、つい最近、三人の男たちに同時に体を嬲られた体験が蘇る。その中に、まだ若い千尋が加わっていたのだ。しかも、行為のあと、和彦の体を丹念に洗ってくれた。その手つきは、優しくはあったが、傲慢でもあった。〈これ〉は自分の

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-26
  • 血と束縛と   第10話(10)

    「千尋……」「大丈夫。何かあったら、俺が守るよ」 千尋の腕の中、身じろいだ和彦がどうにか振り返ったのと、三田村が待合室に飛び込んでくるのはほぼ同時だった。 三田村はわずかに目を見開いたが、次の瞬間には無表情に戻る。「――どうかしたのか」 三田村にそう問いかけたのは、千尋だ。「いえ……。先生に何があったのか、組長に教えられたものですから……」「電話してくりゃ、それで済む話だろ。忙しい若頭補佐が、わざわざ足を運ぶなんて」

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-26
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