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第6話

Penulis: 汐見ことは
修弥は反論しなかった。ただ静かに将司を見据えている。

「もし怜が本当に君を愛しているなら、君はこんな場所には立っていないはずだ」

その言葉が、刃のように将司の胸へ突き刺さる。将司は力なく、修弥の襟元から手を離す。そして、こちらへ顔を向ける。

「怜、何か言ってくれよ!6歳の頃からずっと俺のそばにいたじゃないか。俺を愛していないはずがないだろ?」

長い沈黙のあと、ようやく口を開く。

「あの時……どうしてあなたを助けたと思う?

あなたが言ったからよ。『生きて海を見に行きたい。一番きれいな日の出を見たい』って。

大切な友達だと思っていたから、あなたをかばった。そのせいで、見えなくなったけれど……」

少し間を置いてから言う。

「……ねえ、将司。私の代わりに、海を見てくれた?」

将司は何か言おうとした。けれど、声にならず、何も返ってこない。その時、理穂が突然泣き出した。

「将司は、毎年私を海に連れて行ってくれた……そういう理由だったの?

てっきり怜が行きたがらないから、ついでに私を誘ってくれたんだと思ってたのに……」

その一言で、すべてが明らかになった。将司が慌てて理穂を
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  • 見えぬ愛にさよなら   第8話

    式場は、息が詰まるほど静まり返っている。聞こえるのは、将司の荒い息遣いだけだ。修弥がタキシードの上着を脱ぎ、私の肩にそっとかける。「怜、行こう」その穏やかな声に、張り詰めていた心が少しずつ落ち着いていく。私は小さくうなずき、修弥の腕に手を添える。そのまま一歩ずつ、壇上を降りていく。背後から、将司のかすれた声が追いかけてくる。「怜!お前の目……俺、医者を探したんだ!本当だ!必ず治してみせる!もう一度だけ、俺を信じてくれ!」私は振り返らない。ただ足を止め、背を向けたまま静かに告げる。「将司、これからは、もうあなたに私の目になってもらう必要はないわ」将司から、すべての力が抜け落ちたようだ。彼はその場にひざまずき、遠ざかっていく私たちをただ見送っている。記者たちが一斉に押し寄せ、無数のカメラが私たちへ向けられる。修弥は私をかばうように歩きながら、低い声で尋ねる。「大丈夫?疲れたなら、僕にもたれていいよ」私はそっと肩を預ける。これまで感じたことのない安心感に包まれる。背後から、理穂の泣き叫ぶ声が響く。「将司、よくも利用したわね!私のことまで騙していたの!?」その直後、ガラスが割れる音が響く。誰かの悲鳴が上がり、通報する声が飛び交う。それでも振り返ることなく、式場の外へ出ていく。頬に降り注ぐ日差しが、ほんのりと暖かい。何も見えない。それでも、確かに感じる。……結婚式で起きた騒動は、瞬く間に世間へ広がっていった。馬淵家が経営する会社の株価は大きく下落し、将司と理穂が使っていた裏アカウントも特定された。二人が投稿していた動画も次々と拡散され、警察も捜査に乗り出した。理穂にはプライバシー侵害の疑いが持たれ、将司にも恐喝の疑いが持たれた。二人とも事情聴取を受けることになった。私は警察で事情を話し、必要な手続きを終えると、修弥に付き添われて家へ戻る。母は家の中にある家具や生活用品を、ほとんどすべて入れ替えていた。カーテンも、ソファも、ベッドも。将司が触れたものは、一つ残らず家から消えている。修弥が私の向かいに座る。「来週、海外から眼科の専門医が来る。怜の角膜はかなり傷んでいるけれど、視神経はまだ機能している。手術がうまくいけば、少しでも視力を取り戻せる可能性がある」指先が、わずかに震え

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    「何をやっているんだ!」声を荒らげる将司に、静かに答える。「見ての通りよ。結婚するの」将司は勢いよく壇上へ駆け上がり、私の腕をつかもうとする。けれど、修弥が私の前へ立った。「誰だお前!」将司の声が震えている。「怜は僕の妻です」修弥は小さく笑う。「馬淵さん、式場を間違えているよ」式場が一気にざわめく。あちこちでカメラのシャッター音が鳴り響いた。理穂が将司の腕にすがりつく。「将司、どういうことなの?」将司は修弥を無視し、こちらを睨みつける。「お前……俺を騙したのか?」私は修弥の手を強く握る。「私は、将司に言われた通りにしただけよ。家柄の釣り合う相手を選んで、結婚することにしたの」将司の息をのむ気配がする。「こんな結婚なんて、お前の両親が認めるはずがない!」その時、母が席から立ち上がった。「清原家を甘く見ないでちょうだい」続いて、父も口を開く。「お前のことは、とっくに見抜いていた。怜はお前を助けようとして視力を失った。それなのに、お前は感謝するどころか、怜の弱さにつけ込み、何度も自分の都合のいいように利用してきた。怜を騙せても、私たちまで騙せると思うな!それだけじゃない。清原家に入り込むため、愛しているふりまでしてきた。怜は目を失ってから、心を許せる友人も多くなかった。その親友と関係を持ちながら、ずっと怜を騙していたんだ」思わず息をのむ。両親は全部知っていた。かつて両親は何度も将司との結婚に反対していた。けれど当時の私は、それを頑固で身勝手な親の干渉だと思っていた。自由に恋愛することすら許してくれないのだと。両親が示してくれた証拠さえ、将司を陥れるための作り話だと信じ込んでいた。けれど今なら分かる。あれはすべて、本当だった。将司のことで両親とぶつかるたび、その言葉の奥には、いつだって私を守りたいという思いがあったのだ。将司が後ずさる。理穂の乱れた息遣いからも、動揺が伝わってくる。「誤解です!私と将司はただの友達で……」母が冷たく笑う。「人の新居のベッドで二人きりで寝るのが友達かしら。友達なら、怜のドレスまで着るのかしら?もう証拠は、すべてそろっているのよ」理穂は何も言い返せなくなった。将司が、はっとしたように私のほうを向く。「……盗聴でもさせてい

  • 見えぬ愛にさよなら   第4話

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  • 見えぬ愛にさよなら   第3話

    写真も腕輪も、分別して指定のゴミ袋に入れ、集積所へ出す。まるで魂を抜き取られたかのような虚脱感を抱え、足元もおぼつかないまま部屋へと戻る。胃の奥から酸っぱいものがせり上がり、ひどい吐き気に襲われる。将司と理穂に裏切られたこと自体は、もう受け入れられる。けれど、自分が二人の関係を盛り上げるための、ただの道具として扱われていたことだけは、どうしても受け入れられなかった。何年も前から、二人は私に隠れて関係を続けていた。私の家には、二人だけの親密な写真が飾られていた。私に向けられていた祝福の言葉さえ、すべて嘘だった。何も見えない私をあざ笑うように、二人の行動には、これ見よがしな挑発さえ混じっていた。夜も更けてから、将司がようやく帰ってくる。「起きてたのか。まだ怒ってる?」リハーサルのはずなのに、将司から酒の匂いが漂っている。もしかすると、あのまま理穂と本番さながらの時間を過ごしてきたのだろうか。自虐的な考えが頭をよぎる。スリッパが床を踏む音が、一歩ずつ近づいてくる。「怜、いい加減にしてくれ。お前があんなことを言い出したせいで、どれだけ恥をかかされたと思ってる?いきなり結婚をやめるなんて言い出して、俺の立場はどうなるんだ。ただでさえ俺が清原家の婿にふさわしくないって言う奴は多かったのに、今じゃ帝都で笑い者にされたんだぞ」かすれた声で被害者を装うその態度に、背筋が凍りつく。以前の私は、自分の障害で、いつもどこかで引け目を感じていた。だからこそ、ずっと私のそばで支え、守ってくれた将司を傷つけまいと必死だった。将司がほんの少しでも不機嫌そうにすると、私は自分から歩み寄って機嫌を取った。そのたびに、彼の違和感のある言動から目をそらしてきた。今になって思えば、将司は私の障害を利用して、理穂との関係を隠していた。それだけではない。何度もわざと傷ついたふりをして、私の同情心まで利用していたのだ。将司が身をかがめる。顔がすぐ近くまで迫ってくる気配に、体が強張り、生理的な嫌悪感に突き動かされ、思わず身体を横へそらす。将司の動きが止まる。その反応に触れた瞬間、ふと気づいた。長い間付き合ってきたのに、私たちは、一度も普通の恋人同士のように触れ合ったことがなかった。胸がぎゅっと締めつけられる。疑惑を確かめるため、こみ上げる吐

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