Home / ファンタジー / 鏡の転移 / エピソード10:鏡の対峙

Share

エピソード10:鏡の対峙

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-10-11 08:00:51

朝の光が森を抜け、悠真とリアナは湖を後にしてさらに深い森の奥へ進んでいた。ミラリオスの空は紫がかった曙光に染まり、鏡の破片が静かに浮かんでいる。昨夜の犠牲の試練を乗り越えた達成感が残る一方で、美咲の危機やカイルの脅威が頭から離れなかった。ミラーは悠真の足元を軽やかに跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては差し出してきた。リアナは前を歩きながら剣を手に持ち、鋭い目で周囲を警戒している。彼女の横顔には、悠真への信頼と、共に戦う決意が深まっている様子が伺えた。

 

「リアナ、昨日の試練…。犠牲を選ばなかったけど、大丈夫だったのかな。」 

悠真は歩きながら呟き、ミラーを撫でた。 

 

「試練は心を試す。お前の決意が魂の門に認められた証だ。だが、油断は禁物だ。」 

リアナは振り返り、冷静な声で答えた。 

 

「認められた…か。けど、美咲が危ないって分かった今、急がないと。」 

悠真は鏡を手に持つと、微かな光を点滅させた。 

 

「その気持ちは分かる。管理者への道は近づいている。だが、敵も近づいている証だ。」 

リアナは剣を握り直し、森の奥を睨んだ。 

 

二人が進むと、道が開け、鏡でできた円形の闘技場のような場所に出た。地面には鏡の破片が散乱し、中央には巨大な鏡の台座がそびえ立っていた。ミラーが突然立ち止まり、耳をピクピクと動かした。 

 

「ミラー、また何か感じた?」 

悠真が屈み込み、ミラーの頭を撫でた。 

 

「これは魂の門の試練場だ。対峙の時が来た。準備しろ。」 

リアナが剣を構え、闘技場をじっと見つめた。 

 

その時、台座から光が放たれ、カイルの姿が現れた。黒髪を乱し、鏡の破片を手に持つ彼の目は、狂気と野心に満ちていた。 

 

「佐藤、よく来たな。偽の調停者。」 

カイルは妖しげに笑い、鏡の破片を弄んだ。 

 

「カイル!またお前か!美咲を巻き込むな!」 

悠真はミラーを下ろし、鏡を握った。 

 

「巻き込む?いや、彼女はお前の弱点だ。魂の門に近づくほど、彼女も引き込まれる。」 

カイルは近づき、悠真を挑発した。 

 

「弱点…!なら、なおさら止めなきゃ!」 

悠真は怒りを込め、ミラーを呼んだ。 

 

「カイル・ヴォルド!お前の野望はここで終わる!」 

リアナが剣を抜き、カイルを睨んだ。 

 

「野望?これは救いだ。佐藤の力を借りれば、ミラリオスを新しく生まれ変わらせられる!」 

カイルの声は誘惑的で、悠真の心に微かな揺れを生んだ。 

 

「新しく…?けど、犠牲は出したくない!」 

悠真は歯を食いしばり、ミラーの力を借りた。 

 

ミラーが鳴き、光の球を放ち、カイルを押し返した。 

 

「何!?お前、成長したな!」 

カイルが驚き、鏡の破片を構えた。 

 

「ミラーのおかげだ!お前には負けない!」 

悠真は光を増幅させ、カイルに迫った。 

 

カイルが鏡の破片を振ると、暗い光が広がり、闘技場を闇に包んだ。 

 

「これは魂の門の闇だ!お前の光で貫け!」 

リアナが叫び、剣で闇を切り裂いた。 

 

「貫く…!ミラー、全力だ!」 

悠真はミラーの頭を叩き、光を集中させた。 

 

光が闇を切り裂き、カイルの姿を露わにした。 

 

「くそっ…!まだ終わらない!」 

カイルが光を操り、悠真に反撃した。 

 

光と闇が交錯し、闘技場が揺れた。ミラーが鳴き、光を増幅し、悠真の力を支えた。 

 

「うっ…!限界近いけど…!」 

悠真は汗を流し、鏡を握り潰した。 

 

「佐藤!私が援護する!」 

リアナが剣を振り、カイルに斬りかかった。 

 

カイルが剣を受け止め、鏡の破片で反撃した。 

 

「お前たち二人では…!」 

カイルの声が途切れ、リアナの剣が彼の肩を掠めた。 

 

「今だ、佐藤!」 

リアナが叫び、悠真に合図を送った。 

 

「分かった!ミラー、決めろ!」 

悠真はミラーの力を全開にし、光の渦を放った。 

 

光がカイルを包み、彼の体が後退した。 

 

「うああっ…!次は…!」 

カイルが叫び、光に飲み込まれ、姿を消した。 

 

戦いが終わり、闘技場が静かになった。悠真は膝をつき、息を切らした。リアナが駆け寄った。 

 

「よくやった、佐藤。カイルを退けた。」 

彼女は悠真の肩を支えた。 

 

「けど…完全には倒せなかったな。美咲のことも…。」 

悠真は弱々しく呟き、ミラーを抱いた。 

 

「そうだ。だが、お前の力は成長した。美咲を救う道が開いた。」 

リアナは微笑み、悠真を立たせた。 

 

その時、台座の鏡が光り、新たなメッセージが浮かんだ。 

 

「鏡の鍵よ。対峙の試練を終えた。管理者への道が開く。だが、犠牲の影が迫る。」 

 

「犠牲の影…?また何かあるのか!?」 

悠真は警戒し、ミラーを撫でた。 

 

「試練は続く。だが、お前の絆がそれを乗り越える力になる。」 

リアナは剣を収め、悠真に頷いた。 

 

二人は闘技場を後にし、魂の門の管理者への道を進んだ。だが、遠くから微かな足音が聞こえ、試練の新たな波が近づいていることを予感させた。 

 

「次は…どんな敵が来るんだろう。」 

悠真はミラーを抱き、覚悟を決めた。 

 

「来るなら、共に戦う。お前の決意を信じる。」 

リアナは剣を握り、悠真に寄り添った。 

 

二人は森の奥へ進み、魂の門の管理者との対峙に備えた。

 

 

道を進むうちに、鏡の破片が道標のように並び、悠真とリアナをさらに深い森の奥へ導いた。木々の間から漏れる光が鏡に反射し、幻想的な雰囲気を強めていた。ミラーは破片を拾うたびに嬉しそうに鳴き、悠真の足元で跳ね回る。その無邪気な姿に、悠真は少し心が和んだ。

 

「ミラー、元気だな。こいつのおかげで少し気が楽になるよ。」 

悠真はミラーを抱き上げ、笑顔を見せた。 

 

「守護獣は主の心を映す。お前が強くなれば、ミラーも強くなる。」 

リアナは微笑み、剣を手に持つ手を緩めた。 

 

「強くなる…。美咲を救うためにも、強くなりたいな。」 

悠真は鏡を手に持つと、微かな光を点滅させた。 

 

「その意志が力になる。だが、焦りは禁物だ。魂の門の試練は心を試す。」 

リアナは真剣な目で悠真を見た。 

 

二人が森を進むと、道が開け、鏡でできた小屋が現れた。小屋の周囲には鏡の破片が散乱し、微かな光が漂っていた。ミラーが小屋に近づき、耳をピクピクと動かした。 

 

「この小屋…何かある?」 

悠真はミラーを下ろし、小屋に近づいた。 

 

「魂の門の残響だ。過去の記憶か、試練の一部かもしれない。入る前に準備しろ。」 

リアナは剣を構え、小屋の周囲を観察した。 

 

小屋の扉を開けると、内部は鏡で覆われ、薄暗い光が漂っていた。中央には古い鏡が置かれ、表面に映像が映し出された。映像には、美咲が鏡を見つめ、涙を流す姿が映っていた。 

 

「美咲…!また幻か!?」 

悠真は鏡に駆け寄り、叫んだ。 

 

「悠真…助けて…。鏡が私を…。」 

美咲の声が鏡から漏れ、悠真の心を締め付けた。 

 

「美咲!待ってろ!必ず助ける!」 

悠真は鏡を叩こうとしたが、リアナが制止した。 

 

「触れるな!これは試練の幻だ。感情に流されるな!」 

リアナが鋭く警告し、悠真の腕を掴んだ。 

 

「けど…美咲が…!」 

悠真は混乱し、ミラーを抱いた。 

 

「試練は心を試す。お前の決意が試されている。冷静になれ!」 

リアナの声が悠真を現実に引き戻した。 

 

「冷静…。分かった。ミラー、力を貸せ。」 

悠真はミラーの頭を叩き、光を放った。 

 

ミラーが鳴き、光が鏡を包んだ。映像が揺れ、カイルの姿が現れた。 

 

「佐藤、遅かったな。美咲はもう私の手中だ。」 

カイルが笑い、鏡の破片を振った。 

 

「何!?美咲を…!カイル、てめえ!」 

悠真は怒りを抑えきれず、鏡を握り潰した。 

 

「佐藤!罠だ!カイルの幻だ!」 

リアナが叫び、悠真を止めた。 

 

光が収まり、映像が消えた。小屋が揺れ、鏡が砕け散った。 

 

「罠…?美咲はまだ…?」 

悠真は息を整え、ミラーを撫でた。 

 

「まだ救える。だが、カイルが魂の門に近づいている証だ。急げ。」 

リアナは剣を握り、悠真を促した。 

 

二人は小屋を後にし、森の奥へ進んだ。鏡の破片が道を照らし、魂の門の管理者への道が開かれていた。 

 

「次は…管理者と対峙だな。」 

悠真はミラーを抱き、覚悟を決めた。 

 

「そうだ。お前の決意が試される時だ。共に戦おう。」 

リアナは剣を握り、悠真に頷いた。 

 

二人は森の深部へ進み、魂の門の管理者との対峙に備えた。

 

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 鏡の転移   エピソード10:鏡の対峙

    朝の光が森を抜け、悠真とリアナは湖を後にしてさらに深い森の奥へ進んでいた。ミラリオスの空は紫がかった曙光に染まり、鏡の破片が静かに浮かんでいる。昨夜の犠牲の試練を乗り越えた達成感が残る一方で、美咲の危機やカイルの脅威が頭から離れなかった。ミラーは悠真の足元を軽やかに跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては差し出してきた。リアナは前を歩きながら剣を手に持ち、鋭い目で周囲を警戒している。彼女の横顔には、悠真への信頼と、共に戦う決意が深まっている様子が伺えた。 「リアナ、昨日の試練…。犠牲を選ばなかったけど、大丈夫だったのかな。」  悠真は歩きながら呟き、ミラーを撫でた。   「試練は心を試す。お前の決意が魂の門に認められた証だ。だが、油断は禁物だ。」  リアナは振り返り、冷静な声で答えた。   「認められた…か。けど、美咲が危ないって分かった今、急がないと。」  悠真は鏡を手に持つと、微かな光を点滅させた。   「その気持ちは分かる。管理者への道は近づいている。だが、敵も近づいている証だ。」  リアナは剣を握り直し、森の奥を睨んだ。   二人が進むと、道が開け、鏡でできた円形の闘技場のような場所に出た。地面には鏡の破片が散乱し、中央には巨大な鏡の台座がそびえ立っていた。ミラーが突然立ち止まり、耳をピクピクと動かした。   「ミラー、また何か感じた?」  悠真が屈み込み、ミラーの頭を撫でた。   「これは魂の門の試練場だ。対峙の時が来た。準備しろ。」  リアナが剣を構え、闘技場をじっと見つめた。   その時、台座から光が放たれ、カイルの姿が現れた。黒髪を乱し、鏡の破片を手に持つ彼の目は、狂気と野心に満ちていた。   「佐藤、よく来たな。偽の調停者。」  カイルは妖

  • 鏡の転移   エピソード9:鏡の記憶

     朝の光が森を抜け、悠真とリアナは村を後にして再び旅路に進んでいた。ミラーは悠真の足元を軽やかに跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。工房での戦いで力は回復したが、カイルとの対決が頭から離れなかった。悠真の心には、欲望を誘う言葉と、ミラリオスの歪んだ現実が混ざり合い、複雑な思いが渦巻いている。リアナは前を歩きながら剣を手に持ち、時折周囲を警戒する。彼女の横顔には、悠真への信頼と、共に戦う覚悟が滲んでいた。 「リアナ、さっきのカイル…。あいつの言うリセットって、ほんとに行けるのかな。」  悠真は歩きながら呟き、ミラーを撫でた。   「カイルの言葉は誘惑だ。リセットは可能かもしれないが、犠牲は計り知れない。信じるな。」  リアナは振り返り、鋭い目で悠真を見た。   「犠牲…。確かに、村や君を守るのに必死だった。けど、全部壊すのは違う気がする。」  悠真は鏡を手に持つと、微かな光を点滅させた。   「その感覚が正しい。お前の力は救うためにある。歪みを正す道を選べ。」  リアナの声は静かだが、力強かった。   二人が進むと、道が開け、鏡でできた古い遺跡が現れた。柱には模様が刻まれ、地面には破片が散乱している。ミラーが突然立ち止まり、耳をピクピクと動かした。   「ミラー、また何か感じた?」  悠真が屈み込み、ミラーの頭を撫でた。   「これは魂の門の残響だ。過去の記憶が残っている。警戒しろ。」  リアナが剣を握り直し、遺跡をじっと見つめた。   遺跡の中央に近づくと、大きな鏡が浮かび、光を放ち始めた。鏡の表面に映像が映し出され、悠真の視界が歪んだ。次に目を開けると、彼は見知らぬ戦場に立っていた。   「何!?また幻か!?」  悠真は周

  • 鏡の転移   エピソード8:鏡の犠牲

     朝の光が森を優しく照らし、悠真とリアナは村を後にして新たな道を進んでいた。ミラーは悠真の足元を跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。昨日の戦いで村人を救った達成感と、力の限界を超えた疲労が混ざり合い、悠真の心は複雑だった。リアナは前を歩きながら剣を手に持ち、時折周囲を警戒する。彼女の背中には、悠真への信頼が少しずつ深まっていることが感じられた。 「リアナ、昨日は危なかったな。君がいてくれて助かったよ。」  悠真は少し照れながら言った。   「礼はいい。お前の決意が村を救った。だが、無茶は控えろ。力の代償が体を蝕む。」  リアナは振り返り、鋭い目で悠真を見た。   「代償…。確かにキツいな。けど、放っておけなかった。」  悠真はミラーを撫でながら呟いた。   「その気持ちは分かる。だが、次はお前が倒れれば誰も守れない。慎重にな。」  リアナの声には心配が混じり、悠真は少し気まずくなった。   二人が進むと、道が細くなり、崖沿いの狭い小道に差し掛かった。崖下には深い谷が広がり、遠くに浮かぶ鏡の破片が朝日を反射して輝いていた。ミラーが突然立ち止まり、耳をピクピクと動かした。   「ミラー、どうした?」  悠真が屈み込み、ミラーの頭を撫でた。   「何かを感じたようだ。敵か、試練か…。警戒しろ。」  リアナが剣を握り直し、小道をじっと見つめた。   その時、崖の上から石が転がり落ち、谷に吸い込まれた。続いて、茂みから複数の人影が現れた。貴族派の騎士たちで、リーダーは重厚な鎧に身を包み、槍を構えていた。   「偽の調停者を見逃すな!ここで仕留める!」  リーダーが叫び、騎士たちが小道に広がった。   

  • 鏡の転移   エピソード7:鏡の決意

     悠真とリアナは広場を抜け、森の奥深くへ進んだ。ミラーは悠真の側を離れず、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。昨日のカイルとの戦いで、悠真の心はまだ揺れていた。欲望の誘惑は強烈で、自分の中の弱さを実感した。だが、ミラーとの絆とリアナの支えが、彼に立ち直る力を与えていた。 「リアナ、カイルの言うリセット…。少しだけ分かる気がするんだ。」  悠真は歩きながら呟いた。   「分かる?何がだ?」  リアナが振り返り、鋭い目で悠真を見た。   「この世界の戦いや混乱…。全部終わらせたいって気持ち。けど、壊すのは違うと思う。」  悠真はミラーを抱き、考えを整理した。   「その思いは正しい。壊すだけでは新たな苦しみが生まれる。救う道を選べ。」  リアナは静かに言い、前に進んだ。   「救う…。けど、俺にそんな力あるのか?」  悠真は自問自答し、鏡を見つめた。   「ある。お前の試練はそれを証明している。信じろ。」  リアナの声に、悠真は少し勇気づけられた。   その時、森の奥から叫び声が聞こえ、二人は急ぎ足で進んだ。現れたのは、小さな集落が貴族派の騎士に襲われている場面だった。村人たちが逃げ惑い、炎が家々を飲み込んでいた。   「またか!村が…!」  悠真はミラーを下ろし、鏡を構えた。   「貴族派だ!お前は村人を守れ。私は敵を牽制する!」  リアナが剣を抜き、騎士たちに突進した。   「分かった!ミラー、頼む!」  悠真はミラーを呼び、光の球を放った。   ミラーが鳴き、光が広がり、村人たちの周囲に防御の膜を張った。炎が膜に当

  • 鏡の転移   エピソード6:鏡の誘惑

     朝の霧が森を覆い、悠真、リアナ、そして新たなパートナーであるミラーは静かに進んでいた。ミラーは悠真の足元を軽やかに跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。昨夜の戦いと試練の疲れがまだ残るが、ミラーとの絆が少しずつ力となって悠真に宿っている気がした。リアナは前を歩きながら、剣を手に周囲を警戒している。彼女の背中には、戦士としての覚悟と、悠真への微かな信頼が感じられた。 「リアナ、この霧、ずっと続くのか?視界が悪すぎるぜ。」  悠真は霧を払いながら呟いた。   「これは魂の門の影響だ。試練が近づいている証拠だ。気を抜くな。」  リアナは剣を握り直し、鋭い目で周囲を見回した。   「試練か…。ミラー、頼むからまた何か変なこと起こさないでくれよ。」  悠真はミラーの頭を撫で、軽く笑った。   ミラーが小さく鳴き、青い目で悠真を見つめた。すると、霧の中から微かな光が漏れ、道が現れた。   「これは…導きか?」  リアナが立ち止まり、光の道をじっと見つめた。   「導きって、魂の門がまた何か仕掛けてきたのか?」  悠真は警戒しながらミラーを抱き上げた。   「だろう。従うしかない。だが、罠の可能性もある。準備しろ。」  リアナは剣を構え、悠真を促した。   二人は光の道を進み、霧が晴れると、鏡でできた広場に出た。中央には巨大な鏡の台座があり、その周囲に浮かぶ鏡の破片が不気味に輝いていた。すると、台座からカイルの姿が現れた。   「やっと会えたな、佐藤。偽の調停者。」  カイルは妖しげに笑い、鏡の破片を手に弄んだ。   「カイル!?お前、また何企んでるんだ!」  悠真はミラーを下ろし、鏡を握

  • 鏡の転移   エピソード5:鏡の絆

    悠真は木の陰で目を覚ました。体はまだ重く、鏡の力を使い果たした後の疲労が残っていた。隣ではリアナが火を起こし、近くの川で取った魚を焼いている。朝焼けが森を照らし、戦いの後の静けさが心地好かった。悠真はゆっくり体を起こし、リアナに声をかけた。 「リアナ…。起きてたのか?ありがとうな、昨日。」  悠真は少し照れながら言った。   「寝てなかった。貴族派が再び来ないか警戒していた。だが、お前の回復が優先だ。食え。」  リアナは焼けた魚を差し出し、淡々と答えた。   「うわ、魚か。美味そうだな。けど、調理法知ってたんだ。」  悠真は魚を受け取り、ほおばった。   「戦士として生きてきた。野営の技術は身についている。お前は現代の知識を頼りにしろ。」  リアナは微笑み、火を調整した。   「確かに…。昨日、光の反射で時間稼ぎできたのは、学校で習ったおかげだ。けど、力の代償がキツいな。」  悠真は魚を食べながら呟いた。   「代償は力の証だ。使いこなせば、貴族派も反逆派も恐れる存在になれる。」  リアナは剣を手に持つと、軽く振り回した。   「恐れられる…。俺、そんな英雄にはなりたくないけどな。」  悠真は苦笑いを浮かべた。   「英雄でなくとも、生き延びる力は必要だ。魂の門の管理者への道はまだ遠い。」  リアナは真剣な目で悠真を見た。   二人が食事を終え、荷物をまとめて出発しようとした時、遠くから足音が聞こえた。悠真とリアナは同時に身構えた。   「また敵か!?」  悠真は鏡を握り、警戒した。   「待て…。これは人間の足音ではない。」 

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status