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エピソード31:鏡の約束・ルミナリス深部

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-12-04 14:00:22

ルミナリスに「深部」と呼ばれる場所がある。

街の最奥、双鏡の広場のさらに奥。

巨大な水晶の壁に囲まれた、誰も立ち入らないとされていた円形の庭園。

そこには一本だけ、鏡の枝を持つ古木が立っていて、

枝の先には、たった一枚だけ、銀色の果実が実っていた。

ユウマとリアナは、管理者から呼び出されてその庭園に招かれた。

「これは……“世界樹の鏡実”」

管理者の前に現れた管理者は、いつもより柔らかな声で告げた。

「二つの世界を完全に繋ぐ、最後の鍵。

 これを食べた者は、現実とミラリオスの“時間”を完全に共有できる。

 つまり、どちらの世界にいても、老いも病も、同じ速度で進む」

ユウマとリアナは顔を見合わせた。

「……つまり?」

「つまり、あなたたちは、もう“別れ”を選ばなくてよくなる。

 ただし、代償がある」

管理者は静かに続けた。

「鏡実を食べるには、

 “永遠の約束”を交わさなければならない。

 互いに命を預け、魂を繋ぎ、

 どちらかが死ねば、もう片方も同時に死ぬ。

 そして……子を宿すことは、永遠にできない」

庭園に風が吹き抜ける。

リアナが小さく息を呑んだ。

「……子供は?」

「生まれない。

 二つの世界を繋ぐ代償として、

 新たな命を生み出すことは封じられる」

ユウマは黙って、リアナの手を握った。

長い沈黙。

やがて、リアナが微笑んだ。

「……いいよ」

「え?」

「子供は……まだ先でいい。

 私には、ユウマがいる。それで十分」

ユウマの目が熱くなる。

「俺も……同じ気持ちだ。

 リアナと一緒にいられるなら、

 それ以上の幸せなんてない」

二人は同時に、古木に歩み寄った。

銀色の果実
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