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エピソード7:鏡の決意

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-10-08 08:00:45

 

悠真とリアナは広場を抜け、森の奥深くへ進んだ。ミラーは悠真の側を離れず、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。昨日のカイルとの戦いで、悠真の心はまだ揺れていた。欲望の誘惑は強烈で、自分の中の弱さを実感した。だが、ミラーとの絆とリアナの支えが、彼に立ち直る力を与えていた。

 

「リアナ、カイルの言うリセット…。少しだけ分かる気がするんだ。」 

悠真は歩きながら呟いた。 

 

「分かる?何がだ?」 

リアナが振り返り、鋭い目で悠真を見た。 

 

「この世界の戦いや混乱…。全部終わらせたいって気持ち。けど、壊すのは違うと思う。」 

悠真はミラーを抱き、考えを整理した。 

 

「その思いは正しい。壊すだけでは新たな苦しみが生まれる。救う道を選べ。」 

リアナは静かに言い、前に進んだ。 

 

「救う…。けど、俺にそんな力あるのか?」 

悠真は自問自答し、鏡を見つめた。 

 

「ある。お前の試練はそれを証明している。信じろ。」 

リアナの声に、悠真は少し勇気づけられた。 

 

その時、森の奥から叫び声が聞こえ、二人は急ぎ足で進んだ。現れたのは、小さな集落が貴族派の騎士に襲われている場面だった。村人たちが逃げ惑い、炎が家々を飲み込んでいた。 

 

「またか!村が…!」 

悠真はミラーを下ろし、鏡を構えた。 

 

「貴族派だ!お前は村人を守れ。私は敵を牽制する!」 

リアナが剣を抜き、騎士たちに突進した。 

 

「分かった!ミラー、頼む!」 

悠真はミラーを呼び、光の球を放った。 

 

ミラーが鳴き、光が広がり、村人たちの周囲に防御の膜を張った。炎が膜に当たり、勢いを失った。 

 

「すごい!ミラー、よくやった!」 

悠真は興奮し、ミラーを褒めた。 

 

だが、騎士のリーダーが悠真に気づき、槍を構えた。 

 

「偽の調停者!その力を我々に差し出せ!」 

リーダーが叫び、部下に命令した。 

 

「断る!村人を守る!」 

悠真は光を増幅させ、騎士たちを押し返した。 

 

リアナが騎士の一人を倒し、血が地面に飛び散った。 

 

「佐藤!まだか!?」 

彼女の声が戦場に響いた。 

 

「もう少し!ミラー、力を貸せ!」 

悠真はミラーの頭を叩き、光をさらに強くした。 

 

光が騎士たちを包み、一時的に動きを封じた。村人たちはその隙に逃げ、集落の外へ避難した。 

 

「うまくいった!村人が…!」 

悠真は安堵の息をついた。 

 

だが、力の使用で再び体に負担がかかり、悠真は膝をついた。 

 

「くそっ…また限界か…。」 

彼は呻き、鏡を握った。 

 

「佐藤!しっかりしろ!」 

リアナが駆け寄り、悠真を支えた。 

 

騎士たちが光から解放され、再び攻撃を仕掛けてきた。 

 

「逃がさん!」 

リーダーが槍を振り上げ、悠真に迫った。 

 

「危ない!」 

リアナが盾となり、槍を受け止めた。彼女の腕から血が流れ、悠真の心を締め付けた。 

 

「リアナ!?」 

悠真は叫び、立ち上がろうとした。 

 

「動くな!お前は村人を守った。それで十分だ!」 

リアナは歯を食いしばり、敵を睨んだ。 

 

「十分じゃない!俺も戦う!」 

悠真はミラーを呼び、最後の力を絞り出した。 

 

鏡から光が炸裂し、騎士たちを一掃した。だが、その反動で悠真は意識を失い、地面に倒れた。 

 

「佐藤!?」 

リアナが慌てて抱き起こし、脈を確認した。 

 

「生きてる…。けど、無茶だったな。」 

悠真が弱々しく目を開けた。 

 

「無茶だ。だが、決意は見えた。お前の力は救いになる。」 

リアナは微笑み、悠真の額に手を当てた。 

 

村人たちが戻り、感謝の言葉を述べた。悠真はミラーと共に休息し、新たな決意を胸に刻んだ。 

 

「次は…もっと強くなる。」 

彼は呟き、リアナに頷いた。 

 

二人は村を後にし、魂の門の管理者への道を進んだ。

 

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