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エピソード6:鏡の誘惑

Author: ちばぢぃ
last update Last Updated: 2025-10-07 08:00:30

 

朝の霧が森を覆い、悠真、リアナ、そして新たなパートナーであるミラーは静かに進んでいた。ミラーは悠真の足元を軽やかに跳ね回り、時折鏡の破片を拾っては彼に差し出してきた。昨夜の戦いと試練の疲れがまだ残るが、ミラーとの絆が少しずつ力となって悠真に宿っている気がした。リアナは前を歩きながら、剣を手に周囲を警戒している。彼女の背中には、戦士としての覚悟と、悠真への微かな信頼が感じられた。

 

「リアナ、この霧、ずっと続くのか?視界が悪すぎるぜ。」 

悠真は霧を払いながら呟いた。 

 

「これは魂の門の影響だ。試練が近づいている証拠だ。気を抜くな。」 

リアナは剣を握り直し、鋭い目で周囲を見回した。 

 

「試練か…。ミラー、頼むからまた何か変なこと起こさないでくれよ。」 

悠真はミラーの頭を撫で、軽く笑った。 

 

ミラーが小さく鳴き、青い目で悠真を見つめた。すると、霧の中から微かな光が漏れ、道が現れた。 

 

「これは…導きか?」 

リアナが立ち止まり、光の道をじっと見つめた。 

 

「導きって、魂の門がまた何か仕掛けてきたのか?」 

悠真は警戒しながらミラーを抱き上げた。 

 

「だろう。従うしかない。だが、罠の可能性もある。準備しろ。」 

リアナは剣を構え、悠真を促した。 

 

二人は光の道を進み、霧が晴れると、鏡でできた広場に出た。中央には巨大な鏡の台座があり、その周囲に浮かぶ鏡の破片が不気味に輝いていた。すると、台座からカイルの姿が現れた。 

 

「やっと会えたな、佐藤。偽の調停者。」 

カイルは妖しげに笑い、鏡の破片を手に弄んだ。 

 

「カイル!?お前、また何企んでるんだ!」 

悠真はミラーを下ろし、鏡を握った。 

 

「企む?いや、これは提案だ。お前の力を活かし、ミラリオスをリセットしよう。貴族派も反逆派も、全てを壊して新しい世界を作る。」 

カイルは近づき、悠真に手を差し伸べた。 

 

「リセット…?またその話か。俺はそんなことしたくない!」 

悠真は後ずさり、リアナの横に並んだ。 

 

「カイル・ヴォルド!お前の狂気は終わりだ!」 

リアナが剣を抜き、カイルを睨んだ。 

 

「狂気?いや、これは救いだ。リアナ、お前もこの歪んだ世界に疲れただろ?佐藤の力で全てを清算しよう。」 

カイルの声は誘惑的で、悠真の心に微かな揺れを生んだ。 

 

「歪み…?確かに、この世界は危なっかしいけど…。」 

悠真は呟き、カイルの言葉に引き込まれそうになった。 

 

「佐藤、惑うな!彼の言葉は罠だ!」 

リアナが鋭く制止し、悠真の肩を掴んだ。 

 

その瞬間、台座の鏡が光り、悠真の視界が歪んだ。次に目を開けると、彼は見知らぬ部屋にいた。部屋は豪華で、鏡で覆われた壁には美咲とリアナの姿が映っていた。 

 

「悠真…私と一緒にいて。」 

美咲が近づき、優しく微笑んだ。彼女のブラウスがはだけ、肌が露わになり、悠真の心を乱した。 

 

「佐藤…私のために戦え。」 

リアナが鎧を脱ぎ、傷だらけの体をさらけ出した。彼女の瞳は切実で、悠真を求めているようだった。 

 

「何!?何だこれ!?」 

悠真は慌てて後退したが、部屋の鏡がさらに光を増した。 

 

「これは試練の幻だ。欲望を誘う鏡の誘惑だ。抵抗しろ、佐藤!」 

リアナの声が遠くから聞こえ、悠真を現実に引き戻した。 

 

「抵抗…!分かった!」 

悠真は目を閉じ、鏡の破片を握り潰した。 

 

光が消え、広場に戻った。カイルが笑いながら近づいてきた。 

 

「どうだ、佐藤?その欲望、隠しきれないだろ?俺と組めば、好きなように叶えられる。」 

カイルの声は甘く、悠真の心を揺さぶった。 

 

「うるさい!俺は…俺は自分の道を選ぶ!」 

悠真は叫び、ミラーを呼んだ。 

 

ミラーが鳴き、光の球を放ち、カイルを押し返した。 

 

「何!?お前、制御できるようになったのか!」 

カイルが驚き、鏡の破片を構えた。 

 

「ミラーのおかげだ!お前には負けない!」 

悠真は光を増幅させ、カイルを圧倒した。 

 

「くそっ…!次は逃がさない!」 

カイルが光に飲み込まれ、姿を消した。 

 

戦いが終わり、悠真は膝をついた。リアナが駆け寄った。 

 

「よくやった、佐藤。誘惑に負けなかった。」 

彼女は悠真の肩を支えた。 

 

「辛かった…。けど、ミラーが助けてくれた。」 

悠真はミラーを撫で、微笑んだ。 

 

「絆が力になったな。だが、カイルはまだ諦めていない。警戒を怠るな。」 

リアナは剣を収め、悠真を促した。 

 

二人は広場を後にし、新たな試練に備えた。

 

 

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