エピソード5：鏡の絆

悠真は木の陰で目を覚ました。体はまだ重く、鏡の力を使い果たした後の疲労が残っていた。隣ではリアナが火を起こし、近くの川で取った魚を焼いている。朝焼けが森を照らし、戦いの後の静けさが心地好かった。悠真はゆっくり体を起こし、リアナに声をかけた。

 

「リアナ…。起きてたのか？ありがとうな、昨日。」 

悠真は少し照れながら言った。 

 

「寝てなかった。貴族派が再び来ないか警戒していた。だが、お前の回復が優先だ。食え。」 

リアナは焼けた魚を差し出し、淡々と答えた。 

 

「うわ、魚か。美味そうだな。けど、調理法知ってたんだ。」 

悠真は魚を受け取り、ほおばった。 

 

「戦士として生きてきた。野営の技術は身についている。お前は現代の知識を頼りにしろ。」 

リアナは微笑み、火を調整した。 

 

「確かに…。昨日、光の反射で時間稼ぎできたのは、学校で習ったおかげだ。けど、力の代償がキツいな。」 

悠真は魚を食べながら呟いた。 

 

「代償は力の証だ。使いこなせば、貴族派も反逆派も恐れる存在になれる。」 

リアナは剣を手に持つと、軽く振り回した。 

 

「恐れられる…。俺、そんな英雄にはなりたくないけどな。」 

悠真は苦笑いを浮かべた。 

 

「英雄でなくとも、生き延びる力は必要だ。魂の門の管理者への道はまだ遠い。」 

リアナは真剣な目で悠真を見た。 

 

二人が食事を終え、荷物をまとめて出発しようとした時、遠くから足音が聞こえた。悠真とリアナは同時に身構えた。 

 

「また敵か！？」 

悠真は鏡を握り、警戒した。 

 

「待て…。これは人間の足音ではない。」 

リアナが耳を澄ませ、剣を構えた。 

 

茂みから現れたのは、鏡の破片でできた小型の獣だった。体はガラス質で、光を反射し、目は青く輝いている。だが、敵意はなく、悠真に近づいてきた。 

 

「何！？鏡獣か！？攻撃してくるのか？」 

悠真は後ずさり、鏡を構えた。 

 

「違う。これは魂の門の守護獣だ。敵ではない。おそらく、お前の試練に関係している。」 

リアナが剣を下ろし、獣に近づいた。 

 

獣が悠真の足元で止まり、鏡の破片を口から落とした。破片が光り、メッセージが浮かんだ。 

 

「鏡の鍵へ。試練の第二歩。守護獣と共に旅せよ。絆を築け。」 

 

「絆…？この獣と？」 

悠真は獣を見下ろし、戸惑った。 

 

「魂の門が試練としてお前にパートナーを与えたようだ。拒めない。」 

リアナは獣を観察し、悠真に説明した。 

 

「パートナー…。名前くらい付けるか。うーん…ミラーってのはどうだ？」 

悠真は獣に近づき、軽く触れてみた。 

 

獣が小さく鳴き、青い目が輝いた。リアナが微笑んだ。 

 

「ミラーか。良い名だ。だが、扱いは慎重にな。お前の力と連動する可能性がある。」 

彼女は警戒しながら言った。 

 

ミラーが悠真の周囲を跳ね回り、親しげに体を擦り寄せてきた。 

 

「可愛いな…。けど、連動ってどういうこと？」 

悠真はミラーを撫でながら尋ねた。 

 

「守護獣は魂の門の分身だ。お前の鏡の改変に反応し、力を増幅するか、逆に乱すかもしれない。試してみろ。」 

リアナは剣を構え、準備した。 

 

「増幅…？分かった、やってみる！」 

悠真はミラーの頭を軽く叩き、鏡を構えた。 

 

光の球をイメージし、鏡に意識を集中。ミラーが鳴き、光が球から渦に変わり、広範囲を照らした。 

 

「うわっ！すごい！範囲が広がった！」 

悠真は驚き、ミラーを見た。 

 

「増幅されたようだ。だが、制御が難しいかもしれない。注意しろ。」 

リアナは剣を下ろし、感心した表情を見せた。 

 

二人はミラーと共に旅を続け、森の奥へ進んだ。だが、遠くからカイルの笑い声が聞こえ、試練の新たな波が近づいていることを予感させた。 

 

「カイル…。また来るのか。」 

悠真はミラーを抱き、覚悟を決めた。 

 

「来るなら、迎え撃つ。お前とミラーの力でだ。」 

リアナは剣を握り、悠真に頷いた。 

 

三人は森の深部へ進み、鏡の絆を深めながら、新たな試練に備えた。