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第940話

Author: 桜夏
たとえ証拠が見つかったところで、蓮司が素直に認めるとは思えない。

アシスタントが尋ねる。「社長。こちらから声明を発表なさいますか?」

蓮司に、橘家の威光を利用させてなるものか。

雅人は無表情のまましばし沈黙し、アシスタントが収集したネットの情報を映す画面に目を走らせる。数秒後、彼は冷ややかに口を開いた。

「あれだけ巧妙に隠した上で匂わせているのだ。今、こちらが声明を出せば、それこそ『何かある』と世間に公言するようなものだろう」

なかなか、狡猾な手口だ。直接は何も語らず、ただ写真という事実だけを突きつける。それだけで、すべてを物語るには十分だった。

蓮司の狙いは、観測気球を上げること。決して明言はせず、たとえ問い詰めても糠に釘。

──美月が橘家とは無関係であると、今、公に発表できないわけではない。

だが、このタイミングでそれをやれば、新井グループと完全に事を構えることになる。

確かに、蓮司のことは心底気に食わない。透子を傷つけたあの男を、憎んですらいる。

しかし、両家の提携関係と、新井のお爺さんの面子も立てねばならない。

唯一の嫡孫がどれほど期待外れであろうと、あの私生児と天秤にかければ、お爺さんが最終的にどちらの肩を持つかは火を見るより明らかだ。

雅人は温度のない声で命じた。「世論の動向を常に監視しろ。新井が橘家の名を直接口にしない限り、こちらも気づかぬふりを続けろ。

だが万が一、奴が橘の名を騙ったり、ましてや妹を矢面に立たせたりするようなことがあれば……その時は、僕への報告は不要だ。即刻、処理しろ」

アシスタントは頷いて承知した。

……

今夜の新井グループは、硝煙なき戦場だった。二つの勢力がぶつかり合い、どちらが最後まで立っていられるかを、誰もが固唾を飲んで見守っている。

当初、圧倒的に劣勢だった蓮司側だが、状況は二転三転した。

まず、自ら不倫を認め、元妻との離婚を公表。同時に、不倫相手とされる女の写真をリークする。

もしその相手が、どこの馬の骨とも知れない三流モデルであれば、大した火種にはならなかっただろう。

しかし、写真が出回るや否や、業界関係者は息を呑んだ。

──あれは、橘家の令嬢ではないか。

まだ正式な披露はされていないが、彼らは皆、先日の晩餐会で橘会長の隣にいた、あの女の顔を覚えていた。

時を同じくして、蓮司
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Mga Comments (2)
goodnovel comment avatar
タチコマ
ん〜!美月生きていたんだねー!図太い奴!コイツが生きていると後々不安が残るんだよね!
goodnovel comment avatar
child1028believe
美月やっぱ生きてたね。 美月と元院長を同部屋に押し込めて脱走を企まないか心配。 この2人普通じゃないからね。 逃げられないように、足の骨折るとかGPS埋め込むとかしとかないと読者は安心できません。 蓮司は暴挙に出たけどこれ以上橘家に恨みかいたい訳?意味わからん。 今日は多分伏線回で展開は無かったな〜。
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