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第278話

Auteur: 風待 栞
彼女は苦しそうに扉を叩いたが、外からは何の反応もない。

水琴はその扉のすぐ外に座り込んでいた。背中越しに聞こえてくる紗音のすすり泣く声に、今すぐ鍵を開けて抱きしめてやりたい衝動を必死に堪えていた。

紗音ちゃん……頑張って。まだ二日目だ。ここで折れてしまえば、残りの五日間はどうなる?治療を諦めるというのか?

やがて扉の向こうから物音が消えた。水琴がスマートフォンで監視カメラの映像を確認すると、紗音は床にへたり込み、ボロボロと涙をこぼしていた。

水琴の指先が震える。鍵を開けようと手が伸びかけたが、一慧の『絶対に干渉してはいけない』という忠告を思い出し、ギリッと歯を食いしばって手を下ろした。

治療者である自分自身が耐えられなくてどうする。紗音はもっと苦しいのだから。

昼頃、監視カメラの中で紗音がベッドに戻って眠りについたのを確認してから、水琴は静かに鍵を開け、彼女の好物ばかりを詰めた食事を部屋に運び入れた。

三日目。

この日は森田療法において一つの転換点となる。多くの患者は最初の二日間を耐え難い苦痛と共に過ごすが、三日目に入ると、パニック状態から一転して「自分自身と向き合う」
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