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第2話

作者: 芽生
佑樹は、鈴奈は幼い頃に父を亡くし、愛情に飢えているから、自分に依存するのも仕方ないと言った。

それを理解した私は、鈴奈が二人の間に割って入ることに対し、不満を抱くどころか、むしろ進んで彼女を気遣った。

けれど、やがて気づいてしまった。

私と佑樹がふたりきりでいようものなら、鈴奈はたとえ来られなくても、何かしらの口実を作って佑樹を呼び戻すのだ。

私の誕生日も、祝日も、記念日も、彼女は「体調が悪い」「うつが悪化した」といった理由で、必ず佑樹の注意を引き寄せる。

大学時代を通じて、佑樹とふたりきりで過ごせたのは、三度もなかっただろう。

佑樹はいつも申し訳なさそうな顔をして、「あの子はまだ子供なんだ」と言った。

私が何度も譲歩した結果、結婚後、状況がさらにエスカレートした。

佑樹は相談もなく、新婚の家に鈴奈専用の部屋まで用意してしまった。

この部屋のせいで、数え切れないほどの喧嘩をした。

そして、離婚を決意させたのは、三日前の結婚記念日のことだった。

あの日、佑樹は「償い」として、レストランを予約してくれた。

「今回は絶対に二人だけの時間だ。サプライズを楽しみにしていてくれ」と、何度も強調した。

私は長い時間、レストランで待った。昼から夜へと時間が過ぎても、佑樹は現れない。

料理は何度も温め直されたが、私の心は少しずつ冷めていった。

店員がまた近づき、声をかけてきた。

「お客様、お料理をもう一度お温めいたしましょうか?」

その時、やっと佑樹から一通のメッセージが届いた。

【鈴奈が急に気分が悪くて倒れちゃって。ちょっと遅れるかも。

悪い、先に食べてて。待たなくていいから……】

私は疲れ切ったため息をついた。

心はもう、麻痺していた。

ひとしきり泣いた後、ようやく感情が落ち着いてきた。

母には離婚を考えていることを打ち明けた。

母は何も言わず、ただ私の決断を支持するとだけ伝えてくれた。

ホテルを探してチェックインした頃には、もう夜も更けていた。

佑樹から一本、着信があった。

私は出なかった。

すると、彼からメッセージが届く。

【まだ怒ってる?知織の大好きな天ぷら、作ったぞ。

早く帰ってこないと、俺が全部食べちゃうからな!】

私はただ一通、返信した。

【明日、区役所に来て。離婚届を出そう】

佑樹からの返事はなかった。

まだ私が一時の感情で言っているだけだと思っているのだろう。

その時、鈴奈の方から突然、一通のメッセージが届いた。

リンクが貼られていた。

開いてみると、それは鈴奈のXのサブ垢だった。

最初のツイートから、全てが佑樹に関する記録だった。

【今日は16歳の誕生日。お兄ちゃんに告白した。ダメだった。一番可愛がってくれる妹でいよう、って】

【お兄ちゃんが他の人からもらったラブレターをビリビリに破いた。これって……やきもち?私のこと、まだ気にしてるのね!】

【お兄ちゃん、大学生になった。いないとすごくつまんない。私も同じ大学に行くからね!】

【なんでお兄ちゃん、あんな女と付き合うの?私が一番じゃないの?】

【ちょっと可哀想なふりするだけで、お兄ちゃんはすぐに彼女のところから飛んでくる。やっぱり私が一番大事なんだ。絶対に取り戻すから!】

……

【あの女が月見団子食べたいだって?全部床にばら撒いてやったわ。どうするのでしょ】

【二人きりの時間が欲しいんだって?気絶したふりしてやった。レストランで一人ぼっちで待ってる姿、想像しただけで笑える】

……なるほど。そういうことだったのか。

激しい衝撃が、心底にあった悲しみさえも一時的に押し流した。最後に残ったのは、疲労と虚無感だけだった。

なんだか、自分がとても滑稽に思えてきた。

佑樹は、鈴奈の気持ちを初めから分かっていた。それでも、すべてを許容してきた。

じゃあ、私は一体何だったんだろう?

二人の弄ばれるおもちゃか?

鈴奈のツイートは、ほぼ自虐的な気持ちで、何度も何度も読み返した。

夜が明け、窓の外が白み始める頃には、私はすでに平静を取り戻していた。

どんなに濃い感情だって、繰り返される鈍い痛みの前には、いつか色あせて消えていく。

佑樹への想いも、例外ではなかった。

出勤前、佑樹からメッセージが届く。

【おはよう。

知織、まだ怒ってる?どこにいるか教えてよ。朝ごはん買って行くから】

見るだけで頭にくる。私はおでこを揉みながら、一通返信した。

【9時に、区役所の前で】

【おとなしくしてよ。そんなちっぽけなことで、離婚だなんて……】

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