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第2話

Author: 白団子
六時間歩き続けて、晴夏はようやく結婚式のリハーサル会場にたどり着いた。

白いスニーカーは血に染まり、歩くたびに地面に赤い跡を残すほど、足はひどく擦りむけていた。

けれど、それでも到着が遅すぎた。すでに深夜一時を過ぎていて、リハーサルの参加者は皆帰ってしまっていた。

修司は先に月乃を連れて現場に来ており、今は祭壇の前で不機嫌そうに腕を組んでいる。

「晴夏、どこ行ってたんだよ!」

彼女を見た瞬間、怒鳴りつけるようにして言った。

「俺、何回も電話したんだぞ!なんで出なかったんだ?どれだけ心配したと思ってるんだ!」

夜の暗さもあってか、修司は晴夏の血まみれの左足に気づいていない。

喉はカラカラだった。晴夏は「スマホの電源が切れてた」と説明したかったが、その前に月乃の声が後ろから飛んできた。

「なに怒鳴ってんのよ、修くん!」

月乃は軽やかに歩み寄ってきて、いきなり修司に蹴りを入れた。

「ったく、晴夏さんにそんな言い方して、出世したもんね~!

途中で晴夏さん放り出して私のとこ来といて、ちょっと拗ねたくらいで文句言うとか、焦らしプレイ?」

一見、晴夏の肩を持っているようで、その実、月乃の言葉は晴夏を「嫉妬深くて面倒くさい女」のように印象づけている。

修司は眉をひそめ、明らかに苛立った表情を見せるが、それでも謝罪の言葉を口にした。

「悪かったよ、晴夏。ちゃんと送ってから行くべきだった。

でも、怒ってるならその場で言ってくれよ。あとから黙って拗ねられるのは困る」

その理不尽さに、晴夏は思わず乾いた笑いが出そうになった。

彼女は今まで何度も、月乃のことで傷ついていると伝えてきた。

泣いて訴えたこともある。

けれど修司はそれを「女性特有のわがまま」として片づけ、宝石ひとつで済ませてきた。

「晴夏さんは小さなプリンセスだから、甘やかさなきゃダメなんだよね〜」

月乃は茶化しながら言った。

「私は雑に育てられてるから、甘やかされなくても平気。さっ、修くんは早く部屋戻って、土下座してな」

そんな軽口を叩きながら二人は部屋へ戻っていった。誰も気づかない──後ろをついていく晴夏の足が、また不自然に引きずられていたことに。

翌日は結婚式のリハーサル本番だった。

痛む足を押して階下に降りた晴夏が見たのは、自分のウェディングドレスを着た月乃の姿だった。

そのドレスは、昨日届いたばかりで、晴夏自身はまだ一度も袖を通していなかった。

修司の友人たちは月乃を囲んで、冗談交じりに盛り上がっている。

「おいおい、月乃って意外とドレス似合うんだな!」

「女の子らしいとこ、たまには見せてくれよ〜」

「うるさいっての!」

月乃は笑いながら軽く蹴りを入れた。

「こんな乙女チックな服、私の趣味じゃないんだから。修くんが見たいって言うから仕方なくよ?」

「ってことは、修司のためだけにドレス着たってこと?」

その問いには答えず、月乃と修司は見つめ合った。

その目には、あまりにも分かりやすい熱があった。

彼女は晴夏のドレスを着て、修司は黒いスーツを身に纏っていた。

誰がどう見ても、結婚するのはこの二人だと錯覚する。

場違いなのは、自分──

晴夏は無言でその場を離れ、自室へと引き返した。

しばらくすると、修司から電話がかかってきた。

「小悪魔ちゃん、どうして降りてこないの?」

「……ドレスなら、もう誰かが着てたから。私は必要ないかと思って」

「え、お前……見てたのか?」

修司の声に、珍しく焦りの色がにじんでいる。

「ごめん!友達がふざけてただけなんだ。俺も止められなかった……今すぐ月乃に脱がせるから!」

その瞬間、電話越しに月乃の悲鳴が響いた。

「きゃっ、修司、お腹が急に痛い……!」

「月!!」

慌てた修司が、彼女の愛称を叫ぶ。

電話を切るのも忘れたまま、彼はそのまま彼女を抱えて病院へと向かった。

晴夏は静かに通話を終了した。もう、何も聞きたくなかった。

だが、それでも月乃は彼女を逃がさなかった。

数分後、スマホに一本の動画が届く。

画面の中、黒いマイバッハに月乃が座っている。

純白のウェディングドレスをまくりながら、艶めいた笑みを浮かべてこう囁いた。

「修くん~そんなに心配しないで。さっきのは演技だよ。

あなたを外に連れ出したのは、ドレス姿の私と一発やらないって……聞きたかっただけ」

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