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決戦前夜

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-10-22 08:00:35

サクラが洗脳から解放された翌日。

オブシディアン基地の会議室には、12人とルーク司令官、エリス・ノヴァが集まっていた。

「まず、サクラの容態だが……」

ルークが報告する。

「医療チームの診断では、完全に回復している」

「洗脳装置の影響も、残っていない」

サクラが申し訳なさそうに頭を下げる。

「みんな、本当にごめんなさい……」

「気にするな」

クロが優しく言う。

「お前は悪くない」

カイも頷く。

「そうだぜ。悪いのは政府だ」

「でも……」

サクラの目に涙が浮かぶ。

「私、クロくんたちを殺そうとして……」

「操られていただけだ」

ジンが冷静に言う。

「君の意思ではない」

フィアも続ける。

「むしろ、洗脳に抵抗しようとしていた」

「あの一瞬の隙が、君を救った」

レインも短く言う。

「強かった」

新加入の3人も、サクラを励ます。

「僕たちも、政府に実験されました」

レオが静かに言う。

「辛さはわかります」

リアも頷く。

「でも、仲間がいれば乗り越えられる」

マルクも拳を握る。

「一緒に戦おう」

サクラが涙を拭い、決意を込めて言った。

「ありがとう、みんな」

「私、もう二度と操られたりしない」

「そのためにも……」

ルークが話題を変える。

「今後の対策を話し合おう」

エリスが資料を配る。

「政府の洗脳装置について、調査しました」

画面に、装置の詳細が映し出される。

「《マインドコントロール・デバイス》」

「特殊な電磁波で脳に干渉し、記憶と意識を操作する」

「恐ろしい技術ね……」

ミナが眉をひそめる。

「対策は?」

フィアが聞く。

「精神防御の魔術で、ある程度は防げます」

エリスが説明する。

「しかし、完全ではありません」

「なら、装置自体を破壊するしかない」

ジンが提案する。

「政府の研究施設を襲撃して、装置を破壊する」

「危険すぎる」

ルークが懸念を示す。

「政府の本拠地は、厳重な警備がある」

「それに、《シャドウハンター》も配備されている」

「シャドウハンター……」

クロが資料を見る。

「異常演算者専門の暗殺部隊」

「ああ」

ルークが頷く。

「エリート兵士で構成され、最新鋭の対異常演算者装備を持っている」

「並の異常演算者では、太刀打ちできない」

「でも、やるしかない」

クロが立ち上がる。

「このままじゃ、また誰かが狙われる」

「次は、洗脳じゃなく暗殺かもしれない」

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