さくらは二人をじっと見つめ、妙な違和感を覚えた。年齢が読めないのだ。見た目は三十そこそこに見えるが、どこか若々しい活力がある。まるで十代か二十代のような。だが瞳を見ると、特に男の目は古井戸のように深く、まるで年老いた狐のような知恵を宿していた。さくらたちが声をかける前に、男が歩み寄って尋ねた。「ここに孤児院ができるのですか?お役所が建てるのでしょうか?」棒太郎は二人を見回した。話し方は確かに都の言葉遣いで、関ヶ原の人間ではないようだ。ただ、悪意は感じられなかったので答えた。「ええ、捨てられた子どもたちを預かる施設です。お役所が作るんです」男が言った。「それは良いことですね」さくらが前に出て尋ねた。「お二人は都からいらしたのですか?」男はさくらを見つめたが、その質問には答えず、逆に問い返した。「あなたが北冥親王妃の上原さくらさんですか?」さくらは身構えた。どうして知っているのかと問おうとしたとき、男がまた口を開いた。「平安京へ向かわれるのでしょう?いつ出発ですか?一緒に行けませんか?」さくらは面食らった。使節団が平安京へ交渉に向かうことは多くの人が知っているが、公式な使者の一行に勝手に人を加えるわけにはいかない。それなのに、当たり前のように頼んでくる。「平安京で何をなさるおつもりですか?」「交渉を見学させていただこうと思いまして。証人のような立場で」この男は、ただ者ではないか、それとも完全にでたらめを言っているかのどちらかだろう。さくらは改めて二人を見た。表情は真剣だが、身なりといえば落ちぶれた渡世人にも劣るありさまだった。男は彼女の返事を待たずに、また別のことを言い出した。「実は、まだ何も食べておりません。お食事をご一緒させていただけませんでしょうか?道中ずっと歩き詰めで、ここに着いてからもあちこち見て回っていたものですから。昨夜の晩飯も抜いてしまいまして」紫乃がちょうど中から出てきたところで、この言葉が耳に入った。前の会話を聞いていなかったため、誰かがさくらに食事を誘っていると思い込んだ。二人の身なりを見て、通りすがりの渡世人だと判断した。「いいじゃない、お食事くらい。旅先では皆仲間でしょ」男の表情が和らぎ、微笑みさえ浮かんだ。「ありがとうございます。春満楼はいかがでしょう?」さくらは春満楼を
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