心臓がどくん、と大きく震えた。私は無意識に片腕を慎一の背中に伸ばしていたけれど、その手をどこに置けばいいのか分からなかった。彼は喉を詰まらせながら言う。「俺より先に死んじゃダメだ」その言葉に、私の目の奥がじんと熱くなる。まるで涙がせり上がってくるみたいに。慎一と離婚してから、世界との最後の繋がりまでも断ち切られた気がしていた。まるで糸が切れた風船のように、風に流されるまま、どこにでも行けると思っていた。康平と一緒に臨城市まで流れ着き、落ち着いた日常を手に入れようと必死にもがいてみた。でも、どれだけ時間を費やしても、一日中仕切りの水槽の中の魚を眺め続けても、そこが家だと感じることはなかった。だけど、今。その糸の端っこを、目の前の男がしっかりと掌で握ってくれていた。彼を通して、私は再びこの土地と繋がりを持つことができた。帰る場所を見つけたような気がした。ざわめく人ごみやパトカーのサイレンも、今はすべて無音の背景に消えていく。私の耳に響いているのは、彼の大きな、熱い愛情と告白だけだった。この瞬間、冬が突然色づいた気がした。私はそっと手を伸ばし、慎一の背中を軽く叩いて言った。「痛いよ……」慎一はすぐに体を起こし、心配そうな顔で私を見つめる。「どこが痛いんだ?」彼はすぐさま振り返り、大声で叫んだ。「救急車!誰か救急車を!」私は涙をぐっと堪えながら、力なく腕を下げていた。やっと彼は、その不自然にぶら下がる私の腕に気付いた。「すぐに病院に連れてく!」そう言って、私をひょいと横抱きにした。その瞬間、真思が彼のズボンの裾を掴んだ。「慎一……助けて……私、もう死んじゃうの……」「待ってろ。救急車はすぐ来るはずだ」慎一は彼女の手を無造作に脚で振り払い、冷たい声で言い放つ。「しっかりしてろよ。お前との決着は、これからだ」「彼女は腕だけなのに、そんなに心配して……私は死にそうだよ、あんたは気にしないの?」真思の哀しい叫びが、背後からいつまでも響いていた。運転手は現場に残り、慎一自らハンドルを握る。火傷で震える手で、それでも彼は運転をやめなかった。「大丈夫か?もう少しだ、すぐ着くから……」こんなにも彼が喋る人だったなんて、私は初めて知った。私は静かに目を閉じて、顔を少し横に向けた。頭の中は「慎一」という名前だけ
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