証拠なんて何もない。ただ相手がふじさきと名乗った、それだけでは——彼とあの女を結びつける根拠にはならなかった。それに玲奈は、尚吾の妻が自分だということすら知らない。そんな相手を疑うなんて、自分でも理屈が通らないとわかっていた。「鍼を打つって言われたとき、なんで断らなかったんだ?そんな簡単にツボを刺させて……命を投げ出すつもりか!」尚吾は、彼女が今日、生死の淵をさまよったことを思い出すたび、抑えきれない怒りが込み上げてきた。真依は少し唇をかみながら、悔しそうに言い返した。「……あなたのおばあさんがそばで見てたのに、どうやって断るの?年配の方だし、体調も悪そうだったから、怒らせたくなかった。
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