「早く帰って、マネージャーと今後の対応を相談したらどうですか?」綾は絢香を見据えた。「輝星エンターテイメントは今日から小林さんと契約しますので、あなたのマネージャーにもそのことを伝えておいたほうがいいですね。どう宣伝しようと、炎上商法を使おうと私は構わないです。だけど、今後業界で輝星のタレントに手をだそうとするなら、私も黙ってませんから」それを聞いて絢香は逃げるようにして出て行った。彼女が去った後、麻衣は口を開いた。「二宮社長、助けてくださってありがとうございます。自分の才能は平凡で、輝星と契約できるほどではないことは分かっています。だから、安心して下さい。そんな高望みはしてませんので」綾は彼女を見つめた。「以前、撮影が終わったら孤児院に戻って、芸能界に入るつもりはないと言っていたけど、今もその気持ちでお変わりないですか?」「はい」麻衣は頷いた。「私は元々芸能人になりたくなかったんです。今回出演したのは監督と子供たちのためです。もちろん、映画の撮影は嫌いじゃないですが、特にドキュメンタリーは商業映画よりも意義深いと思っています」「でしたら、輝星と撮影に限定した契約を結べばいいです。そうすれば、撮影以外は何も参加しなくていいですし、輝星もあなたに、イメージを守るための専属チームを編成させてもらいますので」麻衣は綾をじっと見つめた。「本当にそんなことが可能ですか?」「通常、この待遇はベテラン俳優やトップアイドルのための特別待遇だけど、今回は子供たちのためだし、特別にあなたに適用させてもらいます」それを聞いて、麻衣の目頭が熱くなった。「二宮社長、ありがとうございます。子供たちに代わって感謝を申し上げます!」「あの時は別の投資家のせいで、子供たちを諦めざるを得ませんでしたので、今回のことは、私なりの償いだと思ってください」そう言うと綾は微笑んだ。「秘書に、ヘルパーを手配させますので、あなたは怪我が治るまでとりあえず安静してください。後藤さんのことは心配しなくていいですよ。脇役の女優なら、いくらでも代わりはいますから」「ありがとうございます!」麻衣は鼻をすすった。「必ず良い演技をします。社長と監督の期待を裏切らないように頑張ります!」「このドキュメンタリーで賞を狙っているんですから、もちろん頑張ってもらいたいところです」綾は
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