これは、今まで一度も起きたことのない出来事だった。浩太は、両親にとってたった一人の息子だ。だから、彼が突然姿を消したと知った瞬間、二人は当然ながら取り乱した。すぐに手配して調査させた。だが結果は──浩太は、雲井家の宴会場から一歩も出ていない、というものだった。浩太は秘書を連れて会場に来ていた。だが、その秘書の姿も消えていた。その報告を聞いた小林夫妻の顔に、じわりと不安が広がる。浩太が最後に姿を見せた場所は、雲井家の宴会。ならば、まず雲井家を問いただしに行くしかない。ちょうど階段を降りてきた忠は、小林夫妻の言葉を聞くや、あざ笑うように言った。「小林伯父さん、小林伯母さん。よくもまあ、そんな口がきけますね。こっちこそ、まだ文句言ってないんだけど?あなたたちの息子、浩太は──明日香の誕生日パーティーで、星に薬を盛ったんですよ。既成事実を作って、無理やりうちの星に浩太を押しつけるつもりだったんでしょう?」忠でも、浩太の下心くらいは察せられた。星を娶ろうとしていた──つまり、雲井グループの株が狙いだ。だから兄が怒るのも当然だ。星を利用して雲井家と揉めさせ、その隙に星の持つ株を奪い、最終的に雲井グループを掌握する──そんな筋書きだったのだろう。よくもまあ、こんな浅ましい計画を立てたものだ。雲井家の株を、他所の家に奪われるなんて論外だ。小林家は本当に分をわきまえていない。忠の言葉に、正道と靖の表情がさっと変わる。止めようとしたがもう遅かった。小林夫妻は顔を見合わせると、険しい目を向けてきた。「そんなことまでしていたとは──つまり、浩太を雲井家が隠しているでしょう?」忠はさらに何か言おうとしたが、靖が鋭い視線で制した。確かに、両家の間に揉め事があったと知られれば、浩太が雲井家の宴会で消えた時点で、雲井家が最も怪しいと思われても仕方ない。忠もすぐに気づき、口をつぐんだ。だがもう後の祭りだ。小林夫妻は「やはり」と言わんばかりに、二人をにらみつけた。「浩太がそんなことをしたかどうか、私たちは知らない。まずは、浩太をここへ連れて来てくれ。直接、確かめる」正道が静かに言う。「小林さん。浩太さんはここにはいない。もしここにいるのなら、こちらもあなたがたに説
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