「十六夜?」 あたしが中の人をよく見ようと近づいたら、突然ブースを揺らすほど上下に動き出した。それは大きく跳ねるような痙攣だった。心電図の波形が激しくなった。そして痙攣がピタリと止まると、〈ピーーーーーーーーーーーー〉 とすべての波形がフラットになった。心肺停止状態。「これって?」 高倉さんを見たが、まったくの無表情だった。 なんでそんなに冷静なの? 蘇生しなきゃじゃないの? 放っとけないでしょ? お医者さんを呼ばないの? あたしがパニックになりかけていると、中の人は両手足が真っ直ぐに伸びて硬直状態になったと思ったら、すぐにだらりと弛緩し、〈ピーーーーピ、ピ、ピ、ピ、ピ〉 と心電図が再び波形を刻み始めたのだった。それでようやく高倉さんが言った。「一度死んで再び生き返る。ずっと、この繰り返しなのです」 そしてVRブースの前に回ると、「どうぞ。こちらからご覧ください」 高倉さんに促されたままブースの前から中の人のことを覗いた。 その人はVRゴーグルをしていた。下の顔半分は酸素マスクを付けていて息で曇って口周りはよく見えなかったけれど、銀色の牙が生えていることは分かった。顔色がひどく悪い。青白いを通り越して灰色をしていた。「元祖」六道園で見た獣と同じだった。チューブやコードを付けるためにはだけた胸は引きつった乳房の下に肋骨が浮き出ていた。手足は筋肉が落ちて痩せ細っていた。これではまるで人のぬけがらだと思った。「これが十六夜なの?」あたしは心が張り裂けそうになった。「そうです」 高倉さんが言った。あたしはもう一度変わり果てた十六夜を見てみた。そしてとてつもなく異常なところに気が付いた。その十六夜は金属の管で二の腕を拘束されていて、そこから正面の機器に向かって真っ赤なチューブが伸びていたのだ。チューブで十六夜の玉の緒が吸い取られている。「浄血! なんでこんなことを。早く! 早く外してあげてください。お願い!」 あたしは半べそをかきながら懇願したけれど、高倉さんは首を横に振った。「これは十六夜様が望まれてしていることです。外
Terakhir Diperbarui : 2025-07-28 Baca selengkapnya