片付けられたのだろうか?和彦は重要な物を置く場所がだいたい決まっている。美穂は引き出しを順に開けて探したが、何も見つからなかった。彼女は背筋を伸ばし、腕を組んで書斎全体を見回した。探すべき場所は探した。だが離婚協議書の影も形もない。会社に持っていったのだろうか?その可能性がなくはない。離婚となれば、考えないといけないことが多い。会社の法務部に回して精査させるのも道理だ。となれば、離婚はもう間近に迫っている。三年前、希望に胸をふくらませて嫁いできたこの家が、まさかこんな寂しい結末を迎えるとは思いもしなかった。喉の奥にかすかな苦味が広がった。だが彼女は口元を引き上げた。解放感に、ごく淡い寂寥が混じり合い、冷え切ったお茶のように苦いのに清らかだった。彼女は書斎を元の状態に戻し、密室で絵を整理してスーツケースに詰め、別の箱には画材や絵具を詰め込んだ。清が忙しくて気付かない隙に、それらをガレージへ運び込み、車に積んでマンションへ戻った。夜の11時、峯はまだ起きていて、リビングで仕事をしていた。彼は海運局との共同プロジェクトを任され、毎日休む暇もなく走り回っていたが、普段の気楽そうな態度のせいで、真面目に働いていることはなかなか伝わらない。「戻ったのか?」峯は扉の開く音に気付き、顔を上げもせず航路図をパソコンに取り込み、重要な航路をいくつかマークした。「台所にお粥が温めてある。自分でよそえ」「もう食べた」美穂はスーツケースを床にドンと置き、ゆっくり手首を揉んだ。そこでようやく峯が資料の山から顔を上げ、怪訝そうに彼女と荷物を見比べた。「どこで食べたんだ?その荷物は何だ?」知り合いに頼んで源朔の宿泊しているホテルに荷物を送ってもらった後、彼女は峯に今日の会食の様子を簡単に説明した。さらに、志村家が安里を気に入っていることにも触れ、「もうすぐいい話になるだろう」と言った。「柳本安里?」峯は膝を曲げ、肘をそこに投げ出すように置いて、だらしなく座った。「柳本家が最近見つけた双子だろ?どうして京市に来てる?」彼の言葉があまりに詳しいので、美穂は眉をわずかに上げた。「知り合い?」「有名人だぞ」峯は鼻で笑った。「あの柚月と縁談してる柳本家だ。去年の暮れに外から私生児を二人引き取った。悠生より年上らしい。実母は年明け
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