その頃、基地の総モニタリングセンター。景凪が渡に駆け寄り抱きつく姿を見て、悠斗は喉までせり上がっていた心臓がようやく胸の中へと収まるのを感じた。彼は椅子にどさりと尻を落とし、長く息を吐き出す。――助かった。穂坂さんがいてくれて、本当によかった。自分が少し目を離した隙に、あの方は何を仕出かしてくれるのか。あろうことか、国家プロジェクトの基地で、副大統領の目の前で乱闘騒ぎを起こすところだった。「影山さん」背後から、上質なスーツを着こなした、ただならぬ雰囲気の中年男性が声をかけた。悠斗は弾かれたように立ち上がる。「明石先生」現れたのは、政府高官の明石仲衛(あかし なかえい)。副大統領の側近中の側近であり、彼が現れるということは、副大統領の意思そのものを意味していた。「副大統領閣下が、黒瀬さんのご様子はどうかと。お手洗いにしては、少々長すぎではないかとご心配だ」明石の物腰は丁寧で、非の打ち所がない。だが、その言葉に悠斗は背筋が凍るのを感じた。明らかに、渡が長く席を外していることへの不快感の表れだ。悠斗は表情一つ変えずに答えた。「黒瀬社長は、少々お腹の具合が優れないようでして。私が様子を見て参りますので、すぐにお戻りになるかと」……地下駐車場。渡は、己の腰に固く回された腕に、ふと視線を落とした。黒いスーツの生地に押し付けられた華奢な腕は、まるでそこにミルクをこぼしたかのように、白く細い。その白さが、喉の奥からせり上がってきた乾いた渇望を、いや増しに掻き立てる。だというのに、血を求めて荒れ狂っていたはずの獣は、不思議なほど静かにその牙を収めていた。ずいぶん昔から、知っていた。穂坂景凪には、こういう摩訶不思議な力があるのだと。もし自分が狂人なのだとすれば、彼女は、その俺を繋ぎとめる唯一の鎖だ。その光景はもちろん、深雲の目にも焼き付いていた。渡に必死にしがみつく景凪の姿が、彼の心の奥底をちりちりと焦がし、疼かせる。「社長!」背後から、姿月が悲鳴に近い声で促した。「早くっ、行きましょう!」渡が動きを止めたのと同時に、ボディガードたちの進撃も止まっている。今を逃せば、二度と逃げられなくなる。姿月は深雲の腕を引いて、転がるように車に乗り込み、アクセルを強く踏み込んだ。深雲はバックミラーに目をやった。渡の大
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