All Chapters of 離婚したら元旦那がストーカー化しました: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話

蓮子は一日中郁梨に付き添っていた。郁梨は静かにしていて、愚痴ひとつこぼさず、泣きわめくこともなかった。そんな姿が、かえって切なかった。「郁ちゃん、あなたが辛い思いをしたのはわかっている。承平は私が叱っておいたから、承平はもう二度とそんなことはしないわ。だから安心して」二度としない?郁梨こそが二度と期待もできず、二度と望みも持てない人だ。郁梨は微笑みながら返した。「お義母様、もう時間も遅いので、先にお帰りなさってください。私はもう大丈夫です」郁梨は病床にもたれかかり、その顔色は血の気を失ってひどく青白かった。まるで、ひと吹きの風で倒れてしまいそうなほど、弱々しかった。「こんな状態なのに安心して帰れないわよ。承平が来るまで待っているわ」郁梨は軽く頷き、心配そうに尋ねた。「お義母様、私が入院したことをお祖母様は知っていますか?」「心配しないで、お母さんには内緒にしているわ」「よかったです」郁梨は安堵の息をついた。蓮子はさらに胸が痛んだ。「あなたはいつも他人のことばかり考えて、自分がつらくても何も言わずに飲み込んでばっかり。泣く子にしかアメはもらえないってこと、知っているでしょ?」郁梨は口元をわずかに引きつらせ、胸の奥に湧き上がる痛みを必死に押し殺した。郁梨はその道理を痛いほどわかっていた。でも、泣く子もその子を心配してくれる人の前で泣かなければ意味がない。承平にとっての郁梨は、まるで一本の草のように、取るに足らない存在だった。だから、何も言わない方がましだった。——承平は18時に病院に着いた。蓮子は承平に郁梨のお世話をしっかりするよう言い残し、急ぎ足で帰って行った。隆浩は承平と一緒について来て、承平と郁梨の夕食をこれから買って来ようとした矢先に、承平の携帯がタイミング悪く鳴り出した。承平は郁梨を避けもせず、直接電話に出た。「清香」その名前を聞いて、郁梨は承平をチラッと見たが、すぐに顔を背け、窓の外に視線を変えた。郁梨の顔には余計な感情はなく、まるで清香と自分の夫がどんな関係にあるのか知らないかのように平静を保っていた。隆浩はその場を見て、心の中で再びつぶやいた。うちの折原社長は本当に人間じゃない!電話の向こうからは、清香の優しい声が聞こえた。「承くん、今どこにいるの?邪魔してないよね?
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第12話

これは清香が帰国後の最初の仕事で、清香にとって何よりも重要なことだった。承平は郁梨の方を向いた。郁梨は窓の外の景色に集中しており、その場にいる人々はまるで自分とは関係ないかのようだった。「承くん、私のことは大丈夫だから心配しないで。後でタイミングを見計らって地下の駐車場から直接抜けれるようにする」承平の視線はまだ郁梨に留まっていた。郁梨は確かにまともな一人の人間なのに、今この瞬間、承平には郁梨がもう壊れてしまったように感じられた。清香は承平の返事が聞こえず、悲しくなったのか、声が少し震えていた。「承くん、じゃあ切るね」承平が何か言う前に、清香は電話を切った。隆浩が隙を見て言った。「折原社長、お二人分の夕食を買ってきますね」承平は無意識に頷き、清香を助けに行く様子は見られなかった。郁梨はようやく振り返り、目を丸くした。承平は本当に残ったのか?清香を選ばなかったのか?——隆浩はすぐに夕食を買って戻っきた。隆浩はとても気が利く人で、承平にはお弁当を、郁梨にはお粥と三品のあっさりしたおかずを用意し、郁梨の病床にある小さなテーブルに一つずつ並べた。「折原社長、お食事を用意いたしました」承平は返事をし腰を上げた瞬間、また電話がかかってきた。「清香、無事出られたか?」「社長、清香が怪我をしてしまいました。地下の駐車場から抜けようとしたのですが、そこにも記者が大勢いて、清香が姿を見せるとすぐに囲まれてしまいました」承平は清香が怪我をしたと聞き、声を荒げた。「清香の状態は?」「清香は足首を捻挫して、ひどく腫れています」承平は何も言わず、無意識に郁梨の方を向いた。郁梨もちょうど承平を見ていた。「行きたければ行けばいい。私を見てもしょうがないでしょ」郁梨はずっと承平を無視していたが、ようやく口を開いたかと思えば、それは引き止めの言葉ではなかった。郁梨は承平を引き留めるつもりはなかった。そんなことをしても意味がない。承平は郁梨の一言で残ったりはしないし、かといって清香を放っておくこともできないから。郁梨は表情一つ変えずにいたのに、なぜか見ている人の胸を締め付けるような気持ちにさせた。承平の重たい視線が、しばし郁梨に注がれた。それでも、承平はジャケットを手に取った。清香の方がより危険な状況
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第13話

清香はすでに自分のスイートルームに戻っており、承平が到着した時、俊明は番組スタッフと電話中だった。「大変申し訳ありません、あと1時間で必ずスタジオに到着します。はいはいわかりました、後でみなさんに夜食をご馳走しますから」清香はソファに座っていた。足首は確かに腫れてはいたが、俊明が言うほどひどくはなかった。清香は足首を揉みながら、まるで悔しさと自責の念が入り混じっているかのように、不自然に笑ってみせた。「来なくていいって言ったのに、俊明ったら、どうやっても止められなかったわ」俊明は電話を切り、興奮気味に承平に挨拶した。「折原社長、よくぞいらっしゃいました。外は記者でごった返しており、清香さんは帰国したばかりなので、ボディーガードもアシスタントもまだ手配できておらず、この度は大変ご迷惑をおかけしました」承平は冷たく俊明に頷き、それから清香の腫れた足首を見た。「それでも行くのか?」清香は軽く頷いた。「ただの軽傷だから大丈夫。それに、私は決して弱虫なんかじゃない。ただ、何度も私のために往復して、あなた大変だったよね」「構わない」承平は構わないと言いながらも眉をひそめていた。清香は目を伏せて自分の足首を揉みながら、心の中で思った。これくらいのかすり傷だと、承平には私が大げさにしているように思われているのかもしれない。「承くん、ごめんなさい、全部私が悪いの。あなたは郁梨さんと一緒にいるはずだったのに、私が邪魔してしまって……郁梨さんは私のことを嫌いになるかしら?」承平を見上げた清香は、まさに哀れで愛おしい姿になっていた。承平はしばらく黙り込んでいたが、ふとまた根気よく清香を慰め始めた。「そんなことはない。余計なことを考えるな。ボディーガードと車はもう準備できているから、いつでも出発できる。ただ足をそのまま放っておくこともできないから、仕事が終わったら必ず診てもらえ」承平の慰めと心遣いもあってか、清香の顔には笑みが浮かんでいた。「うん、分かった。じゃあ行ってくるね」清香はよろめきながら立ち上がり、俊明は急いで支えに行った。「折原社長、では行ってきます。あ、一点だけ、ネットのニュースについてですが……」承平はきっぱりと遮った。「俺がなんとかする」俊明はへつらうように笑った。「折原社長がそうおっしゃってくださるな
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第14話

承平は自分がなぜこんなにも急いでいるのか分からなかった。おそらく自分と郁梨がまだ正式に離婚していないからだろう。——承平が出て行った時の病室の様子は、そのまま承平が戻ってきた時と変わっていなかった。郁梨は病床にもたれかかり、目の前の小さなテーブルに置かれたご飯には一口も手をつけていなかった。まるですべてが自分とは無関係だと言わんばかりに、郁梨は首を傾けて窓の外の夜景を見つめていた。承平がドアを開けて入ってきても、郁梨は全く反応を示さなかった。この人がいてもいなくても、郁梨にとって何の意味があるというのか?承平の身体はここにあっても、心は遠く離れていた。それが郁梨を救いようのない愚か者のように際立たせていた。承平はジャケットを脱いで椅子に置いた。「どうしてご飯を食べていないんだ?」郁梨は眉一つ動かさず、そのままじっとしていた。郁梨が無言で自分を無視しているのを見て、承平は顔を曇らせ、郁梨の視線を遮った。「郁梨、何グズグズしてるんだ!約束通り戻ってきたじゃないか!」郁梨は青白い顔で、皮肉混じりに口元をゆがめて言った。「グズグズ?承平、私たちはまだ正式に離婚していないわ。あなたの妻が病院で寝込んでいるというのに、清香はあなたが私の世話で病院にいることを知っていながら、あの手この手であなたを呼び出した。一体誰がグズグズしてるの?」「清香を責めているのか?」承平は低い声で尋ねた。郁梨は逆に聞き返した。「私が清香を責めることの何がいけないの?例え私たちが契約結婚だとしても、正式に婚姻届を出して認められた法的な夫婦よ。清香が勝手に私たちの間に割り込んで、私の夫を奪おうとしているのに、あなたはまだ私が清香に笑顔で接することを期待しているの?」「清香には特別な事情があったんだ」「あなたの目には、清香のすることは全て正しく映るのね。でも私の目には、清香はただの不倫女で、することなすこと全て間違っているわ!」「郁梨、調子に乗るな!」「調子に乗っているのはあなたじゃないの?私はもう離婚協議書にサインしたわ。手続きが済んでから、清香とそのくだらない曖昧な関係を楽しめばいいじゃん?」「何が言いたいんだ!」「浮気されたままの生活はしたくないという意味よ」「郁梨、そんな口の利き方をしやがって、随分と図々しくなったな
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第15話

郁梨が当時どれほど惨めだったか、承平は容易に想像ができた。昏睡状態なのに誰も看病してあげず、病院で一人で目を覚まし、転んでも誰も助けてくれなかった。まるで見捨てられた子猫や子犬のようだった。承平が知らなかったのは、現実は承平の想像以上に残酷だったということだ。郁梨はその時自力で起き上がれず、ちょうど回診中だった医師や看護師に助け起こされたのだ。郁梨の惨めな様子は、外部の人間たちに全て見られてしまっていた。「郁梨、俺は……知らなかったんだ」承平は自分が出かけた後、郁梨がこんな目に遭うとは思わなかった。郁梨が苦しいと訴えた時、本当に苦しんでいたことも知らなかった。承平が油断した隙に、郁梨は承平の手を振りほどいた。承平は空になった手を見つめ、何か大切なものを失ったような感覚に襲われた。「今更そんなことを言って何の意味があるの?あなたとはもうケンカしたくない。先に寝るわ」郁梨の目元は少し赤くなっていた。郁梨は意地を張って、こんな自分の姿を彼に見せたくなかった。だから思いきって体を翻し、承平に背を向けて横になった。承平の手はまだ固まったままで、承平は凍りつくようにその場に立ち尽くしていた。——郁梨は昨夜遅くまで起きていたため、目が覚めた時には既に承平は出かけていた。なぜか分からないが、今日は先生や看護師たちの視線がどこか変だと感じたが、具体的にどう違うのかはうまく説明できなかった。その時、数人の看護師が集まってひそひそ話をし始めた。「あの人だよね?間違いないよね?」「うんうん間違いない、あの人よ!」「うわ、ヤバすぎでしょ!あの人が中泉清香の彼氏なの?でもあの人36番ベッドの旦那さんのはずだよ!」「え、まだ分からないの?不倫ってことよ!」「つまり、中泉清香は愛人ってこと?」「道理で奥さんに冷たいわけだ。最低な男ね!」「36番ベッドの方があまりにも可哀想ね……お金持ちと結婚しても何もいいことないわ」「本当にお気の毒だわ」「ねぇ見て、あそこにいるの誰?もしかしてあれが中泉清香じゃないの!」その一言に反応し、全員が思わずそちらに目を向けた。少し離れた場所で、マスクとサングラスを着けた女性が車椅子に座っており、その後ろには同じような格好をした男性が車椅子を押していた。ちょうどニュースで取り上げら
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第16話

それって、郁梨は怒らないタイプだって言いたいのだろうか?それとも承平が何気なく言ったその言葉で、清香は郁梨が何も言い返してこない、従順な人間だとでも思ってるのか?正直に言うと、郁梨は清香に失望したのと同時に、承平に対しても少し見下すようになった。承平が好きになる女性は、優雅で上品な良家の令嬢か、華やかと情熱さを兼ね備えたセクシーな女神タイプだろうと郁梨は思っていた。しかし、蓋を開けてみたら、清香はただの見掛け倒しの、気取ってばかりの清純ぶった腹黒女なのだ。では、承平は清香のどこが好きなのだろう?郁梨を理解できなかった。ここまで言ってもなぜ郁梨は何も反応を示さないのかと困惑していた。清香の前でわざと謎めいた態度を取っているのか?清香は後ろにいる俊明と目を合わせた。俊明は咳払いをし、清香に代わって説得を続けた。「長谷川さん、あなたは映画学院を卒業され、池上義明(いけがみ よしあき)監督の作品にも出演されたとお聞きました。この3年間、あなたが折原社長のために多くの犠牲を払われたことに対し、清香は心から償いたいと思っております。あなたと折原社長が離婚された後、仕事の保障もなくなるでしょうから、もし芸能界に復帰されるご意向があれば、喜んでお手伝いさせて頂きます。ちょうどうちでは、現在ある大型作品を抱えており、助演女優としてあなたを推薦させていただくことも可能です」郁梨はあきれ笑いを漏らした。まさか清香は、今回の配役を差し出して、折原グループの社長夫人の座を手に入れようっていうわけ?あまりにも器が小さすぎるわ!郁梨が不可解な笑みを浮かべたのを見て、俊明と清香はますます混乱した。この女、一体何を企んでいるんだ?それとももっと多くを要求しているのか?清香は心の中で軽蔑をしながらも、表情は優しい笑顔を保っていた。「長谷川さん、私はあなたに対して悪意はなく、本当に償いたいのです。今回の配役に加えて、2千万円も差し上げます。ただ、あなたが承くんと離婚することを、これ以上遅らせる訳にはいきません」「長谷川さん、この通りです、これ以上は……」「折原夫人と呼んでください」郁梨はゆったりとした声をしていて、まるで清香と俊明が郁梨にとってただ騒ぎ立てているピエロのようにすぎず、郁梨の気分を左右するほどの存在ではなかった。郁
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第17話

蓮子が来ると知り、清香は適当に言い訳をし、みすぼらしく逃げるように去っていった。清香が去ると、郁梨は自嘲した。自分はただ清香の前で強がっただけだ。承平は結局自分と離婚するつもりで、清香はこの恋の駆け引きの勝者なのだ。承平の心は清香の方を向いている。郁梨はとっくに負けていた。——清香が去って間もなく、看護師が生理食塩水を交換しに来た。郁梨は看護師が視線を泳がせ、時々こっそり自分を見る様子に、先ほど清香が言ったことや、今日見た人々の奇妙な視線を思い出した。「看護師さん、手元に今携帯がないので、お借りすることはできますでしょうか?」郁梨はニュースを見るつもりだろうか?看護師は心配した。今SNSでは清香と承平のスキャンダルで持ちっきりだ。病気の身である郁梨はそれに耐えられるだろうか?だが看護師はまた考えた。愛人の清香がわざわざ訪ねてきたのだから、郁梨も既に知っているに違いない。「わかりました」看護師は携帯を郁梨に渡した。郁梨は礼を言い、SNSを開いた。探すまでもなく、トレンド1位には清香の恋愛スキャンダルが載っていた。郁梨がニュースをタップすると、いくつかの写真が出てきた。一枚目は清香が帰国した日、空港で大勢のボディーガードを連れた謎の男性が出迎える様子をメディアが捉えた写真で、黒いファントムのナンバープレートも拡大されていた。二枚目と三枚目は清香が酔っ払い、スーツ姿でスリッパを履いた男性にホテルに抱き支えられていた様子。一枚は承平の横顔、もう一枚には二人の後ろ姿が映っていた。四枚目と五枚目は承平の黒いファントムが折原グループの自社ビルの前に停まり、承平が降りてくる場面だ。同様にナンバープレートも拡大されていた。六枚目は承平の正面写真。高級スーツに身を包み、オフィスチェアに座る姿で、昨年経済誌の表紙を飾った時のものだった。これら全ての写真は、清香の帰国日に折原グループのトップである承平が自ら出迎え、その後ホテルで一夜を共にしたことを証拠づけており、二人は恋愛関係にあることを示しているのだ!これはもう、言い訳の余地もないのだ!郁梨は深く息を吸い込み、心に渦巻く怒りを抑え込んだ。看護師を見上げたときには、すでに平常心を取り戻していた。「家族に電話をかけたいのですが、いいですか?」「もちろんで
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第18話

——郁梨は承平の祖母がどうなっているのか分からなかった。蓮子は今のところ郁梨と話す余裕などないだろう。郁梨はすぐに電話を切った。「看護師さん、点滴を外してください。退院します」「退院ですか?」看護師が頭を縦に振るはずがない。「だめですよ、まだ点滴は終わっておりません!」「急ぎの用事があるんです!」郁梨は看護師には退院を許可する権限がないことを知っていた。あまりの焦りに、郁梨点滴ボトルを提げたまま田所先生を探しに行った。田所先生も最初は許可しなかったが、ネットのニュースを思い出し、郁梨が笑いものになるのを恐れているのだと憐れに思い、サインをして許可した。郁梨は一人で退院手続きを済ませ、一刻も早く入院部の入り口でタクシーを拾い、折原家の実家のお屋敷に向かった。——その頃、折原グループでは。承平のオフィスは異様に重苦しい空気に包まれていた。「広報部には役立たずしかいないのか?こんな小さな問題も処理できないばかりか、かえって事態をここまで悪化させやがって!」承平はネットのニュースを見て激怒し、タブレットを床に叩きつけた。隆浩が床からタブレットを拾い上げた。「折原社長、この件何かがおかしいです」承平は隆浩を見た。「どこがおかしいんだ?」「折原社長、昨夜私はすぐに広報部に連絡し、この件を処理するよう指示しました。通常なら、ニュースの注目度が下がらなくても、今日の正午までには確実に事態を抑えられるはずです。ご覧の通り、元々載っていた折原社長と中泉さんに関するニュースは既に削除されています。現在ネットに出回っているのは今朝出たばかりのニュースで、しかも折原社長の実名まで暴かれています」承平は眉をひそめ、目を細めた。「折原社長、この状況に考えられるのは二つの可能性しかございません」「君は、清香が情報を流したと言いたいのか?」隆浩が指摘した二つの可能性は、承平にも理解できた。当事者が意図的に情報を流したか、或いは商売敵が承平を陥れようとしているかのどちらかだ。後者についてはあまり考える必要はない。承平の結婚を知る者はほとんどおらず、商売的から見ればまだ独身だ。恋愛スキャンダルを暴かれても、どれほどの影響があるというのか?折原グループに影響を与えられるのはスキャンダルだ。恋愛はスキャンダルではない、不倫こ
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第19話

承平が折原家の実家のお屋敷に戻った時、郁梨はすでに到着していた。郁梨は承平の祖母が寝ているベッドのそばに座り、承平の祖母は郁梨の手を強く握りしめ、ぶつぶつと何かを話していた。承平の両親もそばでなだめていた。承平の到着が、部屋の和やかな雰囲気を破った。栄徳は大股で前に進み出て、承平を指さし怒鳴りつけた。「お前は私が言ったことは右から左ってわけか?私はお前になんて言った?お前は私になんて言った?今やお前と清香のことがニュースになり、メディアにはお前たち二人が一緒にホテルに入るところまで撮られている。どう説明するつもりだ!」承平は父親の怒りを無視し、じっと郁梨を見つめていた。「病院で静養せず、なんでここに来た?」承平の声には、郁梨に対する心配と疑念が入り混じっていた。もしかして郁梨はネットのニュースを見て、病気なんてそっちのけで折原家の実家のお屋敷まで来て、一から十まで説明したから承平の祖母が倒れたのか?郁梨が説明するまでもなく、蓮子が身を乗り出した。普段は温厚な蓮子も、息子に対しては容赦なく、手を上げて承平の腕を殴りつけた。「郁ちゃんによくそんな態度を取れたわね?郁ちゃんはおばあちゃんがあなたのせいで倒れたのを知り、すぐに病院から駆けつけ、ひたすらあなたのことを弁護していたのに、あんた人としての良心は捨てたの?どうして私はこんなろくでなしを産んだんだ!」栄徳は険しい表情で詰め寄った。「言え、お前と清香はいったいどういう関係なんだ?浮気をしたのか!」承平は郁梨を誤解していたことに気づき、表情がややこわばった。「俺は郁梨とまだ離婚していない。彼女を裏切るようなことはしない」郁梨の胸が痛んだ。承平が言ったことの裏を返せば、離婚後は分からない、ということだろうか?「どうだ?郁梨と離婚して、清香と結婚したいのか?承平、よく聞け、あの女に一生うちの敷居をまたがせないからな!」栄徳は清香を心底嫌っており、歯を食いしばるように言い放った。承平は無言で顔を曇らせ、何も言わなかった。蓮子には理解できなかった。承平は普段は聡明なのに、どうして恋愛のことになるとこんなに愚かになるのか?「承平、お母さんから一言だけ言わせてもらうわ。大切な人や物事を失ってから初めて後悔するようではもう遅いのよ」離婚の話を聞いた承平の祖母は急に
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第20話

「承平、私たちいつ離婚の手続きをしにいくの?」承平は眉をひそめた。「言っただろ、しばらくは離婚しないって」「しばらくって何よ?承平、私を何だと思ってるの?私を呼べば来て追い払えば消えるようなおもちゃか何かだと思ってるの?離婚協議書にはもうサインしたわ、絶対に離婚してやる!」郁梨の突然の強気な態度に、承平はとても違和感を覚えた。「そんなに急いで俺と離婚したいのか?」郁梨は呆然と承平を見つめた。承平のこの表情は一体なんなんだ?まるで妻に浮気され、冷たく捨てられて恨みを抱く夫のような?「離婚したいって言い出したのはあなたでしょ?」その通り!自分が言い出したんだ!でも自分の祖母は今は離婚させないって言ってた。自分はもうしばらく離婚しないと決めたのに、郁梨の方が先に言い出したのだ!承平はムカついていた。すごく自分がイライラしていることを自覚していた。「離婚の件は、じっくり考えよう」「どうして?お祖母様のためなら心配いらないわ、調子が良くなったら私から話すから」郁梨の確信に満ちた様子を見て、承平の心は言いようのない焦燥感に襲われた。「おばあちゃんだけじゃない。両親の態度も見ただろう。今離婚したら、両親は絶対に認めない。それに、おばあちゃんに話したってショックを受けないと保証できるのか?もしおばあちゃんに何かあったら、お前に責任が取れるのか?」「承平、どうして私をいじめるの?」承平の祖母は承平にとっての弱みであり、同時に郁梨の弱みでもあった。承平は自分の祖母の健康を人質に取って郁梨を追い詰めた。その計算は見事なほど的確だった。承平は郁梨が祖母のために必ず妥協するだろうと、読み切っていたのだ。「どうしていじめてるって言うんだ?折原グループの社長夫人として、不満があるのか?」「社長夫人?よく夫人って呼べるわね?折原グループで私を知っている人が何人いるっていうのよ?承平、あなたは自分の家族のために私に妻の役を続けさせといて、あなたが他の女とホテルに行ったり、ニュースでラブラブアピールするのを私に見せつけるなんて、いじめ以外にありえるわけ?あなたに私をこんなふうに扱う権利があるの?」郁梨の声は冷静だったが、彼女の口から出た言葉は、共感を呼び起こした。承平の心も、なぜか苦しくなった。「郁梨、どうすればお
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