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All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 11 - Chapter 20

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11.社長と秘密の始まり⑥

そしてその女性が待っているという個室の前へ到着。「悪い。待たせた」「もう神城さんおそ~い」席に着いている女性に声をかける社長。「って、え……誰? その子」待ちくたびれていたその女性が猫なで声で話したかと思ったら、そばにいるあたしの存在にすぐに気付き、わかりやすくテンションが下がった声で呟く。「あぁ……えっと……彼女」「……は?」社長がバツ悪くとりあえず彼女の存在だと伝えるも、当然その女性は意味がわからず、すでにイラついてる様子。「ごめんなさい。慧さんが勘違いさせちゃったみたいで」だけど、あたしは気にせずその女性に声をかける。「は? なんのこと? 彼女ってどういうこと?」「慧さん。あたしと婚約してるんです」「は??」「もしかして……そのこと、聞いてなかったですか?」「そんなの聞いてないわよ! 慧さんあたしだけ好きだって結婚しようってそう言ったのよ!」「あぁ……またですか」「またって何!?」「あたしの存在もやっぱり隠してたんですね~」「知らないわよそんなの」「慧さん、酔うとそういうのすぐ約束しちゃうみたいで。実は、あたしと婚約してるくせに、束縛されるのが嫌みたいで。浮気癖があるっていうか、つい魔が差して身体の関係とかそういう約束しちゃうこと今まで何回もあるんですよね。でも結局その度に本気じゃないからって、あたしの元に戻ってくるんです。結婚したいのはお前だけだからって何度もその度言ってくるんで、ついあたしも許しちゃうんですよね」「は……? 何それ……」「きっとあなたにも慧さん同じことしたってことですよね?」「そう……よ……」「慧さんお酒飲むと、ホントすぐそうやってたくさんの女性その気にさせちゃうんですよね~。まぁ正直あたしも愛想尽かしてるとこもあるんですけど、実際こういうことよくあるし、慧さん自分で何もしないから結局あたしがこうやって清算して回ってるんです。あたしはもう慣れてるし情みたいなのもあるんで、こうやって受け入れてますけど。もしあなたがそういうの結婚しても繰り返されてもよかったら慧さん譲りますけど……どうします?」「どう……って。そんなの……冗談じゃないわよ」「ですよね~。まぁ結局慧さん誰とそういうことしても、結局あたしのとこ戻ってくるんでどうしようもないと思います」「もうなんなのっ! もういいわよ! 彼とは
last updateLast Updated : 2025-08-09
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12.社長といきなりの二人っきり①

「ってか、お前ここでメシ食おうと思ってたんだよな?」「はい」「じゃあその礼として奢ってやるよ。好きなん食え」「えっ!? いいんですか!?」「あぁ」「やった! めちゃ嬉しい!」「そんなにかよ(笑)」「だってこのお店とりあえず来てみたモノの、メニュー見たら結構高そうな料理多かったんで、どうしようかなぁって実は思ってました(笑)」そう言いつつ、さすがに社長と二人でディナータイムという予想もしなかった現実になり、急に緊張し始めてきたような気がする。元いた女性が座る予定だった席に自分が座り、社長と向かい合ってメニューを見てる姿が、違和感でしかない。そして好きなの注文していいと言われたけど、さすがに社長と一緒で何選んでいいかがわからない……。自分だけならちょっとお高めだけどパスタくらいにしようかな~と思ってたからな。「あの。このお店で社長がおススメの料理食べてみたいです」「オレのおススメ? いいんだぞ。好きなの選んだら」「はい。でもなんかいろいろありすぎて決められなくて」「そっ。なら適当に選ぶわ」「はい」「好き嫌いはある?」「ないです。なんでも食べます」「了解」そして店員さんを呼び、社長が適当にいくつかの料理を注文してくれる。なんか変な感じ。 あたし、なんで社長とこんな風に向き合って座ってるんだろ。 今までほとんど会話したこともなかったのに。 今は二人きりで社長と食事だなんて。 しかも個室とかなんかすごい特別感あるな。 基本このお店オープンフロアだし。 なんか流れとはいえ、改めて冷静になったらホント緊張でしかない状況だし、ホント自分場違いすぎるな。 しかも元々は他の女性とのデートするためのこの場所だった訳だし、あたしがここにいるのがなんか申し訳なく感じる。「この前注文した新作で出してくれたやつ。あれもうメニューに載ってんの?」「はい。少し前からメニューに加わってます。こちらはちゃんと社長にアドバイス頂いた形ですでに提供しておりまして、お客様にも好評でございます」「じゃあそれも」店員さんと慣れた口調で注文していく社長。やっぱさすがだな。 注文の仕方もスマートで当然慣れてるし店員さんと会話している姿がもう大人の雰囲気を醸し出している。 会話的にきっと社長このお店何回も来てるんだろうな。「お前。飲み物は? 酒飲
last updateLast Updated : 2025-08-11
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13.社長といきなりの二人っきり②

「さっき。勉強するため、いろいろ店回ってるって言ってたけど」 すると、社長が注文し終わって話しかけてくれる。「いつも一人で行ってるのか?」「基本一人が多いです。でも友人と普通に美味しい物食べに行きたいってなった時にも行ったりしてます」 「そう。でも中には高い店もあったろ。そういうのはどうしてるんだ?」 「あぁ。それは自分の懐事情にもよるんですが、お金が寂しい時は安めの物頼んだり、それか何か頑張った時にご褒美として、たまにちょっと高い物を頼むことはあります。でも手出せないようなお店も稀にあるので、それは保留したままです」 「へ~そんな感じなんだ」 「社長はこうやって何回もお店に足運ばれたりしてるんですか?」「そうだな。やっぱり自信持って全部手掛けてる店だから、最初に関わって終わりっていうんじゃなくて、その先ももっと大きくなっていく姿見ていきたいんだよね」 「へ~」 「だから自分がプライベートで使う店も出来るだけ自分がプロデュースした店に行くようにしてる」 「そうなんですね」 「正直仕事で関わってきた時はさ。当然そういう目でしか見れてないから改めて客として時間を置いてまたその店に行った時、どういう状況になっているのか客としてどう感じるのかも知っておきたいんだよね」「なるほど」「唯一オレはどちら側にも立てる人間だし、そういう冷静に判断出来て意見が言えるのもオレの役目かなって思ってさ」「それってうちの会社の他の人もしてることなんですか?」 「いや、さすがにうちで働いてる皆にはそこまでは言ってないよ。皆には新たに来た仕事や今関わってる仕事をいいモノにしてもらいたいし」 「でも、大きい仕事は社長が同じように直接進めてる所もありますよね」「そうだな。自分的にもこの仕事が好きだからさ。出来るだけ細かい部分も自分も関われることは直接関わっていきたいって思ってる」 「なのに、そんなアフターフォローまでされてるんですね」「まぁ、好きだからな。オレが手掛けた店がどんどん大きくなっていく姿見るのが。自分のした仕事が間違ってなかったんだなって実感出来るし、もっといいプロデュースしたいって更にやる気出るっていうかさ」「全然知らなかったてず。社長がそんな風に考えてるとか。あたしも今まで社長と関わること少なかったし、そういうこと知る機会も当然なかったって
last updateLast Updated : 2025-08-14
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14.社長といきなりの二人っきり③

「とりあえず、そのワイン飲んでみな」「あっ、はい」いつの間にか持ってきてもらっていたワインを勧める社長。「いただきます」「案外それ飲みやすいと思うよ」「ホントだ。すごい飲みやすい」「だろ?そのワインだと飲みやすくてオレも結構飲んじゃうんだよね」「え、だから飲み過ぎて面倒なことになったんですか?」「あぁ~確かに(笑) そういえばあん時飲んだのもこのワインだったかも(笑)」「ほら」「てか、そういうのプロデュースする者とすれば、もっと酒強い方が仕事やりやすんだけどな。そこだけがちょっ悔しいとこかも」「そっか。そういうことにもなるんですね」「だから、酒をもっと特化する店とかそういうの選ぶ時は、柾弥に任せてることも多いんだけどな。あっ、柾弥ってこの前会ったろ。副社長の本村」「はい。もちろん覚えてます。ていうか、本村さんはお酒強いんですか?」「あぁ。あいつはすげー好きで強い。で、仕事的にも同じ立場でオレが出来ない部分とかサポートしてくれてる感じだからな」「なるほど。秘書兼副社長さんですもんね」「秘書ってほどじゃないんだけどな。実質は副社長だし、あいつもオレと違うやり方で動いてくれてるから実際社長も副社長もないんだけど。ただあいつはオレを代表として存在させときたいみたいだからな」「じゃあ表立っては社長だけど、陰で本村さんは支えられてるってことですか」「そうだな。あいつがそういうのはオレにしたいって。あいつも同じくらい動いてるくせにそういうのはこっちに任せたいらしい」「でもそれって、社長が社長として相応しくて頼りがいあるからなんでしょうね」「どうかな。あいつ的には面倒なのは嫌だからって言ってるけど。実際は多分そういうことなんだろうな」「それだけ信頼してるってことなんだろうな。いいですね、二人の関係」「まぁあいつとは長いからな」「いつからの付き合いなんですか?」「小学校からの腐れ縁」「えー!そんなに!? すごっ」「だからお互いなんでも知ってるっていうか。一番心許せる関係っていうか。あいつがいたからこの会社も維持できてるし、そもそもこの会社もあいつがいなきゃ立ち上げようとは思わなかったからな」「そうなんですね。やっぱりお互いすごく必要な存在なんですね」「あぁ。あいつとは食の好みも同じでさ。んでお互い食うことが好きで。暇あったら一
last updateLast Updated : 2025-08-14
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15.ドキドキの理由①

「料理。冷めないうちに食べろよ。これウマいからまずこれから食ってみて」「はい。いただきます」そしてまたいつの間にかテーブルに並んでいた料理を食べ始める。「うん。美味しい!」「だろ。それ、オレのおススメ」そう言って優しく微笑む社長。この人、ホントに食べること好きなんだな。もしかしたら料理の前が一番優しい表情したりするのかも。「というか。社長はこんな風に偶然に会った社員にいつもこんなご馳走したりするんですか?」「はっ!? まさか。んな訳ないだろ」「えっ、違うんですか!?」「当たり前だろ。んなのしたら収拾つかないだろ。そもそも偶然会うこともないし、正直あんだけ人数いてそんな細かく社員も憶えてらんねぇし」「じゃあ、秘書さんとかとはこんな風に行ったりしてるんですか?」「いや。うちの秘書はそういうのはちゃんと仕事とプライベートは分けてるから。それこそ柾弥が秘書っていう肩書置いてるのもそれの指導でもあるし」「どういうことですか?」「基本柾弥は副社長でもあるし、あいつに動いてもらうこともあるから、オレの秘書の仕事ばっかり出来る訳じゃないからな。だから、あいつが細かい管理とか手が回らないことを秘書室の人たちにやってもらってる形になってるんだよね。正直オレは自分で出来ることはやりたいし、柾弥に管理してもらう方が楽な部分もあるけど、そうはいかないから。んで柾弥がその秘書室の室長として指導したりしてるんだけど、オレ的には職場で内々の女と面倒なことになるのは仕事に支障あるしごめんだから、そういう面倒なことにならないように基本そこはあいつにも徹底してもらってる」「そうなんですね。じゃあ秘書さんともそういうことはないんですね……」「まぁたまに秘書室の皆を労って食事に行くことはもちろんあるけど。それは柾弥も室長として一緒にいてくれる時に全員で行くだけだしな。一対一とか、んなのしてたら面倒で仕方ねぇだろ」「なら……。なんで、あたしはこんなことしてくれるんですか……?」普通に考えて、こんなことなかなかありえないことだし。世間ではカリスマ社長とか言われて、それなりに有名人で。しかも、秘書室の人たちは、そういう一対一はないとはいえ、皆ずば抜けて綺麗な人多いみたいだしな。実際そういう人ならまだしも、なんでこんな今まで関わったことない名前も憶えてないような平社員の
last updateLast Updated : 2025-08-14
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16.ドキドキの理由②

「それは……お前が……」一言一言、社長が言葉にしていく度、心臓がなぜだか高鳴る。「お前が……。オレに興味がなさそうだったから」…………え??思ってもないまったく予想してない言葉が返ってきて思わず言葉をなくす。「ん……? え……?」「お前、オレのことタイプじゃないって言ってたろ」「いや、それは……」確かに言った。言ったけど……。「すいません。社長に対してあんな失礼なこと……」「いや。逆に、そうだったから」「どういう、意味、ですか……?」「なんとなくオレそういうのわかんだよね」「わかる、とは?」「下心ありきでオレに近づいて来る女がどういう感じか」「そう……なんですね」「正直そういうの面倒で苦手でさ。オレの肩書だけで近づいてきてんだろうなぁっていうの。女のなんかあざとさっていうの?いかにも気に入られようとする、そんな感じの雰囲気」「あぁ~。なるほど。あたしには無縁のやつです」正直そういうの一番自分はかけ離れてるやつだ。あざとく気に入ってる男性に近づいたりだとか、計算高く接したりとかそういうの一番苦手なやつ。実際自分は外見も性格もそういうタイプでもないし。そういうのはやっぱり自分の容姿に自信がある人が出来ることなんだろうなぁって思う。それとか、いかにも女性らしい雰囲気やあざとい行動で男の人をその気にさせちゃう感じとか。あたしはどっちも当てはまらない。容姿はもちろん一般人の容姿で平均並みだし。性格は男の人に気に入られたくて可愛い素振りとか絶対出来ないタイプ。それで気に入られたいとも思わないし、そもそも自分がそんなんしたくないし。ルイルイも推しという対象だから、そりゃ覚えてもらいたくてファンとしてのアピールとか応援とかそんなんはするけど。だけど、それは彼女になりたいとか女性として気に入ってもらいたいとかそういうのじゃなくて。ただこんなに好きで応援してるんだよっていうのを伝えたいというか知ってほしいというか。だからと言って、外見に気を遣ってないとか、そういうんじゃなくて。そりゃ推しに会う時は、外見も中身も恥ずかしくないファンでいられるように、ファンとして推してもらえててよかったなって、琉偉にそう思ってもらえるように、自分なりにオシャレしてメイクして、その時の一番綺麗な自分になって会いに行く。そして、ライブなどでそん
last updateLast Updated : 2025-08-15
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17.ドキドキの理由③

だけど、好きじゃないあたしだからこそ、この役目を果たせるってことだよね。あたしにその気がないのわかってるから社長もこんな風にいろんな話してくれたりとか、彼女役頼んでも影響ないってことなんだろうし。「でもまぁ社長もその気がないようにしてたとしても、その外見じゃどううしようもないんじゃないですか?」 「どういうことだよ」「いや、だって、そのビジュアルなら、社長がその気にさせなくても、絶対そこらの女の人寄ってくるでしょ」「自分では全然そういう意識ねぇからわかんねぇけど」「自覚ないんですか……」「だって産まれた時からこの顔で自分と付き合ってきてんだぞ。それを人と比べるとかもしたことないし、それで自分がどうとかも別に思わねぇし。っていうか、もっとカッコいい男、山ほどいんだろ」 いやいやいや。 あなた普通に考えてかなり極上のイケメンですから。 まぁ、あたしはタイプではないけど。 こんな人と一緒にいるとか耐えらんないわ。 こんなどこ取っても整った綺麗な顔で出来あがってる人なんて一緒にいても生きた心地しない。どう考えたって自分は釣り合わないし、そんな人とどう接していいかもわかんないもん。実際今は仕事として憧れてる社長として接してるだけだから、そういう無駄な感情持たなくていいけど。 まぁ推しの琉偉も天使かと思うほど美形で可愛くてホントにこの世に存在してるのかよって思うくらいのレベルだけども、それは推しだから。 そういう対象として崇められるから、それは問題なし。 実際琉偉も現実で一緒にいるとか考えられない。 一緒にいたら窒息するわ。 そんな天使と同じ世界で存在しちゃいけないのよ。 天使は天使。 雲の上の存在な訳よ。 推しとファンだから成り立つのよ。こんな風にどれだけ好きでどれだけ崇めても、それはそれで応援の一環なのだから。だけど、この人はそういう対象ではないし、そういう接し方出来る訳じゃないし。 なのに綺麗かどうかとかカッコいいかどうかとかイケメンセンサーは無駄に鍛えてる訳じゃないから、それはビンビンに反応する訳ですよ。 タイプかどうかはまた別の話。絶対イケメンは世界を救う! 世のイケメンは、絶対それをムダにしちゃいけないのだよ。 アイドルになるとか俳優になるとか、それこそこの社長みたいに会社作るとか、とにかくこの世に貢献する
last updateLast Updated : 2025-08-15
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18.ドキドキの理由④

「だからお前みたいな正直オレのこと堂々とタイプじゃないとか言ってる女、初めて会ったから新鮮というか、なんかおもしれぇって思った」「おもしろい……?」「あぁ。実際オレに気に入られたいとかより、金の方に異常に反応してるし(笑)」「いやまぁ、それはねぇ、やっぱり生きてく以上お金は大事じゃないですか……」「そりゃそうだ。金ねぇとなんも出来ないし生きてけねぇしな」「です」 お金ないと大好きな琉偉を推すことも、夢のためのお店巡りの勉強もどれも出来なくなっちゃう。 あたしにとっては今その二つがあることで、今頑張れているんだから。「だからまぁ偶然お前がここに居合わせたの気付いた時、お前ならまた頼んでも大丈夫かなって思った」「なるほど……」「てか、実際思った以上の働きしてくれたし助かった。まぁオレならあれは考えつかないようなやり方だわ(笑)」「お役に立てたなら何よりです……」「実際お前もオレにその気になんねぇだろうし、オレももちろんお前にそんな気さらさらねぇしな。よかったわ。お前に頼んで」社長がそんな言葉を言いながらホッとしたように笑う。あっ……ぶなぁぁ……。やっぱり勘違いだった……。まぁ、そうですよね。そういうことですよね。そりゃあたしが特別な訳ないんだよ。そんな全然知らないあたしなんかに普通以上の感情持つ訳ないに決まってんじゃん。わかってたよ?わかってたはずなのに。なんで、あたしの胸はちょっと傷ついた感じになってるのだろうか……。実際あたしは社長はタイプじゃないし、好きになるなんてありえないけど。それ以上に社長があたしに何か特別な感情を持つとか、そっちはもっとありえない。だけど、社長的に女は面倒だとか言ってる中、あたしにそんな笑顔見せたり、そんなこと言ってくれるなんて、それはそれでその人たちよりかは少し心を許してもらえてると思ってもいいのだろうか。別にあたしを否定されてる訳じゃないし。別に社長にとってもあたしがタイプとかじゃないのは当たり前だし。だけど、あたしの存在をどういう形でも社長に認めてもらえたのが少し嬉しくて。嬉しいのに、少し悲しいような、なんかそんな少し複雑な気持ちになる。
last updateLast Updated : 2025-08-16
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19.ドキドキの理由⑤

「っていうか、そんなあざとい女性の感じわかるくせに、なんで毎回それに引っかかって面倒なことなってるんですか?」うん。そもそもそれわかってんなら普通引っかからないよね? なのになんで酔って口説いて結婚の話までなってんの?「ほとんど仕事関係の流れだからだよ」「仕事関係の人とそんなんなっちゃってんですか?」「オレだってなりたくてなってんじゃねぇよ」「ならなんで」「基本取引先とか新しい顧客とか、どうしてもメシと酒の付き合いは外せねぇんだよ。そこから紹介だとか姉ちゃんいるとこ連れてかれたりすること多いというか。さすがににうちの社員には手出すことは絶対ないけど、酒の付き合いではちょっと気抜いちまうというか」「いや、気抜かないでくださいよ。それでこんな面倒なことなってるんじゃないですか」「完全に酒飲めねぇとかならそういうのも断れるかもなんだけど、なんせオレ中途半端だからな。でも飲めないのは飲めないで、オレの仕事上やっぱ不便というか。実際仕事上、酒飲むことも必要になってくること多いし」「まぁそうでしょうけど……」「実際酒嫌いな訳でもないし、無理して飲んでる訳でもねぇし」「なら。お酒飲まなきゃそういうことにはならないってことですか?」「なんねぇな。基本そこはちゃんとしてるから。正気だと面倒なことにならないように避けられるんだけどな。酒飲むとどうも……」えーっと、なら、解決策はどこに? 確かに仕事上、うちの会社的に飲めないのは影響あるんだろうなとは思う。 お酒出す店とかももちろんプロデュースしてるし基本社長はどの店も絶対自分が一度お店の雰囲気やメニューを実際目にして口にしてチェックするって聞いたことあるし。「仕事上、社長的には他の人には任せられないってことですもんね……」「そういうこと。オレが挟まず話が進んで何かあった時、責任取れないだろ。オレがちゃんと把握してれば逃げ道も解決策も考えられるけど、オレの知らないとこでいろいろ問題があればそれこそ困るし。だからといって、それを関わった社員だけに責任取らせたくもない。だからこそ、うちの会社がこだわってる部分というか大事にしてるそういう部分はずっと守っていきたい」「だからといって、社長だけがいろいろ大変な思いをするのもどうかとは思いますけど……」「いいんだよ。オレが自分でなんとか出来ることなら、
last updateLast Updated : 2025-08-17
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20.ドキドキの理由⑥

なんだろう……。 この人器用に見えて実は芯の部分は不器用だったりするのかも……。 きっと他人にもそういうの見せないだろうし知られたくもないんだろうな。 だけどそういうのどこかで誰かに頼らないと壊れちゃうような気がする……。 やっぱりいろんな意味でこの人放っておけない人なのかもなんて、あたしが思っても意味がなくてどうしようもないことだけど。 もう少しこの人要領よく生きられないのかな……。 って、仕事では完璧なこの人に、こんなこと言えない立場だけどさ。なんか社長と話せば話すほど、思ってた人物像と異なってくる。 だからなのだろうか。 なぜか社長ともっといろんな話をしてみたいと思ってしまう。 ホントはこの人はどんな人なのだろうと、ちょっと知りたくなった。って、ただの社員の分際で厚かましい話だよね。 危ない危ない。 たまたま今はこんな状況になっただけで本来こんな風に話出来る人じゃないんだから。でも。 こんなにいろんなこと話したのに明日からはまたこの人とは社長と社員の関係に戻るんだよな。 今までのように、同じ会社にいても、ほとんど会うことないような。 ましてやこんな風に話すことでさえ、きっともう二度とない。 元々尊敬してた社長でその人から仕事に対しての考えとかそんなん直接聞けたのも、きっと普通ではないことだもんな。 そう思えば、貴重な時間だったな。  「もう少しなんか追加で頼む?」「いえ。もうお腹いっぱいです。ありがとうございます」「そっ。ならそろそろ帰るか」「はい」  ほら。こんな貴重な夢みたいな時間はすぐに終わっちゃうんだ。 ホントはもっと会社のこととか仕事のこととか聞きたかったかも。 あのカフェのこととかも聞いてみたかった。 だけど、あれだけ話せたことだけでもすごいことだよね。 またどこかですれ違った時に、あたしのこと覚えてもらえてたらいいな。 そして社長が会計を済ませたのを待って。「ごちそうさまでした。ホントに今日はありがとうございました。貴重なお話と自分では口に出来ないご馳走食べられてホントに感激でした。とても勉強になりました。この恩は一生忘れません」「ハハッ。なんだよ一生の恩って(笑)  どんだけ大袈裟なんだよ(笑)」「いや、それくらいすごいことですから」「まぁまた機会あったら勉強連れてってやる
last updateLast Updated : 2025-08-17
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