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All Chapters of おいしい契約恋愛: Chapter 61 - Chapter 70

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61.社長に伝えたい秘密①

「あの。社長ちょっといいですか?」ある決心をしてあたしはリビングにいる社長に声をかける。「ん? 何?」「ちょっとあたしの部屋に来てもらってもいいですか?」「ん? なんか手伝う?」社長はそう言ってあたしの後について、あたしの部屋へと足を進める。「社長。部屋見ても驚かないでくださいね」「えっ……何? 何があんの?」「あたしの秘密です」「え? 秘密!?」 「社長に伝えておきたいことというか。知っておいてほしいことというか……」「えっ。その秘密、そんな驚くほどってこと?」「う~ん。人によって理解出来ないかもしれないし、受け入れられないかもなんで」「何それ」「だけど。ずっと隠しておけることでもないし、これから一緒に住んでいくとなると、社長にも把握してもらっておいた方がいいと思って」「え、何だよ。何隠してんの。怖いんだけど」「まぁ社長にはある意味理解出来なくて怖いかもですね……」「は? え、全然意味わかんねぇんだけど」「えっと、何見ても大丈夫なように心構えはしておいてください……」「え、ごめん。ちょっと遠慮していい?」「え~ダメです~! ちゃんと見てください~!」「いや、だってなんかこえーもん!」「大丈夫です! 取って食われたりはしませんから」「いや、だから何!?」「あたしの。大切なモノなんで。怖くはないです」「大切なモノ?」「はい。夢叶えることと別に、あともう一つ。自分にとって、あたしがいろいろ頑張れる理由でもあり大切にしているモノです」「……わかった。なら、それ見せて?」「はい」多分こんなこといきなり言い出して、社長的にはまったく意味がわからないとは思うけど。だけど、あたしの思いを汲んで、社長はそう言って、あたしの部屋の前まで一緒に来てくれた。
last updateLast Updated : 2025-09-22
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62.社長に伝えたい秘密②

「どうぞです!」そう言って、勢いよく自分の部屋のドアを開けて、社長に中を見せる。「おわっ!! え! なんだこれ!?」すると想像通りの社長の驚きっぷり。ええ、そうなりますよね。「あたしの愛すべき推しコレクションです」「推し……?」社長が驚いたその理由は、部屋一面に並べたルイルイグッズのコレクション。「はい。あたしの推しの琉偉です。社長に見てほしくて、あたしの持ってきたグッズ全部並べました」そう。もう洗いざらい琉偉を推していることを社長に打ち明けようと決めた。「お姉ちゃんが言ってた琉偉は、この推しのルイルイのことです」「ルイ……ルイ……?」「はい。可愛さが天使級の彼の愛称です。グループで活動してる子で、歌って踊って頑張ってます。たまに舞台とかお芝居もしてます」「あぁ……なるほど。彼がルイくんなんだ」「はい。あたし、母が亡くなった時、ホントにすごく落ち込んで、しばらく立ち直れないくらいだったんです。でもその時、彼のことを知って、彼のファンになって。彼がいてくれたことで、あたしホントに救われたんです。それから頑張って生きていこうと思ったし、毎日楽しくなってたくさん幸せだと感じることが出来たし、ずっと彼が心の支えで生きる希望になりました」「そう……」別にこんな話、社長が聞いたところで何も感じないかもしれないし、どうでもいいことかもしれないけど。でも、なぜか社長には知っていてほしいと思った。「だから。今までずっとファンになってからは彼一筋で。彼を応援出来ることだけでホントに幸せだったから。だから、お姉ちゃんもそんな自分をずっと見てきたから、いきなり社長みたいな彼氏連れてきて、ビックリしたんだと思います……」「そっか。そういうことね……」「琉偉のファンでいることで、ライブとか舞台とかイベントとか現場があったら、あたしは絶対そこに足運んでて。実際彼氏とか作る暇もないというか、特に彼以外に興味もなかったんで、今まで彼氏の存在なんて姉にも伝えたことなかったですし……。だから……。そういう彼氏とかの心配は、残念ながら今までは縁がなかったので必要ないというかですね……」「ん。わかった」「いや、いきなりこんな話されても社長はビックリするだろうし、そんなんどうでもいい話だろうとは思うんですけど……」「でも。お前にとったら大切なモノなんだろ?」
last updateLast Updated : 2025-09-22
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63.社長に伝えたい秘密③

「それで。彼を応援するために、幸せな時間を過ごすために、あたしは現場があれば出来るだけ足を運びたくて……」「現場?」「あっ、彼を観に行くライブとか舞台とかイベントとか。実際会いに行く場所です」「なるほど。そういう言い方するんだ」「はい。それでその現場には、それぞれ一回とかじゃなくて……。ライブやイベントがあれば、あたしは自分のスケジュールが合えば全部行きたい人で。舞台とかも、さすがにお金高いしスケジュールも厳しいんで、全部とはいかないですけど、初日と千秋楽は絶対行きたいですし、まぁ自分の中の必要最低限の回数は行きたいというか」「へ~。そんな感じなんだ」「それぞれの場所で会って一緒に楽しむ友達もいたりして、現場終わってから皆でお茶して、あれがよかったねとかそういうのも話す時間とかも楽しくて」「うん」「で、どの現場も行ける限り地方でもどこにでも飛んで行くし、でも、地方に行く時はちょとした旅行気分にもなって、現地の美味しいモノとかも食べたりとかして心もお腹もいろいろ満たされるというか」「へ~いいじゃん」「……だから、ですね。また彼のそういう現場が始まったら、あたし、それ行くことは優先……したくて」「もしかして。それを伝えたかったってこと?」「あっ、はい……」社長が平然とそう聞いてきたことは、どっちの意味なのか、その表情からはやっぱり読みとれなくて……。「そんなの……お前の好きにしたら?」「……ハハ。そうですよね……。そんなの社長にしたら好きにしろよって話ですよね。すいません。こんなどうでもいい話なんかして……」やっぱりそうか。そうなっちゃうよね。そんなの社長にしたらどうでもいい話だよね……。
last updateLast Updated : 2025-09-22
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64.社長に伝えたい秘密④

「いや、そうじゃなくて。なんかお前勘違いしてない?」「え?」「お前がそれだけ大切にしてきたモノなんだから、別にオレの了承得なくても好きに自由にすればいいってこと」「え……そういう意味ですか?」「今までそれだけ大切な存在で、お前にとって支えだったモノなんだろ?」「はい」「なら。オレのことは気にせず、今まで通り好きにすればいいよ。こっちのことは別に気にしなくていい」「いいんですか……?」「ん? いいって?」「だって。あたしがそうしたら、ご飯とか作れない時もいっぱい出てくるし……」「まぁ、そういう契約だから。そっちが好きな時にしてくれたらいい」ただの契約だとあっさり言われたことが、少し……寂しい。あたしが琉偉に会いに行くから、そうなるだけで、それを社長は了承してるだけなのに。なんで、言葉にされると、少し寂しく感じてしまうんだろう。受け入れてもらえて嬉しいはずなのに……。「そう……ですよね。そういう契約ですし……。っていうか、あたしの勝手な都合でそうなっちゃうってことですしね……。っていうか、そんな時あっても別に社長は困らないか」「う~ん。そういうことじゃなくて。そりゃオレ的にはお前にいろいろしてもらえる方が有難いけど……。でも、オレとの契約があることで、お前の自由奪ったり、好きなこと出来なくなるのはオレ的にも嫌だから」「そんな風に考えてくれてるんですか……?」「オレとの契約で、お前が無理することがあるなら、オレは別にこの契約はなかったことにしてもいいって思ってる」「え……?」それは……嫌だ。琉偉のことを打ち明けることで、社長とのこの契約が終わるかもしれないだなんて、そんなとこまで考えてなかった。ただ今の自分をありのままの自分を、社長に知ってほしかっただけなのに。なのに……どうしよう、これで契約終わっちゃうとかになったら。その言葉で急にそのことが明確になって、ショックを受けてる自分がいる。今になっては、社長との繋がりが一つでも消えることを嫌だと思ってしまっている。「実際お前がそういうことに時間費やしてるって知らなかったから、流れで契約持ち掛けただけだし。でもそれでお前に負担がかかるんなら意味がないっていうか」どんどんそっちの方向に流れていきそうになって、気持ちが焦る。「あっ、違うんです! そうじゃなくて……! でも、
last updateLast Updated : 2025-09-22
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65.社長に伝えたい秘密⑤

「けど。なるほどね。その存在があるから、金が必要だったって訳ね」「はい。あとは夢を叶える為のお店回りと。どちらもお金なくちゃ維持出来ないんで」「なら。そっち側の店回りの方は、オレが手伝ってやらなきゃだよな」「え?」「もしうちが関わってる店で行きたいとこあれば、事前にオレに言って。実際オレが一緒に行けるなら一緒に行くし、オレが行けなければちゃんとオレが話通しとくから。お前の負担は出来るだけないようにしてやる」「えっ、そこまでしてくれるんですか……?」「言ったろ。オレがちゃんと連れてってやるって」社長はこんな時でも、あたしを思って、また優しさをこうやってくれる。「社長。やっぱり優しすぎですよ……」「そうか?」「さすがにここまで甘やかされると勘違いしちゃいますよ……」「勘違いって?」「そんな、なんでもかんでもしてもらっちゃうと、自分は、ちょっと特別なのかなって、勘違いしちゃいそうになります……。 あっ、すいません!そんな厚かましいこと!」あ~。またいらないこと口走った!社長はただ元々優しいだけできっと面倒見いい人なだけなのに。「そうだな……。そうかもしれないな」「え……?」すると、社長が静かにそう呟く。「正直、なんでかお前にはなんでもしてやりたいって思っちゃうんだよな……」「え!?」「なんでだろうな。オレもこんなん初めてだわ。なんかお前はいろいろと予測不能だから、オレも自分でよくわかんねぇんだけど」「あたし、予測不能ですか……?」「あぁ。お前、オレの想像しないことばっかするからな。でもなんかそれが新鮮で悪い気はしないんだよね」「ホント……ですか? 迷惑じゃ……ないですか?」「ん? おもしろいよ。お前といるの」まさかそんな言葉が返ってくるなんて思わなかった。だけど、嬉しい。社長がそんな風に思ってくれてるなんて。「あたしも……社長といるの……楽しいです」ホントは、多分もっといろんな感情が溢れてて、楽しいだなんて一言で表現出来ないほどだけど。でも自分でもまだ、それをどんな言葉に当てはめたら正解なのか、社長に上手く伝わるのかがわからないから、その一言だけを今は伝える。
last updateLast Updated : 2025-09-23
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66.社長に伝えたい秘密⑥

「へ~。前は悪魔で無理だとか言ってたのに(笑)」「うわ~! だからあれは忘れてくださいよ~! あの時はルイルイの可愛さと比べて言ってただけで! 今はまったくそんなこと思ってませんから!」「いいよ別に(笑)」「いや! あれも無理って言ってたのは、ホントは憧れの社長と普通に接するのとか会話するのとかは恐れ多くて無理って意味で……」「今、普通に話してんじゃん」「はい。だから、あたしにしたら今でもなんか現実味がないです。社長とこんな風に普通に話したり、一緒に生活してるとか、もうホント日々信じられないっていうか……」「へ~そんな風に思ってたんだ。全然そんな風には感じなかったけど」「そりゃそうですよ! 出来るだけバレないようにしてましたもん! そうじゃなくてもこんなあたしと一緒にいることなんて、社長にとってメリットもないんですから。出来る限り嫌な気分にさせないように出来るだけ重荷に感じないように、あたし的には努力しているというか……」「なら、やめれば?」えっ……、やっぱりあたしがここまでの気持ち持ったら社長には負担なんだ……。やっぱり言わなきゃよかった。前言撤回したい! 巻き戻したい!「もしかして、その顔。またお前勘違いしてんだろ」「へ!?」「やめればって言ったのは、そういう無駄にオレに対して努力してるってこと」「え、そっち!?」「嫌なんだよ、お前がオレに無意味に気遣うとか。お前はそうやって自分に素直になってる時のがイキイキしてるし、そのことでお前のそういう自由も奪いたくない」「社長……」「なんでも素直に気遣わずいてくれる方が、オレ的にも一緒にいて楽なんだよ。そりゃ社長っていう立場だから実際そうなるのは仕方ねぇけど。でも、せめてそれならここでは、そういうのなくしてくれる方がオレ的にも居心地いいっていうか」「でも、やっぱり社長だし……」「あぁ~。ならそれもやめよっか」「え? どれ?」「その社長ってやつ」「ん??」「ここでも社長って呼んでるからお前社長感覚抜けないんだよな」「いや、そりゃそうでしょ……」「だから。会社以外では名前で呼べ」「……へ!?」「ほら。この前彼女のフリしてくれた時、ちゃんと名前で呼んでたじゃん。あれここでは呼んでくれたらいい」「慧……さん……ってことですか?」「うん。それ」「……いや! 無理無理無
last updateLast Updated : 2025-09-23
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67.社長に伝えたい秘密⑦

「ってことで、ここにいる間はお前らしくいろ。オレが社長だからって気を遣うな。言いたいことあれば我慢せずなんでも言え。わかったな」「はい。わかりました」「なら。もうそのコレクション片づけてくれていいぞ(笑)」「あっ、はい(笑) あっ! この部屋、ちょっとだけルイルイ飾ったりしても大丈夫ですか?」「フッ。いいよ。好きにしたら。お前の居心地いいと思う空間自由に作って」そう言って優しく笑う社長。その表情は、決してあたしに呆れているような表情ではなく、優しく見守ってくれているような、そんな表情に感じた。結局そうやって、社長はなんでも受け入れてくれる。だから、あたしはその優しさに甘えてしまいたくなる。っていうか、なんかちょっと気になる嬉しい言葉いくつか言ってくれてたよね……?あたしといて、一緒におもしろいって言ってくれた。そして、ハッキリは言ってはくれなかったけど、あたしは特別だって思ってもいいのかな……。ホントかな……。ホントにそんな風に思ってくれてるのかな……。だけど、結局また社長から優しさもらっちゃったな。どういう形になっても結局社長は優しさを上乗せしてくる。あたしだけ嬉しくて、あたしだけメリットがあって、あたしだけドキドキさせられて……。社長はいつだって大人で、あたしの考えてることなんてきっとお見通しで。それ以上にそんなあたしの考えを、なんてことないことにすぐに変えてくれる。あぁ……もう……なんでこの人はこんな優しいんだ。今日一日で、社長のことどんどん好きになってっちゃってる気がするよ……。っていうか、最初からこんな甘やかされて優しくされて、あたしはもし社長にこの先突き放されたりしたら、どうなっちゃうんだろう……。ちゃんと正気でいられるかな……。……なんてもう今すでに思っちゃうくらい、あたしはすっかりもう社長に惹かれていて、思ってる以上に大きな存在になってるってことなんだろうな……。
last updateLast Updated : 2025-09-23
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68.恋に気づいた日①

「はよ」「おはようございます。あっ、朝食もう出来てます」朝、会社へ行く準備をし終わった社長に。朝食が出来ていることを伝える。「あぁ、サンキュ。おっ、今日は和食なんだ」「はい。毎日のことなんで、いろんなパターン作って飽きないようにと思いまして」「毎日いろいろ工夫してくれてるから別に全然飽きてないよ」「よかったです」「でもちょうど今日しっかり朝食べれてよかったかも」「今日なんかあるんですか?」「あぁ、今日はずっと一日外回りが多くて、昼もまともに食べれないかも」「えっ、そんなに忙しいんですか!?」「あぁ。いろいろ打合せも重なってて、その上、今日夜に大きいパーティー呼ばれててさ。多分一日バタバタ」「そうなんですね。あっ、それってまたお酒飲むやつですか?」「まぁ。お祝いのパーティーだしね」「じゃあ、またあたし待機してたらいいですか?」「あ~。……今日はいいや」「え? いいんですか?」「今日はオレだけじゃなく秘書のメンバーも一緒に行くから多分大丈夫」「あっ、そっか。じゃあ大丈夫ですね」「さすがに会社の他の人間がいるとこで、お前に彼女役させる訳にはいかないしな」「あ~確かにそうですね」そっか。そういうの全部待機してなくていいってことか。そうだよな。そりゃ会社の人の前では、さすがにこんな平社員がどんな分際でってなるよな。あたしが会社の人間って知らない相手じゃないと、通用しないってことか。でもまぁ秘書の人たちと一緒なら本村さんいるし大丈夫か。だけど、社長の役に立てないということがちょっと寂しく感じてしまう。あたしがここにいる存在意義は、社長の役に立つことしかないのにな……。
last updateLast Updated : 2025-09-24
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69.恋に気づいた日②

「だから今日は晩飯いらないから」「了解です」「ちょっと時間も何時に帰ってくるかわかんないから、オレ待ってなくていいからな」「わかりました。あっ、じゃあ一つお願いがあるんですけど」「ん? 何?」「リビングのテレビに、持ってきたブルーレイのデッキ繋いでもいいですか!?」「え? あっ、うん。全然好きにしてくれていいよ。そっか、うちそういうのないもんな」「今日ルイルイのライブのブルーレイが発売されるんですけど、それ、このリビングの大画面で観たくて……!」「あぁ、そういうことね(笑)  全然構わないよ」「ありがとうございますー!! もうこんな大きいテレビで観れたら絶対臨場感ヤバくて絶対最高です!!」「ハハッ。オレ今日は遅いからゆっくりリビングで楽しむといいよ。あっ、配線とかは大丈夫? オレやってこうか?」「いえ! 多分繋げられると思うんで大丈夫です!」「そっ?」「はい!」「オレ忙しくてゆっくりそういうの観れる時間もないからな。必要ないから置いてなくて悪いな」「いえいえ! オタクは元々デッキは絶対必要不可欠なモノなので、そこは引っ越しの時に自分の持ってきたんでご心配いらないです!」「へ~そういうもんなんだ」「はい! ホント社長にもルイルイのグループの観てほしいくらいです!」「ハハッ。じゃあいつか時間空いた時にな」「えっ、一緒に観てくれるんですか!?」「いや、今お前がそう言ったんじゃん」「言いましたけど。まさか社長が普通に返してくれるとは思ってなかったので」「普通に興味あるよ? お前がそんなに夢中になるのはどんなヤツなんだろうって」「あっ、じゃあ。ぜひ」と、返事をしつつ、社長のその言葉に少しドキッとする。いや、別に深い意味はないと思うけど。あたしがこんなキャーキャー騒いでる相手はどんなヤツなんだろうという、ただの一般的な興味本心からの特に意味のない言葉なんだとは思うけど。あたしがいろいろ過剰に反応しすぎなんだろうけどさ。ただ、ちょいちょい社長は意味ありげな言葉を使うから……困る。
last updateLast Updated : 2025-09-24
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70.恋に気づいた日③

「てか、お前もう普通に呼んでんな」「え? 何がですか?」「名前。呼べって言ったのに」「あーっっ! 一晩寝たらもうすっかり忘れてました!」「だろうな(笑)」「えっ! もうマイナスですか!?  今からその分何回か呼んだらプラマイゼロになりませんかね!?」「ハハッ。なんだそれ(笑)」「えっと、あたし今朝何回社長って言いましたっけ……」「いいよ、そこまでしなくて(笑)」「えっ、いいんですか?」「まぁ平日の朝はお互いバタバタしてるし、そのまま仕事行くから、逆にちゃんとそこは切り替えておいた方がいいだろうし、名前で呼ばなくてもいいよ」「確かにそうですね。あたしなかなかそういうの切り替えられないタイプのような気がします。って会社では直接話すことまぁないんでそんな心配いらないかもですが」「まぁ一応ね。だから平日の夜とか休日とか、そういう時だけでいいから」「あっ、それならなんとか。ちゃんと呼べるように意識しときます!」「あぁ。朝と会社以外はちゃんと意識しといて(笑)」「了解です!」「返事だけはいいよな、お前(笑)」「返事だけじゃなくちゃんとお役に立てるように頑張ります!」「っていうか役に立てるとか、そういう風に思わなくていいぞ?」「えっ?」「別にお前がここにいるのは、オレがお前に何かしてもらおうと思って、いてもらう訳じゃないから。お前も何か役に立たなきゃって思う必要はない。だからお前に報酬払って契約って形にしてるんだから」「あっ、そっか」「基本オレはお前とは、ここでは社長と社員っていうのは忘れて、対等に接したいって思ってるから。そこは年齢とか立場とか関係ない。オレとお前のただ同じ人間同士の付き合いをしたい」「なんか……深いです……」「はっ?」「なんか、いつでも社長は、あたしの思ってもいない言葉をくれるので、そのたび勉強になるっていうか。そういう考えがあるんだなぁって思います」「いや、別にオレはたいしたことは言ってないけど。っていうか、それを言うならお前もだろ」「え? あたしもですか?」「お前のがオレが思ってもいない行動だったり言葉をかけてくるから、ただオレがそれに刺激されてるだけ」「えっ、そうなんですか?」「まぁ、それをわかってないのがお前なんだろうけどな」「っていうか、なんかお互い同じようなこと言ってますね(笑)」「だ
last updateLast Updated : 2025-09-24
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