景苑別荘の外には、楓華の車が止まっていた。素羽が姿を現すと、楓華はすぐに車を降り、荷物を運ぶのを手伝った。車内には暖房が効いており、体にまとわりついていた冷えを少しずつ追い払ってくれる。楓華はそのまま車で素羽を自宅まで送り届け、荷解きの手伝いにまで付き合ってくれた。「いいルート、ないかな。これ、全部売りたいんだけど」素羽は、部屋いっぱいに並べられたきらびやかな宝石を見渡しながら言った。「全部、売るの?」素羽は静かに頷いた。すべて、現金に換えるつもりだった。「伝手はあるけど……もし離婚するなら、これらの宝石を勝手に処分するのは、難しいかもしれないよ」「どうして?」素羽が問い返すと、楓華は落ち着いた口調で説明した。「男性が、女性個人への贈与だってことを、書面ではっきり合意していない限り、これらは夫婦の共有財産になるの。あなた個人の資産にはならないわ」考えるまでもない。司野がプレゼントを渡すたびに、そんな書類を交わすはずがなかった。贈るときは気前よく、豪勢に振る舞う。けれど、いざ計算の段になれば、一本の毛ほどの得も与えないつもりなのだろう。素羽は愕然とした。「じゃあ、これ全部……わざわざ運んできた意味、ないってこと?」素羽を落胆させたくはなかったが、楓華はそれでも頷き、この残酷な現実を肯定した。素羽は、思わず苦笑いを浮かべた。いったい、何なんだろう。五年もの間、無償で働いてきて、挙げ句の果てに、司野という「オーナー」から報酬を返せと言われるようなものじゃないか。見識の広い楓華は、裕福な家庭における結婚が、しばしば一種のゲームに過ぎず、決定権が弱い立場にはないことをよく知っていた。楓華は素羽の肩を軽く叩き、慰めるように言った。「それより、今はどうやって離婚するかを考えるべきよ」しかし、素羽の胸は軽くならなかった。むしろ、不安は増すばかりだった。この結婚が、そう簡単に終わるはずがないことを、彼女自身がよく理解していたからだ。司野が口にした「須藤家には離婚の前例がない」という言葉は、決して建前だけではない。家に存在する私生児たちを見れば、その異常さは一目瞭然だった。須藤家では、女性を伴っての浮気など、問題にもならない。ましてや司野は、外で人の命を奪うような大騒動を起こした
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