拓海の目が揺れた。「俺は別に……」「拓海、もう自分を騙すのはやめて。言い出せないことをあえて言葉にすれば、みんなが気まずくなるだけよ。実際、離婚は私たち双方にとっていいことなの。本当に、結衣の方があなたの心の中の奥さんにふさわしい……」「知佳!」拓海は遮るように声を上げた。「まだ結衣のことを根に持っているのか?何度も説明しただろう」「拓海、結衣のことから抜け出せないのは私じゃない」知佳はまっすぐに拓海を見つめた。「あなたよ」拓海は再び呆然とした。「知佳……」「私たちは分かってるでしょう?」知佳は、できるだけ穏やかに見せようとした。感情的になっているのではなく、本気でこの話をしているのだと伝えるために。「私たちの五年間に、もう終止符を打つ時が来たの。拓海、きれいにお別れしましょう。過去のことは全部、水に流しましょ」拓海はしばらく知佳を見つめていたが、やがて立ち上がった。「知佳、君の考えすぎだ。いずれ分かる。結衣が帰ってきても、何も変わらない。もう遅い、休め」「拓海、あなたが私に罪悪感を抱いているのは分かる。でも、もうその必要はないの。私は罪悪感に基づいた結婚なんて望んでいない。私を解放して、あなた自身も解放して……」知佳がまだ言い終わらないうちに、拓海は上着を脱いで浴室へ入ってしまった。知佳はソファに投げ出された上着を見た。以前ならすぐに拾い上げてハンガーに掛け、パジャマを探して浴室の前に置いただろう。でも今は動かなかった。この五年間、知佳はいつも思っていた。自分は足が不自由で、外に働きに行けず、この家に利益をもたらすこともできない。拓海がすべてを整えてくれて、知佳はまるで家の飾りのようで、少しも助けになれていない。だからせめて、自分にできる限りのことを尽くして、拓海の世話をしたいと。けれど、私はもしかしたら一つ見落としていたのかもしれない。拓海が必要としているのは細やかな世話ではなく、外に連れて行ける「森川夫人」だ。たとえば今日のように、肩を並べて取引先と対応できる存在が必要なのだ。ただ、知佳には分からなかった。拓海が何にこだわっているのか、なぜこの状況でもまだ離婚を望まないのかが……拓海は浴室から出ると、そのまま眠ってしまった。もう話をする気はないという態度だった。知佳も、それ以上は何も言わなかっ
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