琉里への復讐心に駆られた紗夜は、自分もその罠に加担しようとパドルを握りしめた。「もうやめろ」隣に座る臣が険しい顔で制止したが、紗夜の耳には届かない。水琴のターゲットはあくまで琉里だ。だから自分がここでレイズして煽れば、琉里は絶対にムキになってさらに高値を被ってくるはず――そう勝手に確信していた。紗夜は高々とパドルを掲げ、自信満々に叫んだ。「百二十四億!」その金額は、すでに翡翠島が持つ本来の価値を大きく通り越している。しかし、紗夜はそれに気づかないまま、琉里か水琴がさらに高値を叫ぶのを勝ち誇った顔で待っていた。ところが――水琴も、そして最前列の琉里でさえも、ピタリと動きを止め、それ以上パドルを挙げようとはしなかった。「百二十四億、一回!」「百二十四億、二回!」紗夜の額から、じっとりと冷や汗が吹き出した。嘘でしょ……?どうして?なぜ誰もコールしないの?「百二十四億、三回!決定です。おめでとうございます、鷹司夫人。翡翠島はあなたのものです」「え……?」司会者の声が響いても、紗夜はまだ事態を呑み込めず、頭の中が真っ白になっていた。わけもわからないまま、大赤字確定の不良物件を超高額で買わされてしまったのだ。「なんで……?」隣に座る臣がその場で激怒して席を立たなかったのは、せめてもの世間体に対する配慮だったのだろう。彼の横顔は怒りで引きつっていた。事態を察し、屈辱と怒りで顔を真っ赤にした紗夜が、水琴の背中を睨みつける。すると、水琴がゆっくりと振り返った。彼女の瞳には、冷たく、けれど心底おかしそうな嘲笑が浮かんでいた。ゾクッと、紗夜の背筋に氷のような悪寒が走る。――ハメられた。翡翠島の狂騒が終わり、オークション会場は嘘のように静まり返った。続く三つの土地――南西郊外の区画、凌東島、バートン島――は、それぞれ百億円、四十億円、九十億円で淡々と落札されていく。そして、次はいよいよ本命の半月島だ。少し弛緩していた会場の空気が、再びピンと張り詰めるのを水琴は肌で感じ取った。「集中しろよ」隣に座る重人が、水琴の耳元で小さく囁く。水琴は静かに頷き、最前列に座る琉里の背中へ視線を投げた。琉里も背筋を伸ばし、明らかに本気で競り落とす構えを見せている。水琴の胸の奥
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