ニセ夫に捨てられた私、双子と帝都一の富豪に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 81 - チャプター 90

98 チャプター

82

 美桜の中に初めて一成が入ってきた。  狂おしいほどの情熱に包まれ、京の時には得られなかった悦びを感じる。剛直に貫かれ、一成の背中に跡が付くほどしがみついた。溢れる蜜が体を濡らしていくのがわかる。 一成が触れるたび、囁く声が耳に落ちるたび、心の奥底にしまい込んでいたなにかがほどけていく。 京との夜にはなかった、自分が愛されていると実感できる幸福が、波のように押し寄せてきた。  苦しかった過去が、ゆっくりと塗り替えられていくような感覚。  一成は美桜の震えを受け止めながら、まるで宝物に触れるみたいにやさしく、それでいて熱く抱き寄せた。「愛しているよ、美桜」 その一言だけで、胸の奥が熱くなる。 言葉以上の想いが、触れ合う距離にすべて詰まっていた。 美桜は彼の肩に額を押し当て、震える声で応えた。「……私も……一成くんがいいの。あなたじゃなきゃ、こんなふうにならない……」 全部を委ねてしまいそうになる。そんな自分がこわいほどだった。 一成はその言葉を聞くと、腕の力をわずかに強くし、まるで美桜をこの世界から守り抜くように抱きしめた。「ねぇ、美桜。君が僕を求めてくれるのが……嬉しくて、たまらない」 低い声なのに、震えるほどの情熱が宿っていた。
last update最終更新日 : 2025-12-16
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88

  早瀬は洋子と別れたあと、最短距離で一成のもとへ駆けた。  昼の帝都は人で溢れているが、今の彼の視界には何も映らない。ただ、最悪の事態を避けるために、一秒でも早く辿り着かなければならなかった。 「旦那様!」  曲がり角を抜けた先。一成は別の護衛に護られながらあまり目立たないようにその場の風景に溶け込んでいた。「早瀬。どうだった?」「大変です。実は――」 早瀬は一歩前に出ると、深く頭を下げた。先ほどの怪しげな行動をしていた男は、実は洋子が返送していたものだということ、更に洋子から聞いた詳細を彼に伝えると、みるみる一成の顔が険しくなっていった。「奥様は桐島京に連れ去られたようです。洋子の代わりに人質になったと聞きました。それを止められなかったのは、このわたくしの監督不行き届きです。いかようにも責任を取ります故、どうか、洋子の処罰は考えていただけないでしょうか!! 彼女は精一杯奥様を守るために尽力いたしました」  感情を表さない男が、初めて誰かのために頭を下げているところを一成は初めて見た。早瀬の表情が鋭く引き締まる。 「洋子は……? 自ら処罰を受けると申し出ているのか」 
last update最終更新日 : 2025-12-22
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