残り火 After Stage ―未来への灯火―의 모든 챕터: 챕터 241 - 챕터 250

257 챕터

―純血の絆―②その2

*** 躰に伝わってくる穂高さんの暖かさや眠気なんかで、うつらうつらしていたときだった。「千秋、そろそろ屋敷に到着するよ」 言うなり俺の躰を背負う形で、一旦空中に浮く。恐るおそる足元を覗き込んでみると雲の隙間から見ることができたのは、日の光を浴びた屋根が道に沿ってたくさん並んでいる景色だった。「この家の中に、穂高さんのお父さんのお屋敷があるんですか?」「ん……。久しぶりに来たから、どこにあるのか迷ってしまった」「え!?」 ちょっと待って。イタリアにきてまで穂高さんのドジが炸裂するなんて、困り果ててしまうよ。「お屋敷の目立つ特徴とか、目印はないんですか?」 首をひねって考え込む大きな背中の上で泡食った感じで声をかけたというのに、キョロキョロしながら鼻をくんくんさせる。「前回来たときも匂いを頼りにしたから、屋敷の特徴は覚えていない。あっちだ」 匂いを頼りにするって、まるで警察犬みたいだな――。 先ほどよりも速度を落として飛んでくれたので、雲の隙間から見え隠れするイタリアの景色を楽しんでしまった。 上空から見ると薄茶色っぽい同じ色の屋根の建物があるばかりで、これといって目立つ特徴のものがまったく見られなかった。自分の中にあるイタリアといえば、国旗の色同様に華やかなイメージだったので、目の前に展開されている地味目な景色には驚きを隠せない。 だけど空の色を映し出している海の色がとても青い綺麗な色味は、南国の海っぽくてとても目に優しい。 俺を背負ったまま雲の上を飛行しながら、お父さんが住んでいるというお屋敷に向かう穂高さん。やがてそれを見つけたのか、一気に下降して地上に降り立った。
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―純血の絆―②その3

穂高さんの足が地面についたのを確認してから、ほっとして首に絡めていた腕の力を緩めた。空を飛んでいたという事実から解放された俺の顔を横目で見ながら、優しくイタリアの地に下ろしてくれる。(ううっ、パスポートもなしにイタリアに密入国した形で、ここに来ちゃったんだな) そんなことを考えて隣を見ると、いつもの見慣れた穂高さんの姿になっていた。それを見ただけで、不安になっていた気持ちが瞬く間になくなっていくから不思議だな――。「ここが、穂高さんのお父さんの家なの?」「ん……」 羽織っていた黒いマントを外している穂高さんに、そっと話しかけてみる。 立派な柵で仕切られたヨーロピアン仕様のお屋敷が、俺たちを見下すようにそびえ立っていた。お屋敷の周りには手入れの行き届いた樹木や芝生が展開されていて、そのあまりの広さに迷子になるんじゃないかと、変な心配をしたのだけれど――間違いなくベルリーニ家のお屋敷は、ここだけじゃないだろうなぁというのが容易に想像がついた。 穂高さんは自分の家のように、立派で大きな柵を開けながら「行こうか」と瞳を細めて中に促してくれた。ドキドキしながら足を踏み入れると、肩に回されたあたたかな腕がお屋敷に導いた。「あのね穂高さん、どうしてイタリアに俺を連れてきたの?」 イタリアに向かう道中に考えていた質問を、やっと口にしてみる。今回、ここに来た目的を知っておかなきゃならないだろう。「父さんが千秋に逢いたいと言ってきたから、ここに連れて来た。前回来たときに、恋人である千秋の話ばかりをしたせいかもしれないね」「どうせいつもの『俺の千秋は――』って、デレデレしながら余計なことを喋ったんでしょ」 若干呆れながら指摘した俺の言葉に、穂高さんは目を見開いて驚いた表情をありありと浮かべた。「何で分かったんだい? さすがは俺の千秋だね」 はいはい、安定の言葉をありがとうございます。「でも日本からの土産も持たずに穂高さんのお父さんに逢うのは、やっぱり気が引けるなぁ」 しかも密入国している手前、ほいほいとそこら辺を観光することもできなさそうだし……。「大丈夫だ。千秋の顔を見せることが、父さんの土産になるからね」 肩に回されていた腕が外されて、瀟洒な扉の前で一緒に並ぶ。穂高さんが扉に備え付けられているノッカーを鳴らして、俺たちが来たことを知らせた。「
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―純血の絆―②その4

「二階の一番奥の部屋を用意しました、そこで食事をしてください。千秋、すみませんが穂高を頼みましたよ」 お手伝いさんがお辞儀をしてから、螺旋階段を先になって上がっていく。 穂高さんの踏み出した足がぐらついたのを見て、慌てて躰を抱き留めながら慎重に階段を上がった。ほどなくして二階に到着し、薄暗がりの廊下を突き進むと、お手伝いさんが扉を開けて中に入るように促してくれた。 イタリア語のありがとうという言葉が分からなかったので、小さくぺこりとお辞儀をしたら、同じようなお辞儀をしてその場から立ち去っていった。「あれ?」 食事をしてくださいとお父さんは言っていたのに、食べ物らしきものはなくて、天蓋付きの大きなベッドがあるだけの部屋が謎すぎて、首を捻るしかない。もしかして、あとから食べ物が運ばれてくるんだろうか?「すまない千秋……。俺をこのままベッドまで運んでくれ」「分かった、大丈夫?」「ん……。躰の力が底を尽きかけているだけなんだ」 手に持っていた漆黒のマントを床に直置きして、俺にしなだれかかってきた穂高さん。相当疲れているんだろうな。 穂高さんをベッドに寝かしたらマントを畳んで、どこかに置いてあげなくちゃ。「よいしょっと!」 大柄な穂高さんの躰を、何とかベッドに横たえさせた。すかさず靴を脱がせてから身を翻して、マントを拾おうとしたときだった。「千秋、服を全部脱いでくれ……」「えっ?」 背中にかけられた言葉を聞いて、眉根を寄せながら振り返った。力のない掠れたものだったから、聞き間違えたのだろうか。穂高さんが服を脱ぐんじゃなく、どうして俺が脱がなきゃならないんだろう? 手にしたマントを拾い上げて、手早く畳んで傍にあるソファの上に置いた。「早くしてくれ……。喉が焼けて乾ききってしまいそうだ」 珍しく急かしてくる声に慌ててベッドに駆け寄ると、穂高さんがふたたび金髪になっていて、苦しそうに顔を歪ませていた。変化はそれだけじゃなく、くちびるの隙間から鋭い牙が出ているではないか。「な、何、これ……」 目の前で苦しむ穂高さんの姿に、呆然と立ちつくしてしまった。さっき言われたことが頭の中にあるものの、それをすることができない。恐怖で躰が竦んでしまって、喉をかきむしるように身悶えてる穂高さんを見るだけで、いっぱいいっぱいだった。
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―純血の絆―②その5

「ち、あきっ……、ぁあ、千秋っ、はや、く血を……」「俺の血を飲みたいの?」 恐々と声をかけたのが合図になったように、赤い目を光らせながらいきなり起き上がって俺の左腕を掴んで引っ張ると、ベッドの上に磔にされてしまった。 俺に跨っている穂高さんは、息を切らしたまま苦しげに顔を歪ませていた。それに見惚れる間もなく日の光を浴びた金髪が音もなく近づいたことに驚いていたら、首筋の皮膚を突き破る痛みを感じた。「いっ!」 だけど痛みを感じたのは一瞬で、その内に首筋を愛撫されているような感じに思えてきた。それは時折舌先で、肌を舐められるせいかもしれない。「ああぁっ、やっ!」 じゅるるという血をすする音を聞いている内に、変な気分になると同時に下半身がどんどん熱くなっていく。それが分かっているのか、穂高さんがズボンのファスナーを下ろして手を突っ込み、大きくなったモノを引っ張り出した。(何もしていないのに、どうしてこんなことになっているんだ!? しかも突き立てられた穂高さんの牙が、熱くて堪らない。それを感じるたびに下半身が疼いてしまう)「らめぇっ……ほらかさ、触らないで」「千秋、声を落とさないと外まで響いてしまう。昔の家は壁が薄いから、簡単に声が漏れてしまうんだ」 首筋から顔を上げた穂高さんが、困った顔してお願いしてきた。「だっだったら、俺のを握ってる手を外してください。じゃないと声が出っ放しになってしまうよ」「それは無理な相談だな。千秋の精気を、たっぷりと戴かなければならないからね」 言うなりパクっと咥えて裏筋に舌を絡ませながら、ゆっくりと上下にスライドされてしまい――。「ぁんっ! もう駄目ッ、イクぅっ!」 穂高さんがしているコトはいつもと変わりないのに、なぜだかすぐに達してしまった。それを喉を鳴らしながら、美味しそうに飲み干していく。しかも痺れるような快感がまだ続いていて、頭と躰がどうにかなってしまいそうだ。「千秋、悪いがもう一度同じことをするよ」「も……いち、ど?」 言うなりズボンを手際よく脱がせてから、着ていた服にも手をかけて脱がせられてしまった。その間もうまく躰に力が入らなくて、穂高さんにされるがままになっていた。まるで麻酔薬でも使われた気分。「ん、俺に力が戻ったら千秋を愛してあげる。いつもよりも、念入りに愛してあげるよ」 煽情的に赤い
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―純血の絆―②その6

「ほらかさん……、き、て」 性的な衝動に駆られながらも、頭の片隅に残っていた理性で考えついたこと。 穂高の父が告げた『食事』という言葉の意味が、現在自分がされている行為そのものだっていうことと、それをしなければ吸血鬼である恋人の力が戻らないことが分かった。 一方的なそれは穂高が生きるための食事であり、自分はただの食材という立場で愛情を感じられないけれど、それでも受け入れてあげたいと思った。自ら差し出すもので愛する人が生きられるのなら、喜んで提供しようと自然に考えついたから――。「千秋、愛してる」 甘いささやきとともに皮膚を貫く痛みと快感が入り混じり、奥歯を噛みしめながら躰を強張らせた。血を吸われていく内に下半身がふたたび硬度を増して、精気が充填されていく。「はあぁあっ! やっ、舐めないでっ」 じゅるじゅると吸い上げながら蠢く舌に感じて、足をジタバタさせてしまった。 さっきまで苦しげだった表情が一転して生気に満ち溢れた姿になった穂高さんが、突き立てていた牙を抜き取り、じっと自分を見下す。「甘露な味のする、君の血を味わいたかったんだ。感じさせるのに舐めていたわけじゃない」「うっ……」「でも今はこの手で、感じさせたいと思ってる。ただ精気を吸うだけじゃない。千秋を愛したいから」 目を閉じた穂高さんが近づいてきたので、自然と瞳を閉じた。重ねられるくちびるから差し込まれた舌を伝って自分の血の味を感じたけれど、それもほんの一瞬の出来事だった。今まで味わったことのない甘美なものが欲しくて、穂高さんの首に自分の両腕を絡ませる。 貪るように深く舌を絡ませて、自然と流れてくる唾液を飲み込んだ。「んっ、も、もっと欲しい」 更に飲み込もうとしたら、逃げるように顔を外されてしまった。「今の俺の唾液には催淫剤が含まれているから、あまりあげられないんだ。これ以上あげると千秋が壊れてしまうからね」 切なげに瞳を細めながら躰を起こして、俺の上半身を両手で弄りはじめた。「いじわる、しないで……。っ、んぅ……あっ、穂高さんがほしいよ」「それならココに唾液をあげようか。千秋、覚悟しなきゃいけないよ」 穂高さんが自分の口に人差し指と中指を突っ込み、たっぷりと唾液を滴らせてそれを後孔の入り口に塗ったくった。「ぁ……っ、ひゃんっ、あっ、もっと……もっと激しくして! んあ
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―純血の絆―②その7

*** 隣で寝ている穂高さんのあたたかさで、ふと目が覚めた。 暗闇でわからないけれど、吸血鬼のときよりもあたたかく感じるということは、人間の姿に戻っているのもな。 ぐるる〜! 人としてのあたたかみを嬉しく感じていたら、恥ずかしくなるくらいにお腹から大きな音がした。イタリアに来てから何も食べていなかったし、適度に運動しているせいでお腹がすくのは当然だろう。 疲れ果てて寝ている穂高さんを起こさないように起き上がり、床に散乱している自分の衣類を着て部屋から出てみた。 この部屋に来たとき同様に薄暗い廊下を突き進み、螺旋階段を降りて一階を目指していたら、穂高さんのお父さんが階段を上がろうとしているのが目に留まった。「あ、あの……」「グッドタイミングでしたね。夕飯の時間になったので、声をかけようと思ったのですよ」 柔らかくほほ笑んで、来た道を戻って行くお父さんの後ろについて歩いた。「済みませんでしたね、千秋。穂高が貪るように食事をしたみたいで」(ひえぇっ! 一階まで声が聞こえてしまったのかな)「いえ……。大丈夫です」 恥ずかしすぎて顔を上げられず、テーブルについても上気した頬を隠すように俯いたままでいた。目の前には美味しそうなスパゲッティやピザ、グラタンなど洋食が所狭しと並べられていて、どれから手をつけていいのか迷ってしまう。「遠慮せずに、好きなものから食べてください。ここまで来るのにお腹が空いているでしょう?」「はい、戴きます」 一番手前にあったコーンスープに口をつけてみる。とうきびの甘さが、塩コショウでとても引き立てられていた。両手で握りしめたカップの温かさが伝わってきたお蔭で、躰がリラックスする。 俺の食べる様子を眺めていたお父さんも真ん中にあった大きなチキンを手に取り、美味しそうに頬張った。人間の姿をしているときは同じように食事をするんだなぁと、チラチラ見つつ自分の食事を進めていった。 お腹がいっぱいになったところで手が止まると、それを見計らったようにお手伝いさんの手によってコーヒーが置かれた。「ご馳走様でした。どれも美味しく戴きました」 出されたコーヒーに手をつけず、まずはお礼を言わなければと先に口を開いた。するとナプキンで口元を拭ったお父さんが浮かべていた笑みを消し去り、俺の顔をじっと見つめる。「お腹がいっぱいになったとこ
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―純血の絆―②その8

手にしたアンプルを目の前に掲げながら、音もなく差し出したお父さん。それが天井から吊るされているシャンデリアの光を受けて、キラッと光り輝いた。「これを使うかどうかは、千秋が決めてください。穂高の運命を、貴方の選択にゆだねます」 穂高さんによく似た低い声。それはとても静かに告げられたものだったのに、鼓膜に響くように聞こえてきた。「それを使いたいです。人として短い人生を送るよりも彼と長く一緒にいられるのなら、半妖として生きます!」 選択に迷いはまったくなかった。 お父さんが穂高さんを長らえたいという想いが一致したのもあるけれど、一分一秒でもいいから愛する彼の傍にいたいという強い気持ちが、迷いを一瞬で消し去った。「千秋がこれを飲めば、半妖になることができます。ただし口に含めば、二度と人間には戻れません、それでもいいですか?」 ふたたび俺に問いかけてきたお父さんに歩み寄り、右手を差し出した。「穂高さんを愛しているから、迷うことはないです」「ありがとう、千秋」 寂しげな笑みを浮かべたお父さんは視線を落とし、親指でアンプルの上部をへし折って、中身が飲めるようにしてくれた。それを受け取って、躊躇うことなく一気に飲み干す。 口の中に血の味を感じた瞬間に、喉が焼けつくような嫌な感覚にとらわれた。「くっ! ううぅっ……」 持っていたアンプルを放り投げて、首元を押さえながらその場にうずくまった。襲いかかってくる目眩や妙な浮遊感に気持ち悪くなり、息を大きく吐き出しながら意識を手放した。 穂高さんの純血が俺を半妖に変えるそのとき、扉の開く音が耳に聞こえてきたのだった。
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―純血の絆―②その9

*** 目の前の光景の衝撃に、息を飲んで見つめるしかできなかった。自分の父親の足元に倒れている愛する人が、いつもの姿じゃなかったせいもある。「父さん、千秋に俺の血を与えたのか!?」 綺麗な黒髪は銀髪に変わり、荒い呼吸を繰り返すくちびるの隙間からは鋭い犬歯が見えていた。 胸が押しつぶされそうな感覚に陥りながらも千秋の傍に駆け寄って、冷たい躰をぎゅっと抱きしめた。「何で……、どうしてこんなことを。千秋に何を話したんですか?」「前回、君が私と話をしたときに言いましたね。千秋が死んだら、自分も同じ道をたどると」「はい。今もその決心は変わっていません」 しゃがみ込んだままでいる自分に視線を合わせるためなのか、同じように膝をついて顔をつき合わせた父さん。その表情はとても苦しげなものに見えた。「自分よりも早く命を絶とうとしている穂高のことが、辛くてなりませんでした。順番でいくと、父親である私が先に人生を全うすべき存在なんです。だからこそ親として、子どもが先に死んでいくという事実を受け入れることが、どうしてもできなかったのです」 千秋の躰を抱きしめる両腕に、自然と力が入る。「だからってそれに千秋を巻き込むことは、非常識だと思います。父さんのエゴを押しつけて、こんな姿に変えてしまうなんて……」「私の気持ちを伝えた後に、千秋本人が言いました。『人として短い人生を送るよりも彼と長く一緒にいられるのなら、半妖として生きます』と。二度と人間に戻れないことも再度言い伝えましたが、彼の気持ちは変わることはありませんでした」「千秋……。俺と一緒にいるためだけに、自分が苦しむことを選ぶなんて」 吸血衝動は喉が渇くという生易しい表現じゃない、喉全体が干上がって焼けつく感覚はとても苦しく、身悶えてしまうものだというのに――。「穂高を想う強い気持ちで千秋は吸血衝動と向かい合い、打ち勝っていくと信じています。ですが、彼がそれに負けて誰かの血を口にしたときは――」 どんどん沈んでいく父さんの声に、たまらず顔を背けてしまった。「ヴァンパイア同士の血は飲むことができないので、俺は死にます」「千秋以外の血を、口にすることをしないのですか? そうすれば彼とともに生きられるのですよ?」 ヴァンパイアとして、千秋と一緒に命を長らえる。それはとても魅力的なことだというのが分かるが、彼
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―純血の絆―②その10

抱きしめていた千秋の膝裏に腕を差し込み、力なくぐったりしたままの躰を横抱きにして、ふらつきそうになる足元を何とか踏ん張りながら立ち上がった。「穂高……」「父さん俺はこれから何度も、千秋が苦しむ姿を見なければならないんですね。俺の血を飲んだせいで」 俺と出逢ってしまったがために、千秋の運命を変えてしまった。そのことを考えるだけで、俺たちの明日(しょうらい)には光が見えないが、それでもこの手で彼を守っていく。それは自分のためじゃなく、千秋がいつでも笑っていられるように。「自分だけを責めることはありません。私にもその責任があるのですから」「ですが俺がヴァンパイアじゃなかったら、こんな苦しい目に遭わなくて済んだのに」「穂高さ……、俺は嬉しいんだよ」 ひどく掠れた声が部屋に響いた。 ハッとして腕の中にいる千秋を見たら、人間の姿になりかけている彼が柔らかくほほ笑みかけていた。ルビーのように赤い瞳は片目だけで、それだけでも随分と印象が違って見えた。「大丈夫ですか? 千秋」 父さんが心配そうに顔を覗き込みながら、両腕が塞がっている俺の代わりに千秋の前髪を撫でてくれた。「まだ頭がくらくらしています。でも穂高さんがこうして抱きしめているから、さっきよりはマシになってます」「千秋、どうして君は嬉しいなんてことが言えるんだ。本当は辛くて堪らないだろうに」「穂高さんが思ってるような辛さはないから、そんな顔して心配しないで」 躰に感じる違和感を悟られないようにするためなのか、所々声を震わせながら心配するなと言うなんて、俺はどうしたらいいんだろうか。「穂高、このままでいても彼が休まらないでしょうし、先ほど案内した部屋に連れていくといいでしょう。千秋、無理せずゆっくりしてくださいね」 父さんの言葉に頭を下げて、踵を返し部屋を出た。 玄関ホールにある螺旋階段を上りかけたとき、千秋が俺の首にぎゅっと縋りつく。密着した部分から人間らしいぬくもりを感じて、心から安堵した。「穂高さん、俺を嫌いになった?」 階段を上りきって廊下を突き進んでいる途中に話しかけられた質問は、どうしてそんなことを訊ねてくるんだろうかというものだった。 あえてそれには答えずに扉を開けて電気をつけて、千秋の躰をベッドに横たえる。俺が手を放したというのに、首に絡めた両腕を使って離れないように拘
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―純血の絆―②その11

銀髪を枕の上に散らしたまま縋るような眼差しで見つめられるだけでも、かなりヤバい――深紅色の瞳がルビーのように煌くせいで、煽られた気分になる。「穂高さん、俺ね……」 ギシッというベッドの軋む音が耳に聞こえてきた。千秋に背を向けているので何をしているのか分からないが、多分起き上がったのだろう。聞こえてくる声の雰囲気でそれが伝わってくる。「お父さんから話を聞いている最中に思ったのが、貴方と同じ立場になりたいって考えたんだ」「同じ立場?」「うん。穂高さんが抱える悩みを知りたかったし、力になりたいと思った。それと一緒に、人間である自分が嫌になったんだ。人よりも長く生きられる穂高さんの命を奪ってしまうことが、すっごく嫌だなって」 千秋……そんな風に思って、俺の血を飲んだというのか――。「ただ血を与える存在だけじゃない。半分だけでもいいから同じ種族になって、穂高さんのつらさを分かち合いたかった。貴方を愛しているから」「俺は千秋の苦しむ姿を見たくない! それなのにっ」 悲鳴に近い声で怒鳴りながら振り返った。ベッドの上にいる千秋は一糸まとわぬ姿になっていて、静かに俺を見上げた。 そのあまりの美しさは、おとぎ話に出てくる妖精のようだと瞬間的に思った。生命力の溢れる人間の姿とは一転した、儚げなヴァンパイアの様相――肌の色が白く見えるのは、深紅の瞳の赤が輝いているから。 千秋から漂ってくる妖気に当てられて、勝手にヴァンパイアの姿になってしまった。「穂高さんが傍いれば、俺はどんなにつらいことでも乗り越えられる。絶対に人の血を飲まずに、吸血衝動をやり過ごしてみせるよ」 にっこりとほほ笑みながら、俺に向かって両腕を差し出してきた。「貴方の愛さえあれば生きていける。お願い、穂高さん」「駄目だ……。ヴァンパイア同士の性行為はどうなるか分からない。互いの唾液に含まれる催淫剤が混ざり合ったりしたら、それに溺れて抜け出せなくなるかもしれない」「大丈夫だよ。だって俺は、完全な吸血鬼じゃないから」 千秋の告げた言葉が、渋る俺の意識を揺り動かす。足が勝手に動き出し、自分に向かって伸ばされている手を取ってしまった。その手を千秋が握りしめた瞬間、すごい力で引っ張られた揚げ句にベッドの上に仰向けにされた。「穂高さん俺ね、もうひとつ思ったことがあったんだ」 素早く俺に跨り、深紅
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